先日発表された『LAOWA Argus CF 33mm F0.95 APO』という注目のレンズ。キヤノンRF・富士フイルムX・ソニーEマウント用が同時に顔をそろえ、その中から当記事ではソニーEマウント版をご紹介します。高品位な金属鏡筒、スタイリッシュなブルーのラインというラオワレンズ共通の意匠はそのままに、特別目を引くのは「Argus」という掘り込みの文字。過去にも「ZERO-D」や「BOKEH DREAMER」などそのレンズの特性が一目でわかるレンズ名が付けられた物がありましたが、それらとは一線を画す存在のようです。Argus-アルゴス、ギリシャ神話に登場する多眼の巨人。いったい、その名に秘められた魅力とは何なのか。APS-Cセンサー搭載機のフラッグシップモデル『SONY α6600』との組み合わせで、その実力を確認してきました。是非ご覧ください。
幼少期は毎日図鑑を読みこむほど恐竜が大好きでした。「こんなにも大きくて格好良い生き物が、大昔の地球を闊歩していたなんて…」とスケールの大きさにときめいていました。無論、化石も大好きでいろいろな博物館に連れて行ってもらった記憶があります。大人になった今、熱量はその時ほど苛烈ではありませんが時折その姿に思い馳せたくなる時があります。友好な関係が築けるのなら、ヴェロキラプトルの背に載せてもらって草原を駆け回ってみたいものです。
このレンズの醍醐味はやはりとろけるようなボケ味。開放F値0.95の力を感じます。球を線でつなげたオブジェクトは「フラーレン分子」というものをモデル化しているようです。中央手前の球に狙いをつけ、極薄のピント面を慎重に合わせます。形と色味、そしてボケ味によって立体的に描写されたことでなんとも近未来を感じさせる一枚に。
最近読了した文献の中で、「文字は奇跡。読み書きが出来れば時を超えることが出来る。」という旨の内容を見てとてもワクワクしたことを覚えています。昔の人が書き残したものを読むことが出来れば、その情景を想像し疑似体験できるからです。そういう意味で、写真もまた時を超えるものです。私が残した何気ないワンショットが、後世の誰かに大きな発見や感動を生むかもしれないのですから。歴史ある書物がこうやって残されている事は、人間の歴史にとって本当に大切な事なのでしょう。
足早に博物館を回ったあとは、隣接する公園を散策します。本格的な夏も間近の頃合い、降り注ぐ太陽光を遮ってくれる木々のカーテンは、カメラマンたちの休憩に欠かせない空間です。影と木もれ日が生み出すシャドウとハイライトの競演、明暗差の大きな場面もこのレンズは自然に描き出してくれます。
開放の描写も味わい深いものですが、絞っていった時のシャープさも目を見張るものがあります。夕陽に照らし出され、無機質なビル群にも情緒が宿ったように見えます。APS-C専用の『LAOWA Argus CF 33mm F0.95 APO E-Mount』は35mm換算で約50mm相当。標準レンズとして街撮りしながら印象的な一枚をスナップ的に狙うのにも向いています。
格好良い機材で、格好良い被写体を。気分を乗せてくれるレンズは良いレンズです。好感触なフォーカスリングをじっくりと回し、フォーミュラカーの突先へピントを刺すイメージ。サーキットを走行している時は、この部分が風を切ってダウンフォースを生み出し、コーナリングを助けて音速の世界を見せてくれるのでしょう。
Blue Giant
コンパクトな『SONY α6600』に装着するととても良いルックス。スッと取り出して、シャッターを切ったらスムーズに仕舞う事が出来る。非常に取り回しは軽快ですが、出てくる写真には感心させられます。APS-Cというセンサーサイズから、ボケが物足りないと思われているユーザーの方にはまさに吉報でしょう。なめらかで豊富なボケ味が被写体を引き立て、フルサイズに匹敵する成果を授けてくれます。またフォーカスブリージングが抑えられていること、絞りリングがデクリック機構になっている事からもαシリーズでの動画撮影においても大活躍してくれる一本です。標準単焦点の新たな選択肢、ぜひお試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff