期待のレンズがリリースされました。『M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8』、CP+で展示された際OLYMPUSの方からも非常に高性能のレンズとして聞いていただけに、その描写に期待しているレンズの1本でした。外観デザインはいかにも良く写りそうに思える大きな前玉と、シルバーの仕上げの美しさが目を引きます。実際、別売でリリースされているフード、キャップとも非常にクォリティが高く、物としての出来上がりまで拘りを持って作られたレンズという印象です。
それでは、その描写はどうなのでしょう。この1カットをご覧頂くだけでその描写力の高さはご覧頂けるかと思いますが、錆びた自転車の塗装面の荒れ、乾いた雰囲気と立体感も実に良く表しています。色再現も美しく、高いバランスでまとまったレンズだという事が頷ける描写です。
前ボケ、後ろボケとも実に美しい再現です。こうした柔らかいボケが描かれる事からピント面の解像力の高さが生かされているのでしょう。焦点距離とF値からすればポートレートレンズとしての活躍も期待される本レンズですが、この描写なら期待を裏切らないでしょう。光が強い状況ですが、細かいディティールや階調まで飛ばしてしまう事無くしっかりと描き分けています。
枯れた被写体を、しっかり枯らして描き出す。当たり前の様に思えますが、解像力がしっかりある事が必須の条件。時を経た被写体の、複雑な色相を見事にすくいあげてくれました。
最短に近い距離ですが、ここまで絞っても被写界深度は実に薄いものです。開放でも撮影しましたが、あまりに大きくボケすぎてこの被写体には向きませんでした。花弁の複雑な造作、その細かいラインをご覧頂ければと思います。
ブルーの塗装の滑らかなグラデーション、薄いナンバープレートの質感もしっかりと表しています。描写に破綻を見せないのは頼もしい限り。
F1.8開放での描写ながら、すっきりとして素晴しい高画質です。絞っても被写界深度が深くなるだけの印象で、どの絞り値でも意図にそって選択できる、ポートレートレンズとしても優秀な完成度でしょう。
少し薄暗くなってきても、F1.8の開放値がくれるシャッタースピードのゆとりはありがたいもの。フォーカスは素晴しく早く、最短から遠距離までストレス無く撮影に臨めます。35mm判換算で150mmと望遠ながら、このフォーカススピードはこのレンズの使い勝手を一段と高めているポイントです。
夜間、街頭に照らし出された葉の表面の質感も美しく表現してくれています。街頭の強い光でも特にゴースト等も出ず、逆光にも大変強い印象です。
スペック通り大口径の、少々大柄なレンズですがその分ホールディングは良く、質感はボディともしっかり合っています。重さもこのサイズから考えると軽量。旅行等でレンズを何本か持って、という際にも美しいボケを生かして活躍してくれる事でしょう!描写性能はなんと言っても折り紙付きですから、焦点距離とF値に魅力を感じる方にはぜひともお勧めしたいレンズです。
Photo by MAP CAMERA Staff