

今回ご紹介するのは『 Canon RF400mm F2.8 L IS USM 』です。各社が凌ぎを削る通称ヨンニッパの世界に、キヤノンが2021年に満を持して送り出した1本。「EF400mm F2.8L IS III USM」から引き継いだ13群17枚のレンズ構成、蛍石レンズを2枚・スーパーUDレンズを1枚採用しながらも約2,890gという驚きの軽さを実現しました。1991年にキヤノンから初めて発売されたヨンニッパ・「EF400mm F2.8L USM」が6,450gだったことを考えると、メーカーの30年以上のたゆまぬ努力には脱帽せざるを得ません。上のカットは国歌斉唱の一コマ。一列に並んだラガーマンの背中と立ち上がった観客の方々を収めました。社会人になり歌う機会は殆どありませんが、伴奏が流れると自然と口を突いて出るその歌詞を会場全体で響かせる度、ふと込み上げるものがあります。この試合の撮影自体は随分前に行っていましたが、本レンズのフォーカス性能と描写力をお伝えするには欠かせないと感じ紹介させていただく運びとなりました。
撮影日のドラマチックな光の差し込み方たるや。報道写真としてはボツですが、若干の調整でここまでハイコントラストに。作例撮影には打って付けでしたが、その分射抜くような日差しに意識が朦朧とすることもありました。こまめにウォーターブレイクを取りながら全神経をファインダーに。緊張感を保ちながら親指と人差し指を適度にリラックスさせた状態で撮影していきます。オフェンス側がディフェンスラインを突破した瞬間を連写で捉えた4カット、一瞬の出来事をこれだけ克明に記録することができる現代の技術に乾杯。どのくらい被写体にオートフォーカスを食いつかせるかを調整する「被写体追従特性」、被写体がどれだけ速く動くかで数値を調節する「速度変化に対する追加性」。設定項目「サーボAF特性」から競技や被写体ごとにアジャストしていただくことをお勧めします。



冒頭のカットと同様に、撮影には『Canon EXTENDER RF2x』を併用しました。

空中に蹴り上げられたボールを大男が大男に担ぎ上げられキャッチ。このカットで着目していただきたいのは、よく見るとボールを取りこぼしているところではなく背景のボケ味です。水彩画というよりは油絵のような重厚感のあるボケ味が、被写体を浮き立たせるだけでなく視線をそこへ見事に誘導する役目を果たしています。スポーツ撮影をしていて思うのは客席や鉄製のパイプに反射する日差しの描写がことのほか難しいということ。不自然に滲んだり悪目立ちするケースがある中で、個人的にはこのレンズの描き方は100点だと感じます。


ここからは『Canon EOS R6 Mark III 』との組み合わせで撮影した作例をご覧いただきます。春の足音に胸躍らせてレンズの向けたのは、身近な環境で力強く生きる野鳥たちです。その小さな身体の何処にそんなエネルギーがあるのかと不思議になることがあるくらい、筆者の乏しい想像力を簡単に越えていく彼らの生活を覗かせてもらいました。上のカットはつがいで休むカルガモを驚かせないよう陰からそっと撮影した1枚。撮影距離が近いということもありますが、その描写力と質感描写は流石の一言。流れのほとんどない小さな池での1コマですが、警戒心を解いたリラックスした様子と淀む流れの様子をお伝えできているのではないでしょうか。
ラグビー撮影で感じたボケ味の美しさを野鳥撮影でも楽しむことに。前ボケも後ボケも、相当意地の悪い重ね方ですがそつなく描く描写力、そして決して十分とは言えない光の回り方を精緻に写し取る表現力。解像力は言わずもがなですがどれを取っても一線級です。
「キジバト」の群れの1羽に迷うことなく正確にフォーカシング。連写で捉えたうちの1コマでしたが迷いなく追従することができておりました。ターゲットを見つける観察力と忍耐力さえあれば、技術はもう必要ないのかもしれないと本気で感じてしまう完成度です。これから望遠レンズの世界、野鳥撮影の世界に飛び込む貴方へ。どれだけ夢中になるかわからない?いつ訪れるかわからない決定的瞬間の為に、最高の1本を最初の1本に選ぶことは決して間違いではありません。勿論既に嗜まれている方々にとっても、作品のクオリティをさらに引き上げるこれ以上ない相棒になることでしょう。


夕暮れ時、金色に輝く川面を「オオバン」の群れが横切っていきます。絞っているということもありますが、一切の破綻も嫌な滲みもなくその美しい光芒を遺憾なく楽しむことができました。一方で光量が少なくパッとしない印象になりがちな下のような場面でも、僅かな色合いの違いを丁寧に描き分けることが可能です。巧みに光をコントロールする繊細さと諧調性能の豊かさが高いレベルで共存することによって、はじめて成立する風景写真だと感じます。




Momentum
キヤノンが誇る最新型『ヨンニッパ』。世界中のスタジアムで、野生動物撮影の現場で、この白い大砲がなぜ圧倒的な支配率を誇るのか。その理由を知りたくて私なりに駆け抜けた結果が以上の通りです。人差し指と寸分のラグなく合焦する高速のオートフォーカス。決定的瞬間を絵画のように昇華する描写力。高い携帯性とエクステンダー併用時の操作性、あらゆるシチュエーションに難なく対応する信頼性。トップオブトップとはいかなるものなのか。EOSを愛する全ての人に、これからEOSと出会う全ての人に、自身を持ってオススメできる逸品となっております。
Photo by MAP CAMERA Staff












