まさかこのようなレンズがフルサイズ用で登場するとは思いませんでした。今回のKasyapaは『SIGMA A24-35mm F2 DG HSM』のご紹介です。24-35mmという広角域をカバーした本レンズは驚きのF2通しという世界初のレンズになります。シグマからは『A 18-35mm F1.8 DC HSM』というAPS-C用のズームレンズが発売されたときも同様に驚きましたが、反面「イメージサークルが少し小さいAPS-C用だから実現できたのだな」とも思いました。ところが今回はフルサイズ用レンズでF1.8に迫るF2のズームレンズを登場させてきました。これはカメラ好きなら興味が湧かない方は居ないでしょう。はたしてその描写性能はいかがなものか、先日発売されたCanon EOS 5Dsに装着し試写へ出かけました。
撮影日は梅雨が明けたのではと思うほどの青空とギラギラとした灼熱の太陽。そんな日差しを浴びてブーゲンビリアが美しく咲いていました。さて、F2ズームとはどんなものだと思い、絞り開放F2・焦点距離35mm、被写体との撮影距離は最短の28cmでパシャリ。その写真を見て「これは広角ズームレンズじゃなくて単焦点の写りだ」と思わず一人でニヤリとしてしまいました。絞り開放ながら収差を感じないフォーカス部の解像力。そして深いボケ味はF2.8を超える明るさの表現だと感じました。
オブジェを見上げ絞りF8で撮影をしました。日差しの強い太陽が右上に入った為フレアが少し出ましたが、今回の撮影でフレアが出たのはこのカットのみでした。シグマレンズを使うと感じるのですが、金属やガラスなどの被写体と相性がとてもいいですよね。質感・立体感共に素晴らしい表現力です。
コチラの写真はF5.6で撮影。本レンズとEOS 5Dsの組み合わせということもあると思いますが、目を見張るような解像感に驚かされます。敷き詰められたタイルの一つ一つまで見事に写し出しています。
「F2.8通しのズームレンズがあればほとんどの写真が撮れる、しかしそれ以上の明るさやボケを求めるなら必然と単焦点レンズになる」というのがいままでの“常識”でした。今回の『A 24-35mm F2 DG HSM』を使用してみて感じたのは、まるで24mm、28mm、35mmの3本の明るい単焦点レンズを1つにまとめた様だという事。明るさの違いが分かりやすいボケ味もF2.8のズームレンズとは深さが一味違うように思えます。そして大口径・ズーム・広角ということでウィークポイントであろう絞り解放時の周辺減光や像の流れを見ても非常に良く抑えられているのが分かります。82mm径の口径と1Kg近い重量には最初「重っ!」と思いましたが、F2通しの広角ズームですからね。スペックはもちろん、写りを見てしまうとこの大きさに納得させられました。
注視したときのようにフォーカス部はシャープなピントの山が立ち、その周辺からフワリとボケていきます。広角ズームながら絞り解放時の描写がとても美しいレンズだと感じました。
モノクロームでの表現もいいですね。白く見える船体ですが微妙なグレートーンの違いもしっかりと表現し、立体感と質量が伝わってくる描写です。
長いカメラ史の中で革新的な技術やアイデアにより紆余曲折して今のカメラスタイルの“常識”があると思います。そんな中、今回SIGMAから登場した『A24-35mm F2 DG HSM』は常識を超えたとても挑戦的なレンズだと思えました。それでいて描写性能も妥協を一切感じない完成度です。プライベートでは単焦点レンズしか使っていない私ですが、そんな単焦点派の皆さんに是非オススメしたいレンズですね。今までのズームレンズのイメージが変わる表現力を持っているレンズです。dpシリーズにしてもそうですが、つくづくSIGMAというメーカーは面白いなと思いました。個性が強いと好みが分かれるのも事実ですが、そういったチャレンジがあるからこそ新しい物が生まれ常識が変わっていくのだと考えます。この『A24-35mm F2 DG HSM』はカメラ史の新たな1ページを捲るレンズになるかもしれません。
Photo by MAP CAMERA Staff