もし、どのメーカーのレンズが一番性能が良いのか比べたい場合、一つの指標として超広角ズームレンズで比べてみてもいいかもしれません。なぜなら、超広角ズームレンズは複雑な光学設計なゆえに作るのが難しく、減光や歪み、周辺に写り込む像の流れなど、ネガティブな要素が常に付きまとうからです。今回Kasyapaでご紹介するのはそんな超広角ズームの最新レンズ『FE 12-24mm F4 G』、ソニー製初となるフルサイズEマウント超広角ズームレンズです。
フルサイズ対応で広角端12mmスタートのズームレンズは数が少なく、圧倒的な広さを写真に表現できるのが本レンズの一番の魅力。しかもレンズを持ってみると意外と小ぶりで軽量なことにも驚きです。同スペックの一眼レフ用他メーカー製レンズが1,150gの重量級レンズに対し、『FE 12-24mm F4 G』は約半分の565gしかありません。小型軽量なEマウント機の機動性をスポイルすることなく超広角域の写真が撮影出来る、ソニーだからこそできたズームレンズと言えます。
白い紫陽花を広角端でローアングルから撮影しました。写真の中央にはギラギラとした太陽が真逆光で入るなかなか厳しい条件です。写真右上側にスッと細い円形のゴーストが見られますが、この日差しを考えれば非常に優秀な逆光耐性と言えるでしょう。しかも被写体は白い花ですからね、他のレンズならもっと派手なフレアやゴーストが発生すると思いますが、本レンズは画が崩壊することなく光源越しでもディテールが保たれているのには驚きです。
海の近くで錆び付いたフェンスと門。先日のKasyapaで紹介したフィッシュアイと焦点距離的には被っていますが、超広角との大きな違いは“真っ直ぐな線を、そのまま表現できるか否か”ということ。『FE 12-24mm F4 G』は歪みが抑えられた描写だけでなく、画の端までしっかりと解像しています。
複数の巨大な重機が作業する工事現場。機械や乗り物好きの私にとっては今回の撮影で一番興奮した風景でした。F8とはいえ望遠端である24mmでも端まで解像力が高いのには驚きです。多くの超広角レンズは望遠端の描写が甘かったりしますが本レンズは気持ちの良い解像感を得ることができます。
さらに『FE 12-24mm F4 G』で言えば、その圧倒的な広さに高い解像感が加わった描写が特徴で、最新の光学系には非球面レンズを4枚、EDガラスを3枚、スーパーEDガラスを1枚使用し、諸収差を良好に補正しています。
木陰のベンチで小休憩中、木々を見上げ撮影したカット。緑が光に照らされていて美しい一枚です。開放絞りと少しキーを上げて撮ったのですが、解像力とトーン表現が素晴らしいです。
はるか彼方まで続くタイルの道を隅々までクリア捉えた素晴らしい描写です。12mmの画角も相まって、空と道の広大な姿を写し出しました。
解像力が高い分、硬質な被写体との相性も良いレンズです。この画角を生かし、建築撮影などでも活躍してくれることでしょう。
印象的な吹抜け天井になっている建物の内部から見上げてのカット。細かい鉄骨を鮮明に写す描写に圧巻です。このような細い網目状に見える被写体は色収差が目立ったりするものなのですが、『FE 12-24mm F4 G』は相当優秀ですね。ズームレンズとは思えないキレの良さです。
初めは絞り開放でボケを生かした近接撮影にしようかと思ったのですが、あえてF11まで絞りこみ、密集して咲くラベンダーの迫力を表現しています。最短撮影距離は28cm。被写体に寄ることで強いパースがかかり、花が放射状に写りました。
水面に広がる波紋にピントを合わせて撮影した一枚。やはり超広角域はズームが使いやすいですね、広く写るがゆえに写り込んでしまう余計な要素をズーミングでコントロールすることできます。
今回の撮影で本レンズの素晴らしさはもちろんですが、「FEレンズシステムも遂にここまで来たか」と思いました。カメラ業界に衝撃を与えた初代α7の登場の際、失礼ながら「カメラは凄いが使えるレンズが無い」と感じたのを覚えています。ZEISSブランドも含め単焦点レンズのラインアップは早々に充実しても、従来の一眼レフ機のようにズームレンズを駆使して写真を撮るにはまだまだと思っていたのですが、発売予定のGMレンズも含め、急速にズームレンズのシステムが構築されたと感じます。
『FE 12-24mm F4 G』の登場により、いよいよα9・α7シリーズに撮れない世界はなくなってきました。今後もどのような新しいレンズで我々を驚かせてくれるのか非常に楽しみです。
Photo by MAP CAMERA Staff