マップカメラ店長がカメラについてアレコレ語る『極私的カメラうんちく』

第8回:ファインダー視界

一眼レフのプリズムファインダー(以下ファインダー)の性能を表示するときは、一般的に「ファインダー倍率」や「ファインダー視野率」が使用される。

 一眼レフファインダーの持つ役割とは言うまでも無く構図の確認とピントの確認である。構図の確認には視野率が影響するが、ピントの確認精度にはその倍率が大きく影響する。

 フォーカシングスクリーンやプリズムの性能にも因るが、概ね倍率の高いファインダーはMF時の測距精度が高く、低いファインダーはそれだけ測距精度が下がると言ってよい。そのためMF全盛時には高倍率のファインダーが盛んにもてはやされたが、その後は倍率を上げ過ぎると眼を近づけなければ像の隅が見えにくくなるという理由から、むしろ倍率を下げてアイポイントを長くする(眼を離しても像全体が見える)ことを優先した製品が多くなった。この傾向はピント合わせが自動化したAF一眼レフ以降特に顕著となり現在に至っている。

 ところで「見かけ視界(視野)」という言葉をご存知だろうか。

 「見かけ視界」とは双眼鏡やフィールドスコープで用いられる表現で、簡単に言うと覗き込んだ時に見える像がどのくらいの広さで見えるかを表現する数値である。同じ倍率の双眼鏡であってもこの数値が大きいほど視野が広いため対象物を捜しやすく、結果使いやすいことになる。一眼レフのファインダーに用いられることは無い言葉だが、もしこのイメージを一眼レフのファインダーに持ち込んでみるとどうなるだろうか。もちろん一眼レフのファインダーは写真として写る範囲を表示するため、双眼鏡の見かけ視界とは同じ意味で語ることが出来ないことは承知の上である。念のためつけ加えるがここで言う「視界」とは倍率とも視野率とも異なり、また「写っている範囲」つまり画角とも一切無関係である。ファインダー像全体がどのくらいの大きさで見えているかということであり、そういった意味で「見掛け視界」とイメージがよく似ている。

 一眼レフの場合、「視界」の概念に最も近い数値として事実上「倍率」を用いることが多い。一眼レフは35mm判を最もポピュラーなフォーマットとして各社で採用され進化して来たため、同じフォーマットを採用している同士では視野率と倍率さえ表示すればその視界をイメージすることは容易だからである。すなわち同一のフォーマット上において倍率と視界はほぼ同じ意味であり、そのため別の数値を持ち出してまで「視界」を表現する必要性はあまり無かったといえるが、これが大幅に異なる大きさのフォーマット同士の「視界」を比較するとなれば事情は一変する。

 昨今各社から発売されているデジタル一眼レフには様々な大きさの撮像素子が用いられている。その大きさは中級機では概ねAPS-Cサイズに統一されてはいるが、メーカーやグレードによってはレンズ焦点距離の換算値にして2倍から1倍(即ちフルサイズ)あるいはそれ以上の大きさまで様々であり、当然それらをランダムに比較する上でファインダー倍率と視界の関係は等価ではない。

 例えばニコンDXフォーマットを採用したD2Xはファインダー倍率0.86倍、視野率100%だが、フィルムカメラで倍率0.74倍、視野率100%のF6のファインダーと「視界」という観点で比較すると、D2Xは77パーセント程度の大きさになってしまう。

 これは同じ視野率100%の最新型ハイエンド機同士でも、むしろ倍率の低いフィルムカメラの方が遥かに広い映像を見ながら撮影ができることを意味しており、もしF6と同じ「視界」を確保しようとすればD2Xには1.11倍のファインダー倍率が必要である。当然この例ではフィルムに比べて小さい撮像素子がファインダー像にも大きな影響を及ぼしているといえるが、これが異なる視野率同士になると話はさらに複雑になってしまう。

 少し大袈裟に言えばファインダー越しの映像は撮影者の記憶である。当然決定的瞬間の目撃者であり当事者であるべき撮影者の記憶となるファインダー像に安易な妥協は許されるべきでは無い。一眼レフを選択する上でファインダーの倍率を含めた視界の広さは臨場感とピント精度の両面で非常に重要なポイントといえる。

 そこでこれは私見だが、もしフォーマットの異なる製品同士の「視界」を直線的に比較できる「ファインダー視界」を表す各社共通の表示方法があれば、それが一番なのではないだろうか。それは実際にカメラを手に取ることが出来ない人に最も実感に即した情報を伝える最も有効な手段であり、またフォーマットの異なる他機種との比較にも有効だろう。使い手側にイメージがしやすく比較が容易であることが、意欲的なスペックを搭載した機種の登場を促すことは昨今のズーム比率や画素数競争などの例を見れば明らかであり、逆に解かり難いスペックの改良を優先順位の上位に押し上げることはなかなか難しいものである。しかし残念ながらデジタル一眼レフの時代になってからもファインダー仕様の表示方法はいまだにフィルムカメラの時代と何も変わっていない。

 デジタル一眼レフの改良は日々進んでいるが、現在でも小さな撮像素子は狭くて遠いファインダー像に直結している。しかし一部にはファインダー像の向上に意欲的に取り組んでいるメーカーがあることも事実であり、それらが正当な評価を受けた上で、ひいては良い影響が全体に及ぶためにも各メーカーのファインダー性能の表示方法には是非意欲的な改良を望むものである。

written by ストロベリー小野
この記事のカテゴリーは『極私的カメラうんちく』です | 2005年08月20日

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