オリンパスのPENシリーズはそれまでのカメラ業界にあった、レンズシステムを使うカメラ=一眼レフという流れに一石を投じ、デジタル一眼カメラの普及と発展に大いに貢献したカメラと言って良いかもしれません。今回はその最新作『OLYMPUS (オリンパス) PEN-F』のご紹介です。 初代より続いたボディデザインは、オリンパスがフィルム時代に発売していたレンズ交換式ハーフカメラのコンセプトを踏襲したもので、今までにないコンパクトでクラシカルな一眼カメラとして大ヒットしました。そのPENシリーズも4代目を過ぎ、5代目に当たる今回の『PEN-F』は今までのシリーズとは一線を画する新たなカメラに仕上げてきています。
まず全体的に直線的なフォルムになったことで硬派なイメージに変わり、ファインダーを搭載したことで利便性の向上はもちろん、操作系も含めより本格派なカメラとして格が上がったように感じます。では実際どのくらい変わったのか、試写で進化を確かめてきました。
まずセンサー性能から話しますと、『PEN-F』は新開発の2030万画素Live MOSセンサーを搭載。高解像と階調表現を両立させ、50Mのハイレゾショットも撮影可能です。その解像力は通常撮影でもすぐ分かるもので、ボケを生かした開放撮影にもかかわらずフォーカス部は観葉植物の葉脈を写し出しつつ、滑らかな画の仕上がりに驚かされます。
少しアンダーに振った露出で撮影したのですが白の階調表現が良いですね。センサーサイズ以上の粘りを感じます。レンズも含め、コンパクトな『PEN-F』はスナップカメラとして最高の性能バランスです。しかもボディ内に約5段分の5軸手ぶれ補正機能も内蔵していますから低速シャッター時はもちろん、とっさに構えて撮影する際にも絶大な効果を発揮してくれます。
結露するガラスをマクロレンズで撮影した1枚。この『M.ZUIKO DIGITAL ED60mm F2.8 Macro』は良いレンズですね、多くの方から絶賛されている訳がわかります。フォーカス部の解像力は相当高く切れ味の鋭いの描写なのですが、『PEN-F』はそのレンズ性能を最大限に引き出してくれました。
『PEN-F』を使用して感じたのが、見た目の質の高さ以上にカメラとしての使いやすさと性能が凝縮されているということ。オリンパスのカメラシリーズは全てコンパクトな設計ではあるのですが、本機はより凝縮されて塊感が増したように感じます。ダイヤル類を操作した時の感触も良いですね、 カチッと決まるフィーリングに加え金属削り出しのダイヤルは質の高さと信頼感があります。また、背面液晶はタッチパネル内蔵のバリアングルモニターなのですが、液晶をひっくり返すと裏面に革張りが施されているのも◎。液晶表示が必要ない時に裏返しておくとタッチパネルによる誤操作を防げることはもちろん、街中のスナップではステルス性がさらに向上します。そして何よりカッコイイというのも大事ですね。『PEN-F』はカメラサイズ・デザイン・質感・機能と性能、全てにおいてオリンパスがこだわって作り上げた一台です。
カメラの前面左上にあるダイヤル、昔のフィルムカメラでいうスローシャッターダイヤル風のものなのですが、カラーコントロールの操作系がここに組み込まれています。オリンパス十八番のアートフィルターを選べる【クリエイティブダイヤル】だけでなく、【カラープロファイルコントロール】と【モノクロプロファイル】が新たに加わり、色や写真の仕上がりをマニュアルで変更できる機能が増えました。その中でも【モノクロプロファイル】は8色のカラーフィルターの効き目を3段階から選択できたり、明瞭度や粒状フィルム効果も任意で変えることができるこだわりの仕様。モノクロ派にも納得の機能が備わっています。
コンパクトなボディでここまで写れば誰も文句は言わないはずです。いつでも持って行きたくなるデザインとサイズは、ふとした瞬間に気づくシャッターチャンスを逃すことなく写真に収めてくれます。
多彩なアートフィルターも本機の魅力の一つ。被写体に合わせてアートフィルターを選び、写真を作り上げるのはとても楽しいですね。今やスマートフォンのアプリでも様々な色効果が付けられますが、カメラとしての性能と描写力が全く違いますから「より綺麗な写真をSNSに」という方にもおすすめです。
こちらの写真もアートフィルターを使って彩度と明瞭度をより強調した一枚。写真の印象を大きく変えてくれます。
絞り:F8/ シャッタースピード:1/3200秒 / ISO:200/ 使用機材:OLYMPUS PEN-F + M.ZUIKO DIGITAL 12mm F2.0
強い光を表面に受けてでの真逆光撮影だったのですが、さすがM.ZUIKOですね。フレアは光源周辺のみで抑えられています。絞りはF8なのですが、ここでも2030万画素の力を感じる高い解像力の描写です。オリンパスブルーの空を背景に細い枝振りの一つ一つまで捉えているのがわかります。
だんだんと花が咲き、外で写真を撮るのが楽しい季節になってきました。『PEN-F』の気兼ねしないサイズと重さは自然と写真を撮る機会を増やしてくれることだと思います。
夜のスナップでは強力な手振れ補正が撮影をアシストしてくれます。粒状フィルム効果も良いですね、モノクロ写真の魅力をさらに引き立ててくれます。
フィルム機の『PEN-FT』と並べてみました。上から見ると横幅・厚みがほぼ同じなんですね。シャッターやダイヤル類は全く違うのですが、そこにフィルム時代のPENを感じるのはデザインの力かもしれません。
『OLYMPUS (オリンパス) PEN-F』は小さなボディサイズにカメラの魅力が凝縮された一台でした。今までは広告イメージも含め女性ユーザーを意識したプロダクトに感じていましたが、この『PEN-F』はスタイリッシュながらもより本格派を意識した趣味性の高い機種になっています。機能面では手振れ補正やハイレゾショットはもちろん、1/8000秒まで可能な機械式シャッターや倍率の高いファインダーを採用していることで、カメラとしての基本性能が非常に高くまとまっています。また、本文中に紹介した【カラープロファイルコントロール】と【モノクロプロファイル】も面白いですね。被写体や気分によって写真の仕上がりを自由に変えることができますので、自分に合うセッティングを見つけてるのもとても楽しいです。気軽なカメラから、より趣味のカメラへと進化した『OLYMPUS (オリンパス) PEN-F』。ぜひこれからの撮影シーズンのお供にいかがでしょうか。
Photo by MAP CAMERA Staff