Art・Contemporary・Sportsといったライン分け、企業・パッケージ・プロダクトデザイン、そして製品クオリティ。2012年より始まったシグマの企業ブランディングは大成功していると感じています。他にはない尖った商品を市場へ送り出し、一昔前までサードパーティ製レンズは「純正より安い」で選ばれていたものを「性能がいい」「カッコいい」に変えた“MADE IN JAPAN”のモノづくり。そんなシグマから大本命と言えるレンズが登場しました。『SIGMA Art 24-70mm F2.8 DG OS HSM』、数あるズームレンズの中でも人気・実用性ともに頂点に君臨する『24-70mmF2.8通し』レンズです。
カメラ好きからは「ニーヨンナナジュウのニッパチ」と業界用語のような愛称で呼ばれているズームレンズですが、プロカメラマンにとって必要不可欠なレンズということもあって各メーカーが光学技術の粋を集めて作り出しているジャンルのレンズです。その土俵にシグマが送り出した『SIGMA Art 24-70mm F2.8 DG OS HSM』ですが、第一印象は「重くて太い、只者ではない雰囲気のレンズ」ということでした。今回はその大柄なレンズを『Canon EOS 5D Mark IV』へ取り付け、海の方へと撮影に向かいます。まず広角端24mmらしい広々とした表現で撮影した海岸のカット。F8まで絞っているとは言え、クリアで抜けの良い本レンズの描写がお分かりいただけると思います。そしてこの距離から波しぶきまで写し出す解像力の高さはさすがシグマ。やはり只者ではない性能だと実感しました。
灼熱の中での撮影でしたが、そこに潮風が混じるとなぜか気持ちよく感じてしまうは海の魅力かもしれません。これはそんな海岸沿いで撮影した夏を感じるスナップ。黒い砂浜と被写体のコントラストがギラギラとした強い日差しを感じます。
砂浜へ降りる階段とビーチサンダル。絞りF3.5ですがシグマレンズらしいシャープさです。
海岸沿いの歩道に置かれたビーチクルーザー(自転車)。サーファーがボードを積んで乗ってきたものでしょう。やはりこの自転車は海とサーフィンが似合います。
「←BEACH」。どのお店も海を意識していて雰囲気が素敵です。絞り開放で少し寄った写真なのですが、ズームレンズながらボケ味の綺麗なレンズです。
波打ち際でのスナップ。とても楽しそうに写真を撮っていた女性が印象的でした。F2.8らしいフォーカスした被写体を引き立てる描写です。そしてこの写真を見て周辺減光が気になった方もいるかと思います。この原因はレンズ性能のせい?いやいや、私から言わせていただければ、どのメーカーのF2.8ズームレンズもそれなりに減光します。本レンズはなぜこのように見えるのかというと、純正レンズ以外だとカメラ内の自動補正が掛からないということがあります。シグマレンズの場合、現像ソフトでプロファイルを当てれば解決することではありますが、たまに純正レンズのRAW撮りでも歪み・減光に驚くことがあります。
『SIGMA Art 24-70mm F2.8 DG OS HSM』を使用して感じたのが、AFが驚くほど速くて静かだということ。小型・軽量レンズで超高速AF・無音を両立しているものもありますが、それはフォーカスレンズの重量が軽いのでそれを動かすためのアクチュエータも違います。しかし本レンズはフルサイズ対応の大口径F2.8ズームレンズであり、フォーカスレンズの重量もそれなりのはず。それでこのAFスピードを実現させているのですから、さすが作り込みが違うなと感じました。そしてシグマらしい高解像力に加えて、ボケ味が単焦点レンズと思えてしまうほど滑らかで本当に美しいです。一日中手に持って撮影すると筋トレ効果も得られてしまいそうな重量級レンズではありますが、約4段分の手振れ補正機構を搭載していることを考えるとトータルバランスは非常に優れたF2.8通し標準ズームだと思います。
そびえ立つ絶壁と青々と茂る緑。本レンズの解像感と立体感を両立させた写りには凄みを感じます。
時とともに朽ちていくドイツの名車。F2.8開放でもピント面は驚くほどシャープですので、大口径単焦点レンズの撮り方のような被写体の印象をより強める写真にも向いています。
最短撮影距離は37cmから。写真のように70mm側で寄るとかなりクローズアップして撮影することができます。クルクルとカールしたソテツの若葉を撮影したのですが、毛のような葉の表情まで見事に捉えているのがわかります。
睡蓮鉢の中で泳ぐメダカにピントを撮影した一枚。薄いピント面ですが、小さな被写体にも正確に合わせることができました。
お寺に着いた頃、太陽は厚い雲に覆われて雨が降り出しそうな天気に変わりました。暑いとはいえまだまだ梅雨ですね。前日に降った雨が蓮の葉に溜まっています。最短撮影距離まで近づき水滴の光に露出を合わせてアンダー気味に撮影したのですが、やはり良い描写です。 まるでマクロレンズで撮影したかのような繊細な写りです。
チベット仏教圏ではおなじみのマニ車。中に経文が収められており、時計回りに1回まわすと、1回経を唱えるのと同じ功徳があると言われています。薄暗い条件での撮影だったのですが、レンズの開放F値が2.8ということもありイメージ通りに撮影できました。
アジサイが有名なお寺ということもあり、色とりどりの花が咲いていました。F5.6では隅から隅まで写り込んだアジサイを鮮明に写し出しているのがわかります。こう見ると雨の季節も悪くないものです。
『SIGMA Art 24-70mm F2.8 DG OS HSM』はシグマレンズらしい解像感の良さに加え、上質なボケ味も合わせもつズームレンズでした。F2.8通しに手ぶれ補正機構を搭載していることで少し大柄なレンズではありますが、純正レンズほどの長さを感じることはありません。とはいえ、カメラに装着した写真を見ると、やはり迫力はありますね。これも高性能な故のサイズでしょう。
フルタイムマニュアル機構を採用していますので、AF後の微調整も快適。マウント部に簡易防塵・防滴構造を採用し前玉には撥水・防汚コートを施してありますから、高性能にタフさも備わった仕様になっています。
やはりメーカーの本気度が伝わって来るレンズは使っていて気持ちが良いです。意のままに写真を撮ることができるだけなく、レンズが写真を撮る気にさせてくれる、そんな気がしました。近年のシグマレンズは素晴らしいものばかりですが、その中でも『SIGMA Art 24-70mm F2.8 DG OS HSM』はトップクラスの実力を持つ1本です。
Photo by MAP CAMERA Staff