

今回ご紹介するのは『 Nikon NIKKOR Z 400mm F2.8 TC VR S 』。2022年に発売された、泣く子も黙るニコンZマウント版ヨンニッパです。重さは約2950g、前身の「AF-S NIKKOR 400mm F2.8E FL ED VR」からおよそ25%の軽量化に成功した望遠レンズユーザー憧れの的。ニコンが誇る反射防止効果を持った「メソアモルファスコート」と「アルネオコート」の相乗効果によって厳しい逆光にも耐えうるだけでなく、ニコン独自のAF駆動用モーター「VCM(ボイスコイルモーター)」とガイド機能を組み合わせた「シルキースウィフトVCM」を採用したことで従来より高速・高精度・静粛なAF制御を実現しているとのこと。難しい説明はさておき、「Nikon Z8」との組み合わせで撮影した写真をご覧ください。寒さ厳しい道東で出会った生命の輝き、そして紅葉が散りゆく東京で躍動するラガーマン。これから本格的に撮影シーズンを迎える魅力的な被写体を写してまいりました。
先ずは北の大地・北海道で撮影したカットから。社会人になってから毎年のように訪れる冬の北海道ですが、野生動物に目のない筆者が訪れるのは常に道東。未だ函館や小樽といった観光名所には訪れたことがありません。海を翔けるオオワシは国の天然記念物にも指定される大型の猛禽類。羅臼を訪れると数の多さにそのありがたみを忘れてしまいがちですが、その総個体数は約5,000羽と大変貴重な存在です。獲物をしっかりとホールドして眼前を横切るその姿は、雄大な自然とそこで生きる生物の力強さを感じさせます。手前を舞い散る雪と美しい羽根、鮮やかな嘴と爪にグッときた1枚です。

羽根を広げると2mを優に超えるオオワシのファイトシーン。爪が食い込んでいるように見えますが、豊かな羽毛がしっかりと身体を守り盾の役割を果たしていました。高い解像力は生物の生態観察においても非常に有用であることがわかります。

逆光下でも被写体との距離が離れている場合でもフリンジや解像力


このレンズの大きな特徴の一つである内蔵テレコンバーター。雪や水飛沫を浴びることもある厳しい環境でテレコンバーターの取り外しを行う手間が省けるというのは想像以上に助かるものです。ワンタッチで簡単に切り替えることができる上に、誤操作を防ぐためのロック機能まで。使い手のニッチなニーズを汲み取るニコンのモノづくりへのこだわりが垣間見えます。解像力の低下もAF機能についての懸念もなく、カメラ内のクロップ機能を併用すれば撮影の幅をさらに広げることができるでしょう。

この日は快晴の日の出とはなりませんでしたが、雲間からのぞく日差しが海面の一部を照らす神々しい光景に出会うことができました。

かつて北海道で生活を送っていた先住民族・アイヌは動物を神として崇め、「カムイ」として信仰の対象としていました。この海にも「レプンカムイ(沖の神)」と呼ばれていたシャチが生息し、船上からその姿を観察することができます。船の下を通り過ぎる直前の至近距離での1枚。全貌は映っていませんが肌を流れ落ちる水と海面の泡の描写に驚かされたカットです。

ヨンニッパといえばスポーツカメラマン、テレビ中継などで大きなレンズがずらりと並ぶ様子を目にする機会もあるのではないでしょうか。正々堂々とぶつかり合い、ノーサイドの笛が鳴れば敵味方関係なく互いを称えあう姿が特徴的なラグビーは、高校生から国際試合までどのカテゴリーを撮影しても同じように感動してしまう魅力に溢れたスポーツ。グラウンドに立つプロカメラマン顔負けのセッティングで撮影に臨みました。
撮影する時はシャッタースピードを1/2500秒以上の速さに設定することで手ブレを防止しています。露出は全てマニュアル、オートフォーカスは半押しAFをオフに、三脚座は水平を維持する為に緩めておくこと。競技のルールを把握しておくことも勿論大切ですが、いくつかのポイントさえ押さえてしまえば機材の性能で十分にカバーすることが可能で、ストレスを感じることなく試合のスピードについていくことができました。

アスリートが躍動する一瞬を確実にモノにするために、このレンズを選ばない理由はありません。攻守が激しく入れ替わり、選手がハイスピードで行き交うなかでも、オートフォーカスは迅速にそして確実に事実だけを捉えていきます。

このカットはスターティングメンバーとリザーブメンバー(ベンチスタートの選手)がウォーミングアップの最後に全力でぶつかる瞬間を捉えたものです。客席からピットが近いグラウンドであれば、選手の息遣いや身体がぶつかり合う鈍い音までしっかりと聞こえ、緊張感やその試合に込められたそれぞれの思いまでもがしっかりと伝わってきます。浮き出るような立体感、そしてナイターゲームでも十分に光量を確保することができる開放F値2.8。焦点距離だけを見ればズームレンズで十分にカバーできる範囲ですが、こうしたところにプロが選ぶ理由、選ばなくてはならない理由があります。

防具も付けずユニフォーム一枚で全力でぶつかりあうラグビーには常にリスクが伴います。流血は日常茶飯事、脳震盪や骨折、あらゆる危険と隣り合わせになりながら勝利を目指す選手たち。規律や結束が何よりも重んじられ、チームメイトを家族のように慕い大切にする競技にあって、時々ある種の覚悟を決めたような眼差しでプレーをする選手がいます。鳥肌が立つときもあれば、涙が溢れそうになる時もある。そんな感情を揺さぶられる瞬間がスポーツ撮影の醍醐味だと感じます。
速度と精度にばかり注目しがちな望遠単焦点レンズでありながら、諧調の豊かさも魅力的な本レンズはモノクロ撮影をも十全に楽しむことが可能です。刹那にクオリティを求めることができる。Zマウントが生まれたことで写真は新たな次元に進んだのだとあらためて強く実感いたしました。



It made your day.
このレンズを持ち出せば貴方の1日はきっと良い日になる、そう自信を持ってお勧めすることのできる1本。旅先での絶景も、エキサイティングな決定的瞬間も、煎じ詰めれば日常のどんな瞬間だって一度きりのかけがえのない景色の連続です。それらを逃すことなく鮮やかに美しく表現するために、そう考えれば迷う必要など無いのかもしれません。日頃から野生動物やスポーツの撮影に勤しむ方々には勿論、これから新たにチャレンジしようと考えている方々にも是非一度ご検討いただきたい逸品となっております。
Photo by MAP CAMERA Staff







