CanonRF85mm F1.2L USM
キヤノンがフルサイズミラーレス機に参入し、新マウントの特徴として選んだのがRF用Lレンズという強力な武器。銘玉24-105mmを継承したズームレンズと弩級のF2通し28-70mmズーム、そして50mm F1.2という誰しもが憧れるラインアップを初期から登場させ、フルサイズミラーレスに対するキヤノンの本気を世界に知らしめました。今回はそこに追い打ちをかけるべく新たなLレンズが追加。キヤノン使いのみならず他メーカーのユーザーも嫉妬する“85mm F1.2”という絶対的な性能を持つ中望遠レンズ『Canon RF85mm F1.2L USM』のご紹介です。
AFで使用できる“85mm F1.2”の大口径レンズはキヤノンだからこそ体感できる唯一のもの。レンズは大柄でズシリと重く、いかにも写りそうな佇まいです。はたしてミラーレス機に付けて大丈夫なのだろうか?と少し不安になる重量級レンズですが、そこはさすがの『EOS R』。一切ガタつかない高い剛性感によりボディとレンズとの一体感が感じられます。早速構えファインダーを覗くと、そこはもう85mm F1.2の世界。前後にシルクのような滑らかなボケが包み込み、その中で浮かび上がるように存在するフォーカス部。キヤノンはすごいレンズを出してきました。
切り子ガラスの花瓶に入れられたアジサイの花。キラリと光を反射する花瓶が美しかったので、そこにフォーカスを合わせ絞り開放で撮影しました。仕上がってきた写真を見て思ったのは、描写に解像力を誇張するような嫌味がなく、ナチュラルかつ立体感に優れているということ。これはいい写真が撮れる予感がします。
続いてはビルの柔らかな反射光を受けて風になびく植物の写真。芯は有りつつも全体的に柔らかな印象を与える開放描写は、さすがポートレートカメラマンに支持されてきたキヤノンの85mmという印象です。
植え込みの陰でスヤスヤと眠る猫。そろりと近づいたのですが途中で気づかれ、眠そうな目がファインダー越しの私の目と合いました。逃げるかな〜と思ったのですが、そのまま目を閉じて眠り続けます。これは猫から「仕方がないから撮らせてあげる」という暗黙の了解だと解釈し「ごめんね〜ありがとう」と言ってシャッターを切りました。おかげでいい一枚が撮れました。
渾身のRF85mm
『Canon RF85mm F1.2L USM』を使用して感じるのが、一切の妥協をせずキヤノンが本気で作ったレンズだということ。特殊硝材を惜しげも無く使用し、数値的な性能を突き詰めたのはもちろんですが、それ以上に感じたのが描写へのこだわりです。開放時の立体感と角が立たないくらいの絶妙な解像感、そしてボケの滑らかさ。ここまでの描写を出すには相当な試行錯誤やテストを繰り返した結果なのだろうと思います。まだまだプロユースのメイン機材は一眼レフの使用率が高いと思いますが、この85mmはミラーレスだからこそ実現できた描写力。使用する価値は十分にあるレンズです。
帰港する船とそれを眺める家族のシルエット。少し絞ればシャッキリとした写り味が楽しめます。白い船体の微妙なトーンも見事に写し出してくれるレンズです。
撮影時の昼食を撮った一枚。テーブルに差し込む柔らかな光がちょうどいいなと感じ、撮影する予定ではなかったのですが、運ばれてきたグリーンカレーに向けてシャッターを切りました。ピント面はシャープながら柔らかい印象を受ける『Canon RF85mm F1.2L USM』はテーブルフォトにもオススメなレンズです。
最高の選択肢
これは個人的な見解ではありますが、『Canon RF85mm F1.2L USM』はEFレンズ含め、いままで使用してきた標準〜中望遠Lレンズの中で最も描写性能が優れたレンズに感じました。ショートフランジバックによる設計と、最新の光学技術、そして絶妙な味付けにチューニングされた描写力。高性能レンズの証である赤いリングは伊達ではないと感じた1本です。スナップ中心の撮影でしたが、「これでポートレートを撮ったらどれだけ素晴らしいだろうか」と思わず考えてしまう魅力的な描写でした。価格と大きさともに存在感のあるレンズではありますが、その価値は十分にあると素直に思えるレンズです。キヤノンの本気を感じた1本でした。
Photo by MAP CAMERA Staff