まずボディは『EOS 5D MarkIII』をチョイス、険しい峠に架かる古いアーチ橋をF5.6の絞りで撮影しました。組まれたレンガの一つ一つまで捉えるシャープな描写は写真の隅まで高い解像力を保っているのが分かります。コントラストも高く立体感のある描写は橋の存在感をより引き立ててくれました。
日本の秋はすすきが絵になりますね。ふわりと開いた穂が秋の深まりを感じさせてくれます。太陽を写真の中心に入れるなんとも意地悪な構図でしたが、派手なフレアが発生する事無く、光源のすぐそばまで解像しているのがわかります。“SWC”と呼ばれるCanon独自の特殊コーティングを採用した事により本レンズの逆光特性は驚くほど高いものになっています。
手に留った赤トンボを絞り開放のF1.4でパシャリ。EF35mm F1.4L II USMは先代のレンズから最短撮影距離が0.3mから0.28mに短縮されました。9枚羽根の円形絞りを採用していますので大口径レンズの魅力でもある美しいボケ味を楽しむ事ができます。
高地では徐々に紅葉が始まり、山の木々が色づき始めていました。絞りF8での描写をご覧下さい、遠景ながら葉の形さえ分かる高い解像力はさすが最新のLレンズと言っていいでしょう。素晴らしい描写力です。
撮るとすぐ分かるCanonレンズの美しい色表現とコントラストの高い写り味。新開発したBRレンズの採用により、大口径レンズの弱点とも言える軸上色収差(色にじみ)を抑え、EF35mm F1.4L II USMは絞り開放から高画質を実現しています。撮影を終えた写真を確認しながら、以前に光学設計を専門にしている方へのインタビューで「収差がないレンズは作れる。でもそうするとレンズの味というものが無くなってしまう」という話を思い出しました。各メーカーそれぞれに感じるレンズの味。EF35mm F1.4L IIは撮影にネガティブな要素となる収差は取り除きつつも、しっかりとCanonらしさを感じられる味付けがされているレンズです。Canonが目指す、Canonを必要としているユーザーが目指している描写を実現した単焦点レンズの完成形の一つと呼べるかもしれません。
高解像力を生かした風景写真、柔かなボケ味を生かしたポートレートなどEF35mm F1.4L II USMはどんな被写体でも最高のパフォーマンスを見せてくれるレンズです。
光の捉え方が非常に上手なレンズです。スッキリと抜けの良い描写と自然なアウトフォーカスのボケ味。透明感のあるガラスの映り込みなど表現豊かに写し出してくれます。
私が思うCanonらしい色彩表現の一枚。鮮やかでコントラストの高い描写は紅葉撮影にぴったりの組み合わせです。前ボケ・後ボケ共にキレイですね。
この写真はAPS-C機である『EOS 7D MarkII』での撮影。画角は換算56mm相当の標準レンズとなります。レンズ中央の最も画質がいい部分を使えますのでメリットが大きい組み合わせとも言えるでしょう。Canonのこってりとした色合いはアンダー露出の写真にも濃厚な味と魅力を与えてくれます。
超高画素モデル『EOS 5DsR』で石畳の上を走り去る86。撮影した本人が言うのも何ですが、「おぉ!かっこいい!」とその写りに感動してしましました。Canonのカメラを使用すると感じる被写体の存在感を強調する描写。深みのある明瞭度と色彩のコントラストが写真に立体感を与えてくれます。5DsRとの組み合わせもベストマッチで石畳の解像力を見ても申し分ない描写力です。
絞り開放での描写はピント面が非常に薄く、フォーカスを合わせた所がまるでスポットライトを浴びたように写真の中で浮かび上がります。
好みもあると思いますが、このレンズは開放描写が一番美しく感じます。解像しながらも硬すぎないフォーカス部と柔らかなボケ味、濃厚な色彩表現は最新のレンズながら銘玉と呼べる一本です。
光量が少ないシチュエーションだったのですが、高い解像力ですね。画がべったりと潰れる事なく、掛けられたハンチング帽のツイードの起毛まで感じられる描写力。EF35mm F1.4L IIは暗所での撮影にも力を発揮してくれます。
ヴィンテージキャデラックのヘッドライトにフォーカスをあわせて絞り開放撮影。メッキパーツに反射した光源に注目です。EF35mm F1.4L IIは画面周辺部に生じる光の滲み、サジタルハロを抑制する設計で作られているので、絞り開放でも点光源がキレイに表現されているのが分かります。夜景や天体撮影をした時にその恩恵を大きく感じられることでしょう。
『Canon EF35mm F1.4L II USM』は最新設計という事もあり妥協のない描写と解像力を持ちながら、本レンズならではの個性を持った素晴らしい1本でした。最新レンズと言うと近年の高画素機に対応したシャープで解像感の高いレンズが多い中、EF35mm F1.4L IIはシャープという言葉だけでは納まらない、柔らかさと深みのある描写も兼ね備えており、撮影者のイメージによって作風をコントロールできる器の深さを持っています。本レンズを使用してみて『寸分違わず忠実にそのものを写す』というより『被写体のイメージをより印象的に写し出す』という風に私は受け取りました。ポートレート、ドキュメンタリー、色彩豊かな風景写真など写真の中で主人公となる被写体の魅力を本レンズは引き出してくれることでしょう。ぜひ『Canon EF35mm F1.4L II USM』で素晴らしい写真を残してください。
Photo by MAP CAMERA Staff