小さくても本格的に撮れるフルサイズ一眼『Panasonic LUMIX S9』をご紹介いたします。小型・軽量、フラットなボディデザインにフルサイズセンサーを搭載した『LUMIX S9』は初めてミラーレスカメラを買う方にも手に取ってもらいたいという想いから、リアルタイム認識AFや手振れ補正など「LUMIX S5II」に相当するスペックを持ちながらも静止画・動画どちらも気軽に本格的な撮影ができるように作ったということです。個人的に本機で一番興味をひいたのが、自分好みの色表現を撮影データに反映できる「リアルタイムLUT(ルックアップテーブル)」。これまでのモデルにも搭載されていた機能ですが、最大39個のLUTをカメラ本体に保存することが出来るようになったことや、2つのLUTの重ね合わせができるようになったりと大幅な進化を遂げています。また、スマホアプリ「LUMIX Lab」でオリジナルのLUTを作成して『LUMIX S9』に転送したり、カメラとスマートフォンを連携してSNSに投稿することが楽にできるようになりました。
ファーストカットの淡い青色のカットも2つのLUTを掛け合わせたものです。フォトスタイル「シネライクD2」に「Filmlike-V2」濃度100と「Clear-S」濃度80を掛け合わせました。これは撮影終了の後日、ボディ内現像で掛け合わせました。RAWデータで撮れば何度でも新しい組み合わせを試せます。同時発売の「LUMIX S 26mm F8」と撮ったカットやリアルタイムLUTを掛け合わせたカットなど撮ってきましたのでぜひご覧ください。
さて最初のカットは同時発売の厚さ約18.1mmの単焦点パンケーキレンズ「LUMIX S 26mm F8」とのご紹介です。絞りはF8固定でマニュアルフォーカス。フードもフィルターも取り付けできない小さなレンズは、組み合わせたらまるであのインスタントカメラみたいだなと思ったのが最初の感想。というわけで同じような使い方で思うがままにシャッターを切りました。約1時間で200枚近く撮りましたでしょうか。枚数を気にせずシャッターが切れるのがデジタルカメラの醍醐味でもありますが、無心で撮れるこの時間がとにかく楽しいのです。そのなかでバチっと解像してくれた1枚をご紹介します。ニョキっと生えてるスカイツリーまではまだ少し距離がありますが、前後の距離感を気にすることなく写してくれました。
ただこのレンズはパンフォーカスで撮るだけでなく「0.25m~無限遠」とフォーカスリングも付いています。最短撮影距離で撮影してみましたが、拡大して見ると石のザラザラした質感がシャープに写っています。これは想像以上というか期待値を超えていたというか。お見事!といった感じです。マニュアルフォーカス時の拡大ピント合わせは「ピンチアウト」でピント面を拡大確認できます。カスタムボタンでの設定も出来ますが、これが一番お手軽な方法だと思いますのでぜひ。他にもピーキング設定で撮影を行いましたがしっかりピントが合ってくれました。
続いてキットレンズである「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」での撮影です。広角側が超広角相当の20mmからスタートするというのがとても嬉しいポイント。旅行先のスケールの大きい建造物や狭い室内での撮影も20mmあれば、撮りきれないということはそうそうないでしょう。そして「クロップズーム・ハイブリッドズーム」機能により最大187mmの望遠ズーム(最大ズーム時は画像サイズXS)にも対応しています、どうしてもズームしたいという時に重宝する機能です。このカットには撮影終了後、ボディ内現像でリアルタイムLUTの「Sample LUT3」を充ててみました。かなり個性的な色味ですが、カチッとはまった気がしたので採用しました。
キットレンズのお供に選んだのは「LUMIX S 100mm F2.8 MACRO」。コンパクトなサイズながら等倍マクロ撮影ができる一本です。普通なら「最初のもう一本」にマクロレンズをおすすめしようとは思わないのですが、ここまで小さいサイズにまとまっているなら話は別です。暗いところでもテーブルフォトから子供のアップまで撮影できて撮れる幅がグンと広がります。F1.8単焦点シリーズはサイズが均一化されているので、どの焦点距離を選んでも持ち運びの負担は変わらないというのが魅力的。接写するときでも手ブレ補正がしっかりしているので、テンポよく撮影できると思います。
実はこのカットも完全な屋外ではなくてカフェで一休み中の店内に置いてあったアジサイなのです。外光があるのでそこまで暗くないとしても、センサーとレンズがしっかり光を拾ってくれました。
紙幣の細かな細工までしっかり解像しています、拡大すると瞳にばっちりピントが合っているのがわかります。約2,420万画素のフルサイズCMOSセンサーにライカとパナソニックが共同開発したL2 Technology(エルスクエア・テクノロジー)搭載のヴィーナスエンジン。エントリーモデルといってもS5IIと同等の画質なので、風景・物撮り・ポートレートなんでもそつなく綺麗に撮ることが出来ます。このカットにはリアルタイムLUT「Daily Life」を単体でかけています。薄暗い場所でもシャドウ部がふんわり浮き上がるので、まさにデイリーにピッタリなLUTだと思いました。
水上バスから見る景色は普段川沿いから見る景色とは印象が違います。あんな場所があったのか、と良い発見もありました。『Panasonic S9』は779点の像面位相差AFを採用しており、進化した認識AFにより「人物認識」「動物認識」を筆頭に「車認識」「バイク認識」「動物瞳認識」を搭載しています。手前に遮蔽物がある状況でしたが奥にいる人物を正確かつ迅速に捉えてくれました。
そして船に揺られている間、リアルタイムLUTをいじってみました。まずフォトスタイルの「MY PHOTO STYLE」を選びベースをスタンダードに、次にLUT.1に「Daily Life」濃度100を。LUT.2に「Smoky Color-S」濃度100で掛け合わせました。立派なふうに書いていますがただそれだけで、他の設定はいじっていません。この組み合わせが一番自分好みだったので、「MY PHOTO STYLE」に登録をしてすぐ使えるように設定しておきました。シャドウの柔らかさがとても気に入っています。ただ重ねがけすれば出来ますのでよかったらぜひ試してください。
レインボーブリッジの潜り抜け際に撮影。非日常の景色ってワクワクします。こういう時にも20mmの超広角で撮れるというのはスケール感が大きく伝わるので気持ちが良いです。フォトスタイル「LEICAモノクローム」でメリハリのあるモノクローム写真を撮ることが出来ました。
今日は難しいことを考えずに撮りたい。そんな時が誰にでもあるのではないでしょうか。真摯に向き合いつづけることも大事ですが、お気軽に楽しむことを忘れてしまっては勿体無い。そんな日は「LUMIX S 26mm F8」だけ着けてブラッといたしましょう。無限遠にフォーカスリングを合わせて、撮りたい時にただただシャッターを切る。気分転換というのか、デトックスみたいなものかもしれません。ほぼ荷物にならないので違うレンズをカバンに入れておくのもありです。それでいいのだ、これでいいのだ精神でいきましょう。レンズの特性として、強い光に対してややフレアやゴーストが出るのも「そういう個性」ですし、むしろ「フレアとか出て欲しい」まである気がします。
水面をボケに、葉っぱを被写体に撮影します。LUTは外して、優しい色合いにしたかったのでフォトスタイルは「ナチュラル」にしました。LUTを掛けなくても綺麗な色と線を描いてくれます。もし難しく考えさせてしまったとしたら、一旦忘れて設定なんて気にせず撮ってください。カメラだから見ることの出来る世界が沢山あります。
ISO3200で撮ってもかなりノイズレス。朝昼夜とオールタイムいつでも撮影が楽しめます。カメラボディ前面はフラットになっていますが、キットレンズでも単焦点でも、背面にある親指グリップが思っていた以上にホールドしてくれます。とはいえ保険のためのストラップは付けていたい感じです。慣れてきたら「MY PHOTO STYLE」に登録していくと思いますが、「LUTボタン」というすぐにLUTを切り替えられるボタンがモニターの上部に配置されており、気軽に切り換えできるのも良いポイントでした。もしここからまたステップアップしたいと思ったとしてもこのカメラは手離せない存在になるんじゃないかと思います。
撮る喜びをその手に
「LUMIX S 26mm F8」と組み合わせてから始まった今回。リアルタイムLUTを掛け合わせながら自分の好きな色で撮るのはもちろん、イメージしてなかった色の世界の発見もある撮影はとっても楽しい時間でした。カメラだけでここまで多彩な表現が出来るのは、無限の可能性を感じずにはいられません。日常に寄り添うようなコンパクトな設計、難しい設定をせずにワンタッチで自分のオリジナルカラーを作り出せる機能、サブ機にはもちろんのこと、カメラで写真を撮ってみたいというユーザーにとっても魅力的な一台になっています。このカメラとして構えすぎない形状も被写体にプレッシャーを与えず、良いシャッターチャンスに巡り会えるのではないでしょうか。いつでもどこへでも持ち出せることが出来て、撮る喜びをリアルタイムで感じることができる『LUMIX S9』をぜひその手に。
Photo by MAP CAMERA Staff