ミラーレス機とは思えないほどAF性能がすごいと話題になった『SONY α6000』の登場から約1年、さらに性能を磨き上げた上位機種が発売となりました。今回のKasyapaはSONYのAPS-C最上位機種『SONY α6300』のご紹介です。α6000発売当時は「179点像面位相差AF」というスペックに測距点がどれだけあるんだ!?と驚きましたが、今回登場したα6300はその倍を超える「425点像面位相差AF」という世界最多の測距点を持つAFシステムを搭載した機種。普段中央一点で撮影する事が多い私には、425という数値だけでなんだかドキドキしてしまいます。果たしてそのAF性能はいかなるものなのか、CMOSセンサーも変わったという事なので解像感や高感度性能も確かめるべく試写へ向かいました。
この城址跡へ来たのは小学生ぶりかもしれません。地元のはずなのですがなんだか景色が新鮮に感じました。訪れた時間帯は午前11時ごろ。雲は多いものの、その合間から太陽が顔を出すと漆喰の塗られた白い城壁が眩しく光っていました。しかし新しいα6300のセンサーはハイライトが白とびする事なく粘りを見せてくれています。石垣も見てみると表面のざらりとした石の質感が分かる解像力。APS-C機で2400万画素の機種は多く出ていますが、ここまで写るとは想像以上でした。
高くそびえる石垣を見上げてのカット。鋭角な角の明暗がハッキリ出るように露出を少しアンダー寄りにしましたが、よく見るとシャドウ部も黒つぶれする事なく石の表情を写し出してくれているのがわかります。城壁のカットも含め、α6300の新センサーはダイナミックレンジの広い表現を可能にしました。
満開の白木蓮の大木を望遠レンズを使い撮影。最新の2400万画素センサーの解像力もさる事ながら『FE 70-200mm F4 G OSS』の描写力も素晴らしいですね。
今までのAPS-Cセンサーを搭載したミラーレス機は、連写を得意とする一眼レフにAF性能やレスポンスは及ばないというのが一般的な意見だったと思います。例えば連写機能の秒間コマ数は優れていても、実際使ってみるとEVFやディスプレイのブラックアウトする間隔が長くて被写体を追えなかったり、奥から手前に素早く移動する被写体に対応できなかったり、などなど。そこはミラーレス機だから苦手だよね、と今まで思っていたネガティブな面をこのα6300は見事に裏切ってくれました。この記事の1枚目と上記に使用した寒桜とメジロの写真、満開の花の中を小さなメジロがとても素早く飛び回っているのですが、このα6300の『4D FOCUS』はしっかりと被写体に食らいつきシャッターチャンスを逃しません。また、連写時のブラックアウトも8コマ/秒の連写モードだとタイムラグが少ない『ライブビュー連写』という新機能を搭載していますから、AFと合わせて使用すればさらに動体撮影に特化するようになります。それでいて2400万画素の高精細な画ですからね。今回のような望遠レンズを装着すればテレコンなしで1.5倍の画角も得られるのも大きなメリットです。もうAPS-Cミラーレス機もここまで来たか、と思い知らされた1台です。
桜が咲くと「今年も春が来た」と思う日本の季節感は素敵ですよね。早くも満開になった寒桜にはたくさんのメジロやヒヨドリが集まり、下にはたくさんの人だかりができていました。
橋の上から撮影した杜の都のシンボル的な河川。こんなにも水が綺麗だったとは知りませんでした。水の流れる影、川底の石など繊細に写し出しています。
こちらは温室で撮影した睡蓮の花。ドームの鉄骨の影をアクセントに使いました。花の立体感や色の濃淡など見事な描写ですね。
青い空とビルに映り込む白い雲。コントラストの高いZEISSレンズとα6300の美しい発色は、目で見る以上に世界を美しく切り出してくれます。
高解像という言葉が似合いそうな室内のカット。赤いイスに落ちる影でできた色の表現など、解像力・色彩表現ともに高いレベルで実現している機種ですね。
横に走る線を意識して構図した駅前のカット。レンガ調の外壁の細かな部分まで写し出しています。
まるでSF映画のセットのような地下鉄のトンネル。このカットはISO12800という超高感度で撮影しています。拡大すればノイズ感は分かるものの、ISO12800ですからね、一昔前のデジタル機じゃ考えられない低ノイズとディティール表現に驚きました。しかもAPS-C2400万画素という小さな画素ピッチでこれを実現しているわけですから、ものすごい高感度性能です。
『SONY α6300』はSONYの最新技術が惜しみなく詰め込まれた機種でした。α6000も驚くほどのAF性能でしたが、α6300はさらにその上を行くスピードと撮影性能を兼ね備えています。さらに全画素読み出しの4K動画(24p記録時)が本体内で記録でき、映像制作に特化した機能がたくさん追加されましたから、静止画・動画ともにプロも納得できる本格派なカメラに仕上がっているのが特徴です。撮影で使用してみて感じたのは、「至れり尽くせり」と思える充実した機能と使いやすさ。AFをオートモードで使用するのもいいですが、シビアなピント合わせの時に拡大表示した状態でもAFが使用できる機能や、十字キーでダイレクトにAFポイントを変えられるところなど「実際の撮影状況を考えて、このカメラを作っているな」という印象を受けました。はっきり言って文句の付け所が難しい機種です。メインの1台として、フルサイズ機のサブとして、α6300は誰しもが満足のいくカメラだと感じました。
Photo by MAP CAMERA Staff