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週刊カメラーズ・ハイ!第12回『手のひらサイズに凝縮された愛すべきギミック』

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┃週刊カメラーズ・ハイ!第12回 『 手のひらサイズに凝縮された愛すべきギミック 』
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-手のひらサイズに凝縮された愛すべきギミック-

一口に「良く写るカメラ」なら、無数にある。
しかし、「操作する喜びがあるカメラ」となれば、話は別だろう。
面倒くさくていい。操作することそのものを楽しめる写真機がいい。

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「CONTAX T」

こんなサイズでも二重像合致式のれっきとしたレンジファインダー機。
後の高級コンパクトカメラブームの火付け役ともなったCONTAX T2、
Tシリーズの最終型であり高い描写性能と多機能性にプロのサブカメラとしても
重宝されたCONTAX T3といった華々しい名誉を持つ後継機の影に隠れて、
その存在が評価されることは少ない。

ポケットにも忍ばせることができ常用しやすいコンパクトカメラは
それだけに機能や操作性も必要最小限に削られ、決して「便利である」とは言い難い。
小さいなりの弊害というものがある。それでも、仕掛けられたギミックをこの手で操作し
操る喜びが、この小さな写真機には詰まっている。

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まず目を引くのが、フロントカバーを前に倒してレンズが出てくる「沈胴式」の構造だろう。
往年のスプリングカメラを彷彿とさせるギミックは、即写性などとはほど遠く、
けれどもこのカメラを機能させる最初の一手として、確かな手ごたえと共に
写真を撮る心構えを整えてくれる。

距離計を備えたCONTAX T、フォーカスは当然マニュアルで操作する。
これこそが、自分がこのCONTAX Tと出会うこととなった最大の特性である。
「小型でポケットにも入る」「ピントリングでのマニュアルフォーカスが可能である」
このたった二つの条件から探し始め、辿り着いたカメラは、
それだけでなく「よく写り」、「操作する喜び」まで備えてくれていたのだから
運命を感じた、と言っても決して大袈裟ではなかった。

とはいえ、小型であるがゆえのピント、絞りの操作のし難さや
ファインダーの二重像の見辛さ等、全く不満がないわけではない。
フィルム巻き上げレバーに至ってはゴリゴリとした手応えで、
使い始めの頃はすぐに壊れてしまうのではと懸念したものである。今では慣れたものだが。
そのような欠点もあれど、しかしそれらを補ってなお余りある魅力に満ちている。

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CONTAX Tを語る上で、デザインについての話は外せない。
一見するとフラットな外形だが、フロントカバーを倒した時には、途端にクラシカルな匂いを漂わせる。
ドイツ・ポルシェグループによるボディデザインであることはあまりに有名。
というのも、後継機となるT2、T3やTVSシリーズに至るまで、
すべてはこの初代機CONTAX Tのデザインを踏襲し、正面向かって左上の
「Tカット」と呼ばれる角を落としたシャープなデザインが、Tシリーズの
デザインにおける大きな特徴になっているのだ。

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アルミ合金外装のメタリックなボディの中で、一際存在感を放つのは多結晶サファイアの
赤いレリーズボタン。ダイヤモンドに次ぐ硬度を有し、傷がつきにくいという利点がある。
カメラを構えた時に指先から得られるその滑らかな表面の感触が、シャッターを切るたびに
ささやかな優越に浸らせてくれるところも、CONTAX Tの美点。
裏蓋(底蓋?)を本体から引き抜いて行うフィルム装填の構造も、いい。

レンズはCarZeiss T*Sonnar38mmF2.8。申し分ない。
標準よりも適度に広い画角が、これ1台でも、コンパクトさでサブカメラとしても、
状況に合わせて選択できるだろう。
コントラストが高めで、ピントがしっかりきた時には最高にシャープ。
ツァイスの恩恵を存分に味わうことができる。この小さなカメラで。

(以下、CONTAX Tで撮影した写真)

万能でも、便利でもない。
けれどもそこにこそこのカメラの良さは潜んでいて、贅沢を許された高級コンパクトたる
ギミック、素材、仕様は、どうにも自慢したくなって、いけない。

おかげで今では2台のCONTAX Tが、我が家の本棚の一角で静かに鎮座している。

カメラーズ・ハイ

[ Category:etc. | 掲載日時:14年07月29日 19時00分 ]

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