942:Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~
2024年07月01日
FUJIFILMMapCamera 30th Anniv. EditionVoigtlanderX Series 5th GenerationX-T5
カメラ専門店マップカメラは今年で30周年を迎えます。この大きな節目を迎えるにあたり、オリジナルの記念モデルとして限定300本のXマウント用レンズ『Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~』が誕生しました。本レンズは株式会社コシナ協力のもと、既製品である『Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical X-mount』の外装、レンズコーティングに手を加えることで今までにない特別なレンズとなっています。今回Kasyapaは特別版としてレンズの企画段階から関わった筆者が写真だけでなく、他では聞けない裏話も交えてご紹介できればと思います。
まず描写に大きく影響を与えるレンズコーティングを変更しました。通常マルチコーティングが施されている製品ですが、30thモデルではシングルコーティングを採用。この事により階調豊かなコントラスト表現と、逆光時のフレアを意図的に出す写真表現が可能になっています。もともと高コントラストで先鋭な写りをする『NOKTON 23mm F1.2 Aspherical X-mount』ですが、あえてコーティングを変更することでオールドレンズのような表現もできる別のレンズになっています。開放では最新の光学設計らしく細い線は描きつつ、若干フレアが回り込む角の取れた描写になり、F2.8以上に絞ると途端に解像感が上がります。レンズを操る楽しさをより味わえる、そんなレンズを目指しました。
使用機材:FUJIFILM X-T5 + Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~
使用機材:FUJIFILM X-T5 + Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~
使用機材:FUJIFILM X-T5 + Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~
今回の撮影では4020万画素の第5世代機『X-T5』と、熱狂的なファンの多い2610万画素の第4世代機『X-Pro3』の2台で撮影を行いました。昨年秋にシングルコーティングを施したテストレンズが完成し、外装も含めた製品版プロトタイプが完成したのが今年の春になってからのことです。これからお見せする4枚の写真は5月初旬にX-Pro3で撮影をした蔵王でのカット。関東では汗ばむ陽気もある時期ですが、蔵王では7mを超える雪の壁と凍結する湖面など季節を逆戻りしたような雄大な景色が楽しめました。
本レンズを使用して感じたのはフィルムシミュレーションとの相性がとてもよく、特にクラシックネガやACROSなどフィルムの雰囲気が強い写真表現ではXマウントレンズの中でも最上級の組み合わせだと感じました。絞り込めば風景写真で求められる解像力を発揮しながら描写が硬くなりすぎない本レンズは、最新レンズとオールドレンズ両者の良い個性を併せ持つ最高のバランスにまとまったと感じています。
使用機材:FUJIFILM X-Pro3 + Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~
使用機材:FUJIFILM X-Pro3 + Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~
使用機材:FUJIFILM X-Pro3 + Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~
使用機材:FUJIFILM X-Pro3 + Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~
誰しもが特別と感じられる“ちりめん加工”が施されたレンズフードは本レンズ専用のものを。また、通常では縦ローレットで刻まれる絞りリングとピントリングは、あやめに切られた“ダイヤモンドパターン”に。そして通常アルマイト加工で着色される外装は“マットブラックペイント”が施されています。
実は企画段階で鏡筒素材に真鍮を使うアイディアもあったのですが、レンズ重量が約1.5倍ほど重くなってしまうことで断念。そのほか、外装形状そのものを変える事や、光学ガラスを全てSCHOTT社製に変える事も考えましたが、300本限定で考えるとコストと価格が現実離れしてしまいます。そこでレンズに特別で所有欲を満たしてくれるような事ができないかと思いついたのが“ダイヤモンドパターン”でした。イメージとして最初に頭に浮かんだのは『Leica Mモノクローム(Typ246) Stealth Edition』に付けられている特別仕様のズミクロン35mm。フォクトレンダーではすでに『HELIAR classic 50mm F1.5 VM』でダイヤモンドパターンが採用されていた事もあり、見た目の印象も大きく変わるこの加工方法を採用しました。またその質感をよりリッチに引き立ててくれる半光沢のブラックペイントを施すことで描写・外観ともに「道具としての質感と美しさを感じることができるレンズ」が誕生したのです。
使用機材:FUJIFILM X-T5 + Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~
使用機材:FUJIFILM X-T5 + Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~
使用機材:FUJIFILM X-T5 + Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~
使用機材:FUJIFILM X-T5 + Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~
操作はマニュアルフォーカスのみ、描写はあえて収差を残す趣味趣向の強い製品を多くラインナップするフォクトレンダーですが、今回の『NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~』はカメラ好き、写真好きのこだわりを更に反映させたレンズと言えるかもしれません。インタビュー動画にて富士フイルム(株)・上野氏も話している通り、現代の広角レンズが解像力重視で設計されているところに、あえてシングルコートと組み合わせることで特別な描写性を見せてくれます。
本レンズで特に使用してほしいシチュエーションはマジックアワーと呼ばれる日の出前・日没後の数十分程体験できる薄明の時間帯です。「夜(nocturne)」を語源とするNOKTONの名の通りF1.2という明るさが特徴のレンズですが、シングルコートの恩恵もあり豊かな階調表現と、記憶の中の風景のような柔らかさを持つ写真描写を楽しむことができます。
使用機材:FUJIFILM X-T5 + Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~
使用機材:FUJIFILM X-T5 + Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~
使用機材:FUJIFILM X-T5 + Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~
物としての美しさと、写真としての美しさを
今回の『Voigtlander NOKTON 23mm F1.2 Aspherical SC X-mount ~MapCamera 30th Edition~』はマップカメラ30周年記念モデルとして登場した世界で300本しか販売されない希少なレンズとなります。メーカー限定も含む多くの限定モデルは外装色を変更した物が多い中、見た目が大きく変わる金属加工とレンズ描写そのものが変わるコーティングの変更を施した本レンズは所有欲を満たしてくれる事だけではなく、今まで撮れなかった写真表現も手にすることが出来ます。
Xマウントユーザーのみが使用できる特別なNOKTON、今後同じレンズが出てくることは無いと思います。ぜひ手にして欲しい一本です。
Photo by MAP CAMERA Staff