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LEICA趣味人 - 飛鳥山編 -



最新のレンズはどのメーカーのレンズでも驚くほど良く写る。開放からシャープで、色の偏りもなく、収差も少ない。これまでメーカーやレンズ設計者がレンズの理想を求めて、血のにじむような努力をし続けてきた結果であり、誠に喜ばしいことである。ところが人間とは勝手なもので、レンズに収差やクセがあった頃は、こんなレンズは使えないと切り捨てていたのに、いざレンズの性能が良くなると、今度は写りすぎると文句を言う。かくゆう私もその一人。今のレンズはどんな状況でも破綻なく、見事な描写をするのだが、まるで真面目な秀才と話しているようでつまらない。人間とは贅沢で勝手な生き物である。

クセがあり、収差があり、使いにくいというレンズの筆頭がこのズミルックス35mm f1.4である。開放ではベールがかかったようなにじみがあり、点光源では見事なコマ収差がでる。絞り込むほどにシャープになるのだが、それでいて、今のレンズのようなかたさがなく、温かみのある描写をする。そして銀塩フィルム時代のレンズだが、デジタルとの相性が抜群なのだ。最新のCDを真空管のアンプで鳴らすような感覚。今一番のお気に入りレンズである。いつものようにM9-Pに装着して、都電が走る飛鳥山界隈をぶらぶら歩いてみた。


LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

今回の相棒はLEITZ CANADA製の「SUMMILUX 35mm f1.4」である。無限遠ロックがついていない球面ズミルックスで一番長く作られていた時代のレンズである。今の非球面のズミルックスとの違いは何といっても大きさと重さ。これで同じ1.4と疑ってしまうほど、球面ズミルックスはコンパクトで町歩きには最適だ。


LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

さっと構えてさっと撮る。35ミリという画角は、スナップを撮るにはちょうどいい按配の距離感だ。秋になると太陽が下がり、影が面白い。影を追いたくなってしまう。F5.6~8.0に合わせて距離3mに合わせれば、いつでも撮影準備完了だ。

LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

飛鳥山公園で、味わい深いトイレを発見。小さなタイルで、男女のサインマークが作られている。男の形、女の形、そしてタイルの色使いに惹かれてしまう。下にはかつて蛇口がついていたのだろう。わいわい手を洗う、子供達の声が聞こえてきそうだ。

LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

ズミルックスの背景のボケは特別美しいわけではないのだが、にじんでとろけるようなボケは、今のレンズでは決して味わえない。


LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

ズミルックスここにありともいえる見事がゴースト。強い光源があると必ず出現する。でもこれがいい。デジタルなら、このゴーストを確認しながら絵作りができる。積極的にこの素晴らしい描写を味わいたいものだ。


LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

飛鳥山界隈には洋館がある。ISO感度を落として、絞り開放で撮影してみる。ズミルックス特有のベールをかぶったようなにじみが、雰囲気を醸し出す。特に白い被写体にはにじみが出やすいので、意識して撮ると面白い。

LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

ズミルックスは開放から絞り込むとどんどんシャープになってくる。近景から遠景まで破綻なく描写する。しかもシャープ過ぎずに、柔らかな描写。一度使ったらやめられない。

LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

散歩の楽しみの一つは看板や言葉の発見。「たたみ!」という言葉が目に飛び込んできた。そういえば、日常で「たたみ」という言葉はあまり使わなくなった。新しいたたみの匂いを嗅ぎたくなった。
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

緑にあたった光は美しい。最短撮影距離まで寄って脇を締めて、慎重にシャッターを切る。やはりズミルックスはいい。光のにじみが何とも言えず美しい。

LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

強い太陽に光を見ると、つい撮影したくなるのが、ズミルックスを好きな証。どんなゴーストが出るのか毎回ワクワクする。秋から冬にかけての夕方はズミルックス好きには絶好の季節。ゴーストを活かして味わいたいものだ。
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

夕暮れ時の遊歩道は、子供やお年寄りの憩いの場。夕暮れの光とついたばかりの灯りとが美しく映える。木の質感、石畳の質感。そして人の質感。どれもが心地いい。


LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

絞り1.4開放で、狛犬を撮影。狛犬とは獅子や犬に似た日本の獣で、想像上の生物。神社や寺院で勇姿を誇っている。石質感を柔らかく描写し、背景のボケは光を優しくにじませるような描写である。これを美しいとみるかどうかは感性の問題だ。


LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4



霊験あらたかといわれる王子神社。夕暮れの開放での撮影だが、近景から遠景まで柔らかな雰囲気で写し込まれている。本堂の光は美しくにじみ、ズミルックス独特のコマ収差が神社の荘厳で神秘的な雰囲気を醸し出している。非球面ではこの味はでない。


LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

神社の境内で黒猫の子供を発見。35ミリで最短撮影距離が1メートルというのが、このズミルックスで唯一の惜しい点。3匹の子猫と目があった瞬間にシャッターを切る。すっきりとした明るいレンジファインダーを見ながら撮影する楽しさは、液晶では決して味わえない。


LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

紅いのぼり旗は、夜でも独特の存在感がある。絞りは開放1.4。白い文字が綺麗ににじむ。今のレンズの綺麗なボケとは違う、光を包み込むようなにじみ。被写体にもよるだろうが、ライカで町を散策するには、最適のレンズの一本だ。


LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

飛鳥山には都電も走っている。これは昔を復刻した車両。当時はとてもハイカラな乗り物だったのだろう。電車の光と踏切の光。そして夕暮れの光が美しく共存している。球面ズミルックスを使うと、優しい光や被写体を探すようになる。レンズの描写と人間の感性との関係は実に面白い。


LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

絞り開放でのスナップ。コマ収差が実にお見事。人の背中には人生が見える。


LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4
LEICA M9-P + Summilux 35mm / f1.4

ズミルックスの集大成のような一枚。もちろん開放での撮影。コマ収差ににじみ、そして柔らかな描写。線路の光も拡大すると惚れ惚れとしてしまう。クセ玉の代表といわれ、好き嫌いの分かれるズミルックスだが、クセをイメージして、それがピタッとはまった時の満足感は、もうたまらない。どんなに優秀なレンズがこれから出現しても、このズミルックスはずっと使い続ける。それほど欠かせないお気に入りの一本だ。


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