マップカメラ店長がカメラについてアレコレ語る『極私的カメラうんちく』

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第51回:ズームレンズあらかると

ズームレンズといえば現在の写真用レンズとして中核的な存在であり、ズームレンズが無ければ写真産業や写真文化はもはや全く成り立たないほどである。現在の交換レンズのラインナップは、特に使用頻度の高い焦点距離領域はズームレンズによって何重にもカバーされている。もちろん単焦点レンズでなければカバーできない領域はある程度残っているにせよ、それもほんの僅かである。また現在、高性能ズームレンズの描写性能は単焦点レンズに匹敵するものとなり、中には単焦点レンズの画質を上回るものさえあるというから驚きである。

しかし当然、かつては写真レンズといえば単焦点レンズが基本だった時代があった。レンズの画角とファインダーの画角との連動が難しいレンジファインダー機では、ズームレンズが一般化することは無く現在でも単焦点レンズが基本だが、ファインダーの構造がズームレンズに向いている一眼レフの場合は、その歴史のなかでズームレンズは積極的に取り入れられてきた。
ズームレンズは標準領域の焦点距離でまずその地位を確立し、その後望遠系、広角系へとその領域を延ばしていった。その結果が現在のズームレンズの繁栄につながっているのだが、その間には様々な「変り種」と呼べるようなズームレンズも作られてきた。
変り種といえば、フィッシュアイレンズをズーム化したフィッシュアイズーム(PENTAX FA17-28mm F3.5-4.5、DA10-17mmF3.5-4.5、TOKINA 10-17mm F3.5-4.5)や、反射望遠レンズをズーム化したレフレックスズーム(PENTAX 400-600mmF8-12)、マクロレンズをズーム化したズームマクロ(Nikon 70-180mmF4.5-5.6)などが挙げられる。またシグマのAPO200-500mmF2.8EX DGのように、単焦点超望遠レンズのスペックをも大幅に上回る超弩級の超望遠ズームもある。さらに現在では当たり前になったズーム比が10倍近く、あるいはそれを超えるような超高倍率標準ズームレンズも、その当初は特殊なズームレンズの一種として取り扱われていたのである。
これらの変り種のズームレンズに共通するのは、単焦点レンズのズーム化へのあくなき探求心であり、また、超高倍率標準ズームレンズを除くと、あまり一般的には使用頻度が高いとはいえない単焦点レンズをズーム化することにより、さらに新しい価値観を見出そうとする試みということも出来るだろう。
中でもフィッシュアイズームは、どのメーカーの単焦点レンズも180度の対角線画角に固定されているフィッシュアイレンズをズーム化したことによって、ディストーションが残った中間領域の画角が使える唯一の手段であり、単焦点レンズがこれまでカバーしてこなかった撮影領域に踏み込めるという意味で非常に興味深い。

ところで厳密に言うと、正しくズームレンズと言う場合はズーミングによる焦点移動が極力起きないように設計されていることが条件である。これはズームレンズの発祥がスチル写真ではなくムービーの分野であることに由来するものであり、ズーミングによってピント位置がズレるレンズは、ズーミングをしながら連続的な映像を撮影するムービーでは非常に使いにくいためである。
しかし写真用においては、特にオートフォーカスの普及以来、画角を決めてからピントを合わせることによってピント移動のデメリットがなくなったといえるため、昨今の写真用「ズームレンズ」の中にはズーミングによってピント位置が大きく変化するものが多々あるのが実情である。ピント位置を固定したままズーミングが出来るレンズは構造がその分複雑になるため、一般用のレンズにおいては小型軽量化やコストダウンのためにその性能は犠牲になっていると考えられる。これらズーミングによるピント移動を「許す」ズームレンズは、本来「バリフォーカルレンズ」と定義されるべきものである。かつてズームレンズとバリフォーカルレンズは厳密に区別されていた時期もあったが、現在では少なくとも写真用レンズにおいてその区別は無くなってしまったといってよいだろう。

単焦点レンズとズームレンズを比較する場合、当然使い勝手においてはズームレンズが大きく上回るが、一方でズーム化することには同じ焦点距離で比較した場合開放F値が暗くなるデメリットがある。デジタル一眼レフでイメージサークルが最も小さいフォーサーズの一部のズームレンズを除けば、ズームレンズの開放F値は高級レンズであっても標準領域でもF2.8程度が精一杯であり、一般用の標準ズームレンズならばF3.5からF5.6程度とさらに暗い。
また一方でズームレンズのズーム比率は大きくなる一方である。特に広角から望遠領域にかけての超高倍率標準ズームのズーム比率の進歩は目覚しく、当初7倍程度のズーム比率から始まったこのジャンルの主流は、現在13倍から15倍にまで達している。広角から超望遠までカバーする高倍率ズーム一本で、多くのユーザーにとって事実上レンズ交換が不要になってしまうというのも、レンズ交換という性能が一眼レフにとって重要な性能の一つであることを考えると複雑な心境である。しかし、この数ヶ月の間にニコンからは新設計の50mmF1.4とDXフォーマットで50mm相当の35mmF1.8が相次いで新発売されている。どちらも手ごろな価格設定であり、2本目の交換レンズとしても最適な画角である。ズームレンズ全盛の時代であればこそ、単焦点レンズの良さが見直されるべき時代なのかも知れない。

written by ストロベリー小野
この記事のカテゴリーは『極私的カメラうんちく』です | 2009年03月20日

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