マップカメラ店長がカメラについてアレコレ語る『極私的カメラうんちく』

第49回:デジタルカメラを開放するもの

デジタルカメラが手軽に使えるようになった理由は様々な改良の結果には違いないが、今にして思えばメモリーカードの交換が自由に出来るようになったことが、大きなターニングポイントだったように思える。

現在は当たり前のようにデジタルカメラに使用しているメモリーカードだが、PCの周辺機器のように扱われていた頃の黎明期のデジタルカメラは、メモリーカードではなくカメラに内蔵したメモリに画像データを蓄えるしくみだった。そして内蔵された数MBのメモリがいっぱいになったら、撮影を続けるためにはカメラを専用ケーブルでパソコンに繋いで、それまでに撮影した画像を転送するしかなかった。つまりパソコンの無い屋外環境等での撮影時には、内蔵メモリがいっぱいになった時点で、電源が残っていても撮影は事実上終了だったのである。
このことは、フィルムを交換することによって撮影を続けることが出来るフィルムカメラの機動性に比べると明らかに見劣りしており、また当時は画素数も数十万画素しかなく、フィルムカメラの画質には到底及ばなかった黎明期のデジタルカメラは、まだまだフィルムカメラに太刀打ちすることなど出来ないか弱い存在だったのである。
しかしその後、メモリーカードを抜き差しできるスロットを備えたデジタルカメラが登場しはじめた。デジタルカメラの画質が急激に向上するとともに画像のファイルサイズが大きくなってきたため、内蔵メモリでは容量が賄えなくなってきたためである。メモリーカードの交換が簡単に出来るということは、電源と予備のメモリーカードさえ十分確保すれば、理論上いくらでも撮影が出来るということになる。ついにデジタルカメラがPCに縛られる時代は終わりを告げ、画質のことはさておき、ようやくフィルムカメラと同じ土俵で戦えるようになったのである。

ところで、現在デジタルカメラに使用されているメモリーカードは何種類もあるが、その生い立ちや普及率にはそれぞれ大きな違いがある。
まず最も普及率が高いのがCF(コンパクトフラッシュ)とSDカードで、これらはカメラメーカーの壁を越えて広く採用されている。
CFはもとよりPCカードの規格の一部として作られている。PCカードはかつてノートPCや小型PCで容易に使用できる外部メディアとしても利用されていた。このことからCFは非常に安価なアダプターを使用することによってPCカードスロットが使用できるメリットがあり、デジタルカメラのメモリーカードが交換式になった当初から普及率が高かった。そして現在はデジタル一眼レフの中級機からハイエンド機が数多くCFを採用している。これはCFには高速で大容量の製品が供給されている一方で、CFがメモリーカードのなかで物理的なサイズが最も大きく、カメラ本体の小型化を意識する場合には採用が難しいという事情背景があるためと考えられる。
そしてSDカードは比較的後発の規格であるにも関わらず、MMC(マルチメディアカード)と互換性があることや、デジタルカメラ以外の電子機器や家電で採用されていた実績から、カメラメーカーを問わず広く採用され、現在ではコンパクトデジタルカメラはもちろん、近年では特に初級者用デジタル一眼レフでの採用率が高くなっている。普及率が高く、それでいて大きさがCFの半分程度のSDカードは、小型デジタルカメラのメモリーカードとして格好の特長を備えている。
一方でソニーが推進するメモリースティックシリーズと、オリンパスとFUJIFILMが推進するXDピクチャーカードは、推奨するメーカーの壁を越えられず、デジタルカメラにおける普及率はCFやSDと比較すると低いままで留まっている。メモリースティックのシリーズはソニー製、XDピクチャーカードはオリンパス製とFUJIFILM製のデジタルカメラにしか採用されていない。それでもまだメモリースティックシリーズはソニー製のPCやゲーム機等にも採用されているが、XDピクチャーカードは、オリンパスとFUJIFILM両社がかつて推奨していたスマートメディアの代替メモリーカードとして、両社共同で「カメラ専用」に開発したものである。そのためXDピクチャーカードは両社のデジタルカメラ以外の用途が無いことから、現在カメラ用としては最も普及率の低いメモリーカードとなっている。
メモリーカードの汎用性や普及率はメモリーカードの生産量に直結し、ひいては販売価格に直接反映する。当然沢山売れて、沢山作られているもののほうが量産効果によって価格が安くなるのである。そしてメモリーカードの価格はユーザーから見ればイニシャルコストであり、割高なメモリーカードしか使用出来ない場合はカメラ本体の売れ行きにも影響する。そのためかFUJIFILMではSDカードも使用できるコンパクトデジタルカメラが一昨年あたりから発売され始め、またオリンパスもアダプターでマイクロSDでも使用できる機種を販売している。XDピクチャーカードの今後の行く末が案じられるところである。

ところで、メモリーカードへの書き込み速度が速ければ、それだけデジタルカメラに内蔵したバッファメモリへの負担が軽減され、カメラのパフォーマンスを上げる結果となるため、メモリーカードの購入者にとって書き込み速度は重要な関心事である。
このためメモリーカードには○倍速という表記がされている場合が多いが、この表記法は元々アメリカのレキサーメディアが提唱したものである。ちなみにこの○倍速という表現は、コンパクトディスク(CD)の転送速度である毎秒150KBを1倍速としていることはご存知だろうか。仮に書き込み速度が120倍速といった場合、0.15(MB)×120=毎秒18MBの書き込み速度を有していると計算することができる。

このように現在はメモリーカード交換式のデジタルカメラが全盛だが、最近ではカメラ本体に無線LANを搭載し、インターネットに接続して画像をWeb環境に保存できるデジタルカメラが発売されている。これからの時代、画像データの保存方法はもはやメモリーカードや内蔵メモリに留まらないということか。黎明期のデジタルカメラが内臓メモリから交換式のメモリーカードになってPCの呪縛から解き放たれた時のように、今度はWeb環境との直結によって、メモリ容量という呪縛から解き放たれる時なのかも知れない。

written by ストロベリー小野
この記事のカテゴリーは『極私的カメラうんちく』です | 2009年01月20日

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