523:『Carl Zeiss Batis 40mm F2 CF』
2019年04月29日
Carl ZeissBatis 40mm F2 CF
今回ご紹介するのは、昨年2018年の11月に発売されたカールツァイスの標準レンズ『Carl Zeiss Batis 40mm F2 CF』。メーカーの製品説明の言葉を拝借すれば、「新時代の万能レンズ」として常に高い人気を誇る本製品ですが、その高い人気の理由は一体どこにあるのでしょうか。今回、幸運にもその人気のレンズにプライベートで触れる機会に恵まれたので、旅行のおともに携帯することとしました。メーカーが、“持ち歩けるレンズは1本だけでもあなたの撮影意図を叶える”と豪語するその性能に迫りたいと思います。
東京では既に散ってしまった染井吉野もこのときの韓国ソウルでは満開、ほぼ白い被写体に加え、上空高い位置に太陽があり露出が厳しい局面。さらには後ろの高層ビルをぼかしたいが為に絞りもあまり閉じたくない。そんな悩ましいシチュエーションでも、ZEISS T*反射防止コーティングと特殊ガラスの恩恵から白トビせずに被写体をとらえることが出来ました。さすがはツァイス。といったところでしょうか。
春を彩る花をもうひとカット。市民の憩いの場である公園は様々な草花で埋め尽くされていました。ソニーセンサーならではの鮮やかな発色と高コントラストなツァイスレンズ。長く協業もしている2メーカーだけあって、その連携には高い安定感があるように思います。いろいろな被写体が同居するカットなので背後のぼかし方を悩んだ結果、解放からF8.0辺りまで何パターンか撮影しましたが、絞りの開閉で像の性格が大きく変わるレンズはやはり使っていて楽しいものです。
同系色を重ねて建造物を捉えました。こちらは江南(カンナム)にある日本人でも誰もが知る某有名企業のオフィス群です。どこか日本のオフィス街にも近いようで、それでいてじっくりと見ると形状や配置などが異なる建造物がソウルには多く、写真を撮る意欲をそそられます。ふとした瞬間に直ぐ被写体と向き合えるのも、360g強というレンジファインダーレンズにも匹敵する驚異的な軽量差の恩恵かと思います。
CFと名のつくとおり、マクロレンズさながらの最短24cmまで寄れる本レンズ。開放ではありませんが、この被写界深度の浅さがわかります。α7シリーズの高速性とこのレンズの堅牢で安定性の高さが際立つAFも大変に魅力的ですが、こうした撮影ではMFでの操作する楽しみをも味わうことが出来ます。被写体としたのは現地のフリーペーパー。手書きの様なフォントが印象的でした。外国というだけで、日常の様々なものが新鮮に見えるから不思議です。
こちらは永東大路(ヨンドン・デロ<大通り>/영동대로)という最大幅70mの幹線道路。日暮れを迎えてもなお、東京がそうであるようにソウルの夜もまた長く、深夜までその交通量は減りません。実はこのカットは今回の撮影で最も小気味よく収めた一枚です。様々な光源、動体が数多く存在する場面でしたが、想像していた仕上がりと実際の絵が非常に近く、思わず「おっ」と声が出ました。冒頭でも触れた、“持ち歩けるレンズは1本だけでもあなたの撮影意図を叶える”というメーカーの触れこみ。自分なりの解釈ではありますが、その意味を少しだけ理解できた瞬間でした。
伝統が作り上げた、新たな伝説
旅を終えて東京に戻り写真を眺めていると、撮影時の様々な記憶が事細かにフラッシュバックします。写真に残るデータは勿論のこと、撮影していた際の音・匂い・温度といった、データには記録されていない内容までもが鮮やかに再生され、あたかももう一度その場にいったような感覚に浸る。という方は少なくないのではないでしょうか。あくまで感覚値ではありますが、今回の「Batis 40mm」における撮影は、その回想が殊の外鮮明でリアルなものでした。そしてそれは持って行く機材のポテンシャルに左右されることが大きいように感じます。
αシリーズのボディとのゆるぎない親和性、軽量コンパクトな持ち運びの容易性、近接にスナップにとシチュエーションを選ばない汎用性、それでいて妥協無く高い水準でFIXされた機能性。どれをとっても文句の無い水準を誇りますが、更にファームウェアを最新にアップデートすることにより、開放絞り値での撮影範囲の拡大や、瞳AF精度向上も実現できます。こうした購入後のソフト面の機能アップが望めるもまた、「新世代」のレンズだからこその恩恵かもしません。長い伝統で培われた技術・ノウハウと、新たな試みが見事に融合した本製品。名実ともに紛うことなき「新時代の万能レンズ」の名にふさわしい傑作ではないかと思います。
Photo by MAP CAMERA Staff