使用機材:Canon EOS 5D Mark IV + SIGMA Art 70mm F2.8 DG MACRO(キヤノン用)
SIGMA Art 70mm F2.8 DG MACRO
今から12年前の2006年、シグマより『MACRO 70mm F2.8 EX DG』という1本のレンズが発売されました。35mmフルサイズで70mm、APS-H機で約90mm、APS-C機で105mmというマクロレンズとして使いやすい焦点距離で使用することができ、等倍マクロ撮影も可能。そして切れ味の鋭いシャープな描写から愛好家に「カミソリマクロ」という異名で呼ばれている銘玉です。しかし現在は惜しまれつつも生産が完了し、その“伝説”も相まって中古市場で見る機会がめっきり少なくなりました。
多くの復活を望む声を聞きながら早数年、その“伝説のカミソリマクロ”がなんとリニューアルして遂に登場します。
今回のKasyapaはArtシリーズ初の等倍マクロレンズ『Art 70mm F2.8 DG MACRO』のご紹介です。
本レンズを初めて手にした時、これほどワクワクした気持ちになれたのは久しぶりでした。先に説明をした『MACRO 70mm F2.8 EX DG』は私も使用したことがあり、その解像力に心底驚いたことがあります。まず手にしてみて思ったのは想像以上にスリムでコンパクトということ。フィルター径も49mmへ変更になり、よりスッキリと洗練されたレンズになった印象です。早速試しに撮影ということで用意したのはムーブメントが美しい腕時計。撮影距離が0.5m以内の近接になるとレンズの鏡筒がウィーンと、どんどん繰り出されていくのですが、AF音はとても静かで振動も感じません。そして等倍となる最短撮影距離でパシャリ。開放F2.8ということもあって極浅な被写界深度ですが、フォーカス部をご覧ください。金属のヘアラインが見える凄まじい解像力なのがわかります。カミソリマクロと呼ばれたレンズの復活を肌で感じた一枚です。
使用機材:Canon EOS 5D Mark IV + SIGMA Art 70mm F2.8 DG MACRO(キヤノン用)
マクロレンズと言えど、近接だけでなく中望遠レンズとして使用する方も多いはずです。画質優先に設計された本レンズは繰り出し式のフローティングフォーカスを採用しており、最短撮影距離から無限遠まで高画質を実現。このカットは一段絞ったF4で撮影したのですが、色滲みの無いシャープな写りは流石と思わせる描写力です。また、AFスピードも撮影距離0.5m以降はかなり速く、一発でフォーカスが合う事に驚きました。
使用機材:Canon EOS 5D Mark IV + SIGMA Art 70mm F2.8 DG MACRO(キヤノン用)
アジサイが綺麗な季節になってきました。個人的には淡い色合いのアジサイが好みなので、まだ色付きが浅い花を近接撮影。ピントを合わせたところはシャープに、そして前ボケ・後ボケもとても美しいです。まるでいいレンズのお手本のような描写です。
使用機材:Canon EOS 5D Mark IV + SIGMA Art 70mm F2.8 DG MACRO(キヤノン用)
ジャガーEタイプの曲線が織りなす艶やかな赤いグラデーションの表現が見事。『Art 70mm F2.8 DG MACRO』のクリアな描写はまさに写実派です。被写体の線と色をそのまま写真に写し出してくれました。
使用機材:Canon EOS 5D Mark IV + SIGMA Art 70mm F2.8 DG MACRO(キヤノン用)
絞り:F4 / シャッタースピード:1/125秒 / ISO:400使用機材:Canon EOS 5D Mark IV + SIGMA Art 70mm F2.8 DG MACRO(キヤノン用)
過去に実際使われていたレーシングエンジンの一部を撮影。ファンネルとインジェクションのつなぎ目付近にピントを合わせたのですが、少しくすんだ金属の風合いと質感描写が素晴らしいです。
絞り:F2.8 / シャッタースピード:1/400秒 / ISO:800使用機材:Canon EOS 5D Mark IV + SIGMA Art 70mm F2.8 DG MACRO(キヤノン用)
ボンドカーにもなった幻の名車「トヨタ 2000GT」。フェンダーラインの繊細な線描写は高解像力の『Art 70mm F2.8 DG MACRO』ならではと言えるでしょう。
使用機材:Canon EOS 5D Mark IV + SIGMA Art 70mm F2.8 DG MACRO(キヤノン用)
全てを兼ね備えた、新生“カミソリマクロ”。
絞り開放から抜群の切れ味を見せる『Art 70mm F2.8 DG MACRO』。載せてある写真からも分かる通り、その描写は非常にハイレベルで文句のつけようがありません。そして本レンズの注目すべき点は描写性能だけでなく、その操作性にもあります。
まずマクロレンズで重要なマニュアルフォーカスの操作性です。『Art 70mm F2.8 DG MACRO』はフォーカスリングとフォーカス駆動部の機械的連結をなくしたバイワイヤ方式を採用しており、リングの回転量を電子的にレンズ側へ伝えてレンズの繰り出しを制御しています。このような構造で一番気になるのが、指の感覚とレンズの繰り出し量のズレ。予想の回転量とフォーカスの動きが上手く合わないとMF時にストレスを感じるのですが、『Art 70mm F2.8 DG MACRO』はMFレンズのヘリコイドを回しているように親指の肉の動きにも反応してくれるほど感度が良く感動しました。これならばミリ単位のフォーカスズレもMFで調整することが可能です。
また、本レンズには光学式手ブレ補正は備わっていないのですが、絶妙なレンズの太さと操作性の良さでホールド性は抜群です。撮影を終えた後に「そういえば、手振れ補正がなかったんだ」と気付くほど。レンズ自体が軽量に作られているので手ブレ抑制効果に加えて、機動性や使いやすさも兼ね備えています。
繰り出し式も、手振れ補正の非採用も、全ては画質優先のために選択した事ですが、結果的に小型軽量など『Art 70mm F2.8 DG MACRO』の利点に回ったと感じました。マクロレンズとしての必要な要素を全て兼ね備えた1本と言えるでしょう。
使用機材:Canon EOS 5D Mark IV + SIGMA Art 70mm F2.8 DG MACRO(キヤノン用)
抜けるようにクリアな描写も本レンズの魅力の一つ。一眼レフに『Art 70mm F2.8 DG MACRO』を装着すると本当にファインダー越しの世界が明るく見えます。
使用機材:Canon EOS 5D Mark IV + SIGMA Art 70mm F2.8 DG MACRO(キヤノン用)
使用機材:Canon EOS 5D Mark IV + SIGMA Art 70mm F2.8 DG MACRO(キヤノン用)
小さな花や虫たちを注意深く観察し、その表情や変化を感じ取る。マクロレンズを手にすると普段とは違った目線になるのでとても楽しいです。
これこそ、シグマ。
『Art 70mm F2.8 DG MACRO』を使用して、私は『Art 35mm F1.4 DG HSM』を初めて触った時と同じ感覚を呼び起こされました。純正メーカーが設定できないであろう低価格でレンズを提供しつつも、その性能は絶対的。これこそ、シグマの持つ強みといいますか、見事にやってくれた感じがします。そしてそれを“カミソリマクロ”で実現させた狙いも流石です。期待を裏切らないどころか、想像以上のパッケージでまとめてきた会心の1本だと思いました。
様々なメーカーからマクロレンズはラインアップされていますが、これほどコストパフォーマンスに優れたレンズは他に知りません。“カミソリマクロ”の名を引き継ぐ『Art 70mm F2.8 DG MACRO』は、新たな伝説を作るレンズだと感じました。
Photo by MAP CAMERA Staff
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