2012年の秋に開催されたフォトキナで発表され、話題となったオートフォーカスレンズがありました。
それが「Touit(オウムのラテン語名)」。
「広角」「標準」「マクロ」3種類が展示されましたが、満を持して2つのレンズが2013年6月1日に発売開始。
本家のカールツァイスがマウントアダプターを使わずに、オートフォーカスで撮影できる!と大きな話題となったレンズでした。
あれから7年。前回掲載したKasyapaでは当時の最新機種「X-E1」でのPhoto Preview。
ロングセラーである当レンズは今でも生産しておりますが、ボディは高画素化やボディ内手振れ補正機能など大きな進化を遂げています。
今回は話題の最新モデル「X-S10」に装着し、改めて当レンズの魅力に迫ります。
こちらのミニクーパーの写真は、「ブリティッシュレーシンググリーン」という落ち着いたカラーリングを表現するため、フィルムシミュレーションはクラシッククロームで撮影。
橋の上から撮影した紅葉の写真はベルビアを使用。長年フジフイルムの機材を愛用してきた筆者は、この2枚を撮影しただけでX-S10の「大人な発色」に驚きが隠せませんでした。
奥行きのある色再現は、カールツァイスの洗練された描写性能に磨きをかける魔法のよう。
群馬県の山中で撮影しましたが、早朝は氷点下2℃。東京の感覚でウィンドブレーカー1枚で凍えながらシャッターを切りましたが、その寒ささえ忘れてしまうほど心が高まる組み合わせであることに気が付きます。
群馬県から長野県に入ると、太陽が出てきたこともあり寒さも和らぎました。
普段は「クラシッククローム」しか使わない筆者ですが、X-S10とTouitの落ち着いた色再現に親しみをおぼえ「ベルビア」に変更。
静寂の別荘地には美しくグラデーションになった紅葉、きらきらと輝くモミジに向けてシャッターを切りました。
カールツァイスレンズを所有すると必ず撮影したくなるのは「水面」と「ショーウィンドウ」。透明感と引き締まった質感を表現するには手放せないレンズです。
絞り込みスローシャッターで水の流れる光景を撮影しました。湧き水が沸々と湧いてくる光景はとても神秘的です。
ぽかぽかの日差しに、落ち葉の絨毯。別荘地の中庭に寝転んでしまいたいと思える光景です。
夏までは比較的湿度が高く、毎年キノコが生えている場所。四季折々の風景がとても魅力的な場所です。
16時を過ぎると日も傾き、シーンとした冷たい空気に包まれます。
今にも雪が降りだしそうな曇り空と店内の白熱電球の灯りに照らされた白いコーヒーカップ。
屋外の寒々しい空気感と、店内の暖かそうな雰囲気を上手に演出しています。
身体も冷えてきたところで東京都内に移動。とても暖かく感じます。
クラシックネガに変更すると、重厚な雰囲気になるのでエレガントな街並みにも積極的に使いたくなります。
不思議なものです。先程の氷点下に近い時のショーウィンドウと東京(13℃)のショーウィンドウ。
伝わってくる暖かさも違うのにお気づき頂けましたでしょうか。
そして最後はイタリアの跳ね馬ことフェラーリ。プロビアやベルビアで撮影したいところですが、この車は1976年~1981年まで生産されたクラシックカー。
この車の歩んできた歴史を尊重し、クラシックネガでその歴史を表現しようと試しみた。しっとりと艶やかなボディは40年が経過している車とは思える美しさでした。
その瞬間を鮮明に
いかがでしたでしょうか。筆者は美しいボケ味と温かみのある描写に定評のある「フジノン XF 35mm F1.4 R」も所有しております。
ほぼ同じ画角のレンズが2本も必要か?と問われれば「この2本の場合は特別!」と答えます。
標準域に近い画角でも、その表現力の違いは撮った画を見比べれば一目瞭然。その表現したい被写体や撮影者の気分に応じてぜひ使い分けていただきたい逸品です。
Photo by MAP CAMERA Staff