434:『SONY FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS』
2017年07月30日
筆者自身100(80)-400mm超望遠ズームはN社、C社ともに使用したことがあるのですが、『FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS』を実際に触ってみて、「こんなに小さかったっけ??」と思ってしまうコンパクトさ。例えるのなら“少し太めの70-200mm F2.8”といった感じです。レンズ自体だけでも同クラス他社製と比べ150g軽いのですが、フラッグシップボディ&レンズのシステムで考えると、α9と本レンズの組み合わせは、なんと約1kgも軽くなります。
そんな『FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS』を実際にフィールドへ持ち出し、まずは北陸新幹線・E7を撮影したカットから。ちょうど太陽が沈み薄暗さを感じる時刻だったのですが、この光量でもさすがGMレンズと思わせる解像性能とクリアな描写です。ボディと合わせた5軸手振れ補正も強力で、望遠端400mmでも被写体をピタリと止めて撮影できるのに加えて、α9のサイレントシャッターが更にブレを軽減させてくれます。
所変わって夏の日差しが降り注ぐ公園で撮影した一枚。勢いよく噴きあげる水しぶきを望遠端400mmで撮影です。RAW撮りでレンズプロファイルを当ててなかったのですが、本レンズは1段絞りでも周辺光量と周辺解像力がかなり優秀なのがわかりますね。水の冷たさが伝わってきそうな爽やかな写真になりました。
日差しが強いためハイライトとシャドウの差がはっきりと出やすく、写真を撮るには少し難しい木漏れ日のシーンでの一枚。暑さのために少し休んでいるのか、ロードバイクを手で押すライダーにピントを合わせました。飛ばず潰れず良い階調表現です。
野鳥観察のために置かれたフィールドスコープ。残念ながらこの時は珍しい野鳥に出会えませんでした。写真では柵と鉄骨が重なる複雑な構図になったのですが、『FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS』はボケ味も美しいレンズなので背景もうるさくならず、立体感のある写真にまとまっています。
「レンズはやっぱり描写力、写りが良くて、解像力がすごくて…」など色々と言いますが、正直写りが良いだけのレンズではダメだと思っています。描写力はもちろんですが、AFスピード、操作性、機能性、大きさ、重量など、今レンズに求められるのはズバリ総合力の高さではないかなと。
その点で言うと『FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS』の完成度の高さは「さすがソニーだな」と感じました。カメラ製品に限らず小型で高性能な製品を作る世界屈指のメーカーなだけはあり、最新の光学設計だけでなく、静かに素早くAFを合わせるアクチュエータなどの駆動系やAFアルゴリズムの技術、人間工学に基づいた操作系、そしてそれらを担保しながら小型軽量化の実現。『FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS』は、日本のものづくり技術の結晶のようなレンズだなと撮影しながら思いました。写真を撮る際にカメラやレンズに不満があると、それが不安に変わって撮影に集中できないのですが、本レンズは道具として一級品です。心から信頼のできる一本と言えるでしょう。
潮風を浴びながら目の前を通るボートを広角端100mmで撮影しました。F5.6でもピント面の解像力の高さと手前のなだらかなボケ味がわかる写真です。
砂浜に残された足跡。いいですね、こういった余韻を写真に収めるのが好きです。
波打ち際を素足で歩く女性をスナップ。打ち寄せる波の音が聞こえてきそうな一枚です。水しぶきの写真と同様にハイライトの面に色収差が出ず、すっきりと透明感のある写りです。
青々と茂る植物のコントラストを意識して撮影した一枚。ソニーのカメラ・レンズ全般に言えることですが、“黒く潰れるか潰れないかのギリギリ”を表現するのが得意だなと感じています。それはCMOSセンサーを開発しているメーカーということで性能を100%引き出すことができ、そのセンサーの特性に合わせたレンズ開発ができるからかもしれません。
遠くの空には夏の雲。手で掴めそうな立体感のある表現です。そしていつも「竜の巣だ!」という言葉が頭を過ぎります。
飼い主を待つ柴犬をスナップ。モコモコとしたお尻としっぽが可愛いです。
『FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS』の特徴の一つに近接撮影に強いというのがあります。最短撮影距離0.98m・最大撮影倍率0.35倍という高い撮影能力を持ち、近接時にはフォーカスレンズの他に別のレンズ群も動かす“フローティング機構”を採用することで、近くの被写体もシャープに写し出すことができます。
日も傾き始め、西日がキラキラと水面に反射していました。『FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS』は逆光耐性にとても強いレンズです。
他にも描写に優れた望遠ズームの代表格として70-200mm F2.8クラスのレンズがあると思います。 特性の異なる2本を保持して用途によって使い分けるのが理想的ですが、経済的にもフットワークの問題からもそれは難しいところ。400mm域をカバーしたレンズの利点とはその大きな圧縮効果にあり、200mmの画角とはまた異なった世界感が表現できます。圧縮効果を存分に利用した3次元的な画作りに加えて、このようにシルエットで捉えることでさらにストーリー性を感じさせてみるのも良いでしょう。
薄雲に隠れた太陽をα9の電子シャッター最高速である1/32000秒で撮影した一枚。まるで満月の夜に撮影したような写真になりました。手前にある観覧車のシルエットもシャープに写し出しています。
『FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS』は超望遠ズームを待ち望んでいたαユーザーの期待を裏切らない素晴らしいレンズでした。何か不満点は?と聞かれても「うーん…」と悩んでしまうほど完成度の高いレンズです。これはGMレンズ全般に言えることなのですが、他のレンズでたまに感じる“量産レンズの荒”のような雑味が一切感じられません。レンズ性能、レンズ本体の作り込み、AF性能など、すべてのクオリティが高いのです。
また、『FE 70-200mm F2.8 GM OSS』と同様にレンズが寒冷地の使用でも冷たくなりすぎないように外装素材に配慮されているのも嬉しいポイントですね。こうした細かな気遣いができるのもさすがだと思いました。
もしかすると、野鳥撮影など被写体によっては望遠400mmでは足りないという方もいることでしょう。でも『FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS』はテレコンバーター『1.4x Teleconverter SEL14TC』と『2x Teleconverter SEL20TC』にも対応していますので、フルサイズで最大800mm、APS-Cで最大1200mm相当までカバーすることができます。テレコン使用時にはF値が暗くなるので機種によってはAF動作が不安定になるかもしれませんが、今回撮影で使用したα9で言えばAF-S時にEV-3の低輝度までAFが動作しますので様々な撮影シーンに活躍してくれるはずです。
『FE 12-24mm F4 G』のレビュー時にも書きましたが、いよいよFEで撮れない世界は無くなってきましたね。あとは超望遠単焦点とFisheyeくらいではないかなと。『FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS』はα7・α9シリーズの可能性を大きく広げてくれる一本です。
Photo by MAP CAMERA Staff