Panasonic LEICA DG ELMARIT200mm F2.8 POWER O.I.S.
望遠レンズ使いの方なら一度は使用してみたいと思うであろう“ヨンニッパ”というスーパースペックのレンズ。しかし“ヨンニッパ”こと400mm F2.8レンズはその大きさや重量だけでなく、価格の面でもなかなか手が出せない領域にあるレンズです。 今回の『Panasonic LEICA DG ELMARIT 200mm F2.8 POWER O.I.S.』というマイクロフォサーズ用レンズは35mm判換算すると まさに“ヨンニッパ”のレンズなのですが、驚きなのが全長約174mmの大きさと、30万円代の価格です。これがフルサイズ用なら価格が3倍くらい変わってくるでしょう。センサーサイズのメリットを生かした本レンズはいかなる描写を見せてくれるのか、早速撮影に向かいました。
超望遠レンズの撮影場所に選んだのは東京の空の玄関口とも言える羽田空港。久々に見たボーイング747は迫力満点の大きさです。ファインダーを覗いてまず驚いたのが、そのレンズサイズと焦点距離とのギャップ。マイクロフォーサーズ機としては大柄のGH5に『Panasonic LEICA DG ELMARIT 200mm F2.8 POWER O.I.S.』を装着すると、他メーカーで言うところのAPS-C一眼レフ機に少し短い70-200mm F2.8を組み合わせたようなサイズなのですが、本レンズはライカ名の付いた換算400mm F2.8のスペックを誇るフラッグシップレンズです。機材の見た目以上に焦点距離が長く、そして明るい。一枚目の写真はF2.8開放で撮影したのですが、素晴らしい解像力と立体感、そして階調表現を持ったレンズだということが分かります。
開放F値が明るいとボケ味という点に焦点が行きそうですが、それは標準や中望遠での話。大口径超望遠レンズでの一番のメリットは高速で切れるシャッタースピードにあります。動く被写体を写真で止めることができ、薄暗い環境でも被写体ブレを抑えて撮影のできる大口径超望遠レンズはまさにプロカメラマン御用達の一本と呼べるレンズです。
本レンズを使用して感じたのがF2.8にもかかわらず、深い被写界深度を持ち合わせているということ。それはセンサーサイズによるものですが、超望遠レンズでの撮影で大きなメリットだと思いました。立体感のある開放描写をボケすぎず使用でき、高速シャッターで撮影することができる。飛行機、スポーツ、動物の撮影でこれほど使い易い超望遠単焦点レンズは他にないかもしれません。
2段絞りとなるF5.6の描写は四隅まで隙のない描写。大口径レンズの宿命とも言える周辺光量落ちも写真からは見られません。そしてフォーカスを当てたコックピット周りは見張るほど緻密に写し出しています。
換算400mmでスナップを撮る方はいないかもしれませんが、レンズサイズだけ見れば違和感のない大きさと重さです。そしてハイキー寄りの写真でも破綻しない細い線描写と高い解像力は『Panasonic LEICA DG ELMARIT 200mm F2.8 POWER O.I.S.』の性能の高さがうかがえる一枚です。
ムクドリが一斉に飛び立つ瞬間を撮影した一枚。被写体の時を止めたような写真が撮れるのは本レンズならではと言えるでしょう。
『Panasonic LEICA DG ELMARIT 200mm F2.8 POWER O.I.S.』を使用していて驚いた点がもう一つ、優れた近接撮影性能です。最短撮影距離は1.15mで、その撮影倍率は換算で0.4倍。1.4×テレコンバーターを使用すれば0.56倍というマクロレンズ並みの近接が可能です。遠景の説明で深い被写界深度と話しましたが、さすが200mm F2.8ということもあり、寄れば背景が溶けて無くなってしまいそうなボケ味を発揮します。
超解像力と使いやすさが融合した、新時代のヨンニッパ。
胴が太く、重量が約4キロ近いフルサイズ対応“ヨンニッパ”に比べ、『Panasonic LEICA DG ELMARIT 200mm F2.8 POWER O.I.S.』は重量約1.2キロと別次元の取り回しの良さです。撮影の際は三脚座を外し、ずっと手持ちで撮影を行ったのですが、全く苦にならない大きさと重さでした。これがフルサイズ用なら撮影場所への持ち運びだけでも大変な労力だったことでしょう。また、本レンズの優秀な手振れ補正とホールドしやすいレンズサイズのおかげで、ファインダーを覗いていても被写体がユラユラと揺れるようなことはありません。これも手持ち撮影する上で大きなメリットだと言えます。AFも新開発されたスリーマグネットリニアモーターの採用により、静かで高速。フェードインするようなフワッとしたスピードではなく、キビキビとした動きで被写体を捉えてくれます。
近年のマイクロフォーサーズ機における画質向上も相まって、素晴らしい描写を見せてくれた『Panasonic LEICA DG ELMARIT 200mm F2.8 POWER O.I.S.』。この画質と使いやすさを考えると、これからの機材選びが変わってきそうな予感がしました。
滑走路を眺める女性をスナップした一枚。『Panasonic LEICA DG ELMARIT 200mm F2.8 POWER O.I.S.』は情緒的に景色を切り取ってくれるレンズです。
絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/500秒 / ISO:400 / 使用機材:Panasonic GH5 + LEICA DG ELMARIT 200mm F2.8 POWER O.I.S.
今のマイクロフォーサーズ機が持つ高い画質性能を十二分に発揮することができる『Panasonic LEICA DG ELMARIT 200mm F2.8 POWER O.I.S.』。もうセンサーサイズだけで画質を語るのは過去の事になったのかもしれません。
本レンズには1.4倍のテレコンバーターも同梱されており、換算400mm F2.8 と 560mm F4 の2つの焦点距離を使い分けることができます。これは実質2本分の大口径レンズを手に入れたようなもので、満足度も高い1本です。
こちらもテレコンバーター着用で撮影した一枚。おそらく本レンズの開発と並行してテレコンバーターも作られたのでしょう、画質の劣化などは全く感じさせない描写力です。
日が傾きオレンジと黒のコントラストが美しく滑走路を照らしている一枚。あらためて本レンズの素晴らしい描写力を感じました。
偶然出会えたこの富士山に本レンズの画角がピッタリとはまりました。寒い季節になってきましたが、このような偶然は写真撮影をしていて嬉しい瞬間の一つです。
あらゆるフィールドへ持ち出せる、大口径超望遠レンズ。
『Panasonic LEICA DG ELMARIT 200mm F2.8 POWER O.I.S.』を使用してみて、これほど体も気持ちも軽くなれる大口径超望遠レンズは初めての経験でした。通常このクラスのレンズになると持ち出すだけでも気合が必要なのですが、本レンズは少し短い70-200mm F2.8を持ち歩いているような感覚で、一日中持ち歩きながら撮影をしても苦になりません。そして積極的に開放から使える素晴らしい描写力は唯一無二のもの。超望遠レンズの購入検討に『Panasonic LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm F4.0-6.3 ASPH. POWER O.I.S.』の名前も上がると思いますが、切れ味と立体感に関しては本レンズの方が一枚上手だと感じました。
また、この大きさなら舞台撮影や運動会などのイベントにも気軽に持っていくことができるはずです。バズーカと呼ばれるようなフルサイズ用超望遠では場の空気に合わないシーンもありますから、本レンズだからこそ撮影ができる、そして写真にすることのできる被写体があるように思ます。
メーカーが「LUMIX史上最高の描写性能を実現」と謳っていますが、まさにその言葉は伊達でないと感じた1本でした。利便性はズームに分があるものの、描写力にこだわるのなら『Panasonic LEICA DG ELMARIT 200mm F2.8 POWER O.I.S.』を是非おすすめしたいです。決して期待を裏切らない素晴らしいレンズでした。
Photo by MAP CAMERA Staff