

2025年5月15日発売のシグマ渾身の超望遠ズーム『SIGMA Sports 300-600mm F4 DG OS』。300mmから600mmまで開放F値F4通しという驚異的なスペックを備え、単焦点レンズ級の明るさと描写力を両立したフラッグシップレンズです。ズームの機動力と利便性を備えながら望遠端の600mmまで超望遠単焦点レンズの高い光学性能に匹敵する画期的な超望遠ズームレンズ 。まさに500mm F4や600mm F4クラスの“超望遠単焦点レンズ”2本分のパワーを一本に凝縮したような存在でしょう。高性能リニアモーターHLA駆動による高速AFや、焦点距離600mmで5.5段分の効果を発揮する手ブレ補正機構(OS2) も搭載し、一瞬のシャッターチャンスも逃しません。ソニーEマウント用の本レンズを『SONY α1II (ILCE-1M2)』に装着し、モータースポーツから野鳥撮影まで幅広いシーンでその実力を試してみました。それでは各シーンで撮影した実写結果をぜひご覧ください。
昼間のサッカーの試合をスタンドから激しい攻防を狙ってシャッターを切りました。300mmから600mmへのズームレンジは、ピッチ全体をカバーするのに理想的。近くで展開されるプレーは300~400mm域で余裕を持ってフレーミングし、ハーフコート向こうの攻防は600mmで引き寄せる。本レンズ1本でプレーの状況に応じた構図の取り直しが瞬時に可能でした。

遠距離の被写体ですが、『α1II』の高速連写と本レンズのAF追随性能により、選手やボールの行方までピントを合わせ続けています。開放F値4の明るさのおかげでシャッタースピードもしっかり稼げており、飛び散る芝生や選手の筋肉のハリまでも鮮明に描写します。瞬間を逃さないための信頼性という点でも、プロユースに応えた一本だと感じます。

サーキット場にて、猛スピードで駆け抜けるGTカーを撮影しました。流し撮りをしたかったため、絞り込んで低速シャッターにしています。手ブレ補正モード2に設定して撮影すると流し撮り専用のアルゴリズム、インテリジェントOSにより手ブレ補正が有効に働き、流し撮りの効果を損なうことなく、車体をシャープに写すことができました。AFも速く正確で、連写中もフレーム内に捉え続けてくれました。今回は使用しませんでしたが、レンズに装着したままダイヤル操作で効果の調整ができるドロップイン式のPLフィルターと可変NDフィルターも登場しますので撮影の幅がますます広がります。

カーブを曲がるGTカーに合わせて振り抜いた一枚。車体の細部までブレずに写り、背景とホイールはしっかり流れてスピード感満点の仕上がりとなりました。流し撮りではレンズの重さが仇になるかと思いきや、適度な慣性のおかげかブレも少なく安定して構図を保てました。5.5段分の補正ができる手ブレ補正と相まって、想像以上に歩留まり良く高速被写体を仕留められます。

野鳥撮影でも本レンズは威力を発揮しました。水辺に現れるカワセミを狙ってみます。結果は期待以上で、小魚を捕らえたカワセミの羽毛のディテールを克明に解像しました。F4ならではの分離能力で小さな鳥が浮き上がって見えます。『α1II』の被写体検出AF(鳥瞳AF)も良好に働き、カワセミの眼にピントが合ったのには感動しました。

続いて先ほどの写真の同位置から『SONY α1II』のクロップ機能を使用して撮影を試みます。有効約5010万画素の『SONY α1II』では、クロップしても約2100万画素を保持するため咄嗟の時にも躊躇わず使用できます。クロップした時の望遠端は900mm相当。望遠レンズの醍醐味である「距離の圧縮効果」も相まって、背景の水面が反射が玉ボケとなりカワセミを引き立てます。画質面でも開放ながら非常にシャープで、後翅の瑠璃色のグラデーションもしっかり描写されています。

最短撮影距離は広角端で280cmと決してマクロ的な近さではありませんが、花のようにある程度大きさのある被写体であれば十分寄れる距離です。何より「大きな機材だから…」と見過ごしてしまいがちな足元の小さな被写体にも、このレンズを装着していると思わずレンズを向けたくなってしまいます。

ズームの中間域付近の490mmで望遠マクロ的描写で花をクローズアップしました。背景は大きくぼけて淡い色彩が溶け合い、被写体の花が浮かび上がります。絞りF4.0で撮影していますが、ピントの合った花弁や雄しべは驚くほどシャープに描写されています。繊細な質感や花の上で休むテントウムシでさえも解像しており、解像力とボケ味を両立する本レンズの実力がよく表れております。

SIGMAらしいシャープさは随一。2倍ズームのレンズとは思えません。手ブレ補正最大5.5段分の防振性能の高さもあって手持ち撮影も十分に可能です。

近くで見ると大きな機体ですが、それらも運航は人の力によって支えられています。圧縮効果も相まってグランドハンドリングスタッフの姿が大きく感じられます。普段は飛行機にフォーカスが行きがちですが、これだけの描写、望遠だと同じ撮影場所でも様々なところに視点が向きます。

着陸する航空機をファインダーいっぱいに捉えました。雨が降りしきる中、ジェットエンジンの逆噴射によって水しぶきを巻き上げながらランディングする姿は迫力いっぱいです。防塵防滴仕様のSportsラインらしく、突然の悪天候でも気にせず撮影を続行できる安心感があります。

15km以上離れた富士山の山肌もハッキリと見てとれます。ギザギザの模様は登山道に降り積もった雪が描いたもの。沸き立つ雲に見え隠れしながら霊峰らしい佇まいがレンズを通してクリアに感じられました。

工場のプラントを絞って長秒露光で撮影。点光源は13枚羽根絞りによって放射状の光芒となり、非常にシャープな画像ながらもどこかドラマチックな印象を受けます。三脚座の回転機構はスムーズで、縦位置構図への変更もストレスなく行なえました。

工場地帯を対岸から狙い、煌々と輝くプラントの一部を切り取ります。三脚に据えてライブビューで細かく構図を詰め、絞り込んで撮影しました。遠方の被写体にもかかわらず、無数の配管や鉄骨の質感まで克明に描写されており、その解像力の高さに改めて舌を巻きました。光学性能を追求する「Sports」ラインの名に違わぬパフォーマンスです。

湾岸地帯を海を隔てて狙いました。大気の揺らぎによるフレアやゴーストも見られず、コントラストも良好です。様々な形の構造物のディティールや光源の光芒に思わず見惚れます。
ズームレンズの機動力と利便性を備えた画期的な600mm
300-600mmという超望遠域をF4の明るさでカバーする本レンズは、GTカーの疾走感、選手の躍動、飛行機や野鳥の細部、遠く離れた工場夜景のきらめき、そして何気ない花の表情まで―、一切の妥協なく描き切る描写力と、ズームならではの融通の利くフレーミングで「あらゆる遠景を自分の手中に収める」ことが可能です。総重量約4kgと決して軽くはありませんが、これは単焦点超望遠レンズ2本以上の性能を考えればむしろ納得の数値でしょう。実際に使ってみると、マグネシウム合金やカーボン素材の採用による堅牢性と軽量化、重心バランスの工夫もあり、プロ向け超望遠レンズとしては扱いやすい印象を受けました。必要に応じて一脚や三脚を使えば現場での機動力は十分ですし、防振性能の高さもあって手持ち撮影も短時間なら可能です。加えて、防塵防滴や多数のカスタムスイッチ類の充実も含め、まさにシグマSportsラインの本領とも言える完成度でした。実際にこのレンズ一本で駆け回ってみて、「これさえあれば撮れないものは無いのではないか」と感じる場面が何度もありました。単焦点超望遠レンズ2本以上を持ち歩くことを思えば荷物は大幅に削減でき、レンズ交換のタイムロスも皆無です。本格的な超望遠撮影をより自由に、よりアクティブに楽しみたいユーザーにとって、待ち望んだ究極の一本と言えるでしょう。プロフェッショナルはもちろん、本格志向のフォトグラファーにもぜひ手に取って試してみてほしい、唯一無二の超望遠ズームです。
Photo by MAP CAMERA Staff