
1075:F1.2の描写を、もっと軽やかに『 SIGMA Art 85mm F1.2 DG 』
2026年09月10日
今回のKasyapaでは、シグマから発表された大口径中望遠レンズ『 SIGMA Art 85mm F1.2 DG 』をご紹介します。本レンズ最大の魅力は、Sigma史上最も明るい開放F1.2による豊かな描写力と、大口径85mm F1.2の常識を覆す小型・軽量設計を両立していること。複雑なフローティング機構を採用しながら、ソニーEマウント用で質量905gを実現しています。今回はSONY α7Vに装着し、開放F1.2ならではの大きなボケやピント面の解像感、85mmが生み出す立体感、そして暗所での表現力を実写とともにご紹介していきます。
まずは同じ構図で絞りによる写りの違いを見てみました。開放では手前の葉が大きくぼけ、その奥にある赤い花が自然と浮かび上がります。F8まで絞ると、それまでぼけていた手前の葉の輪郭がはっきりと現れ、奥の赤い花が隠れてしまいました。開放F1.2の大きなボケが、前景をどれだけ滑らかに整理しているのかがよく分かる比較です。

鮮やかな花に小さな虫を見つけ、撮影しました。実は前回ご紹介した『 SIGMA Contemporary 20-60mm F2.8-4 DG 』とほぼ同じロケーションで撮影しています。広く空間を捉える20-60mmとは異なり、85mmでは目に留まった被写体を選んで切り取る感覚が強く、レンズによって撮り方そのものが変わることを改めて実感した一枚です。

F5.6まで絞り、複雑に重なる緑の葉と赤い花を捉えました。開放時とは対照的に被写界深度が深まり、葉脈や花の細かな輪郭まで丁寧に描き出されています。

ガラス越しに、流れ落ちる水と濡れた植物を撮影しました。葉の表面に反射する光や、空中に散る細かな水滴までしっかりと写し止められています。少し条件の難しい場面でしたが、その場で目にしたみずみずしさまで伝わってくる一枚になりました。

長く続く廊下を85mmで切り取りました。前回の20-60mmでは20mmで空間全体の広がりを捉えましたが、85mmでは柱や建具が重なり合い、奥へ続く景色がぐっと凝縮されます。赤い絨毯の先へ自然と視線が導かれ、同じ場所でも焦点距離が変わるだけで全く違った表情を見せてくれました。

暖かな照明に照らされた室内を撮影しました。光が当たる部分の細かな質感を残しながら、その周囲は深い影へと自然につながっています。

木々の奥に佇む石像を、手前の緑越しに撮影しました。大きくぼけた葉の間から石像を覗くように構図を作ることで、まるでその場で見つけた瞬間のような奥行きが生まれています。前ボケを積極的に取り入れた撮影が楽しくなる一本です。

今度は濡れた岩肌へぐっと近づいてみました。広い景色を写すのではなく、気になった部分だけを85mmで切り取ることで、岩肌の細かな凹凸や濡れた部分の光沢がより印象的に見えてきます。

暗がりに浮かび上がるように見える彫刻を、開放F1.2で撮影しました。周囲が深い影へと溶け込む中、ピントを合わせた顔まわりの細かな造形までしっかりと描かれています。本レンズは2枚のSLDガラスに加え、異常分散性の高いガラスや非球面レンズを採用。大口径レンズで目立ちやすい諸収差を抑え、開放から高い解像力が得られるよう設計されています。この一枚でも、F1.2の大きなボケとピント面の緻密さの両立を実感できました。

赤い座面と光沢のある金属フレームに目を引かれ、85mmで一部分を切り取りました。光を受けた金属の滑らかな質感と、深みのある赤い張地がそれぞれ丁寧に描き分けられています。

室内に置かれた時計へピントを合わせました。時計の金属やガラスの質感は細かく描かれながら、その奥にある彫像やカーテンは柔らかくぼけています。たくさんの物が並ぶ室内でも、見せたいものだけを自然に浮かび上がらせることができました。

布張りの家具へ近づき、細かな装飾を撮影しました。刺繍の糸や生地の凹凸、縁に施された模様までしっかりと確認できます。本レンズの最短撮影距離は84cm、最大撮影倍率は1:8.9。85mmの画角を活かしながら、気になったディテールへ寄って切り取る撮影も楽しめます。

日が落ち始めた参道で、軒先に並ぶ行灯へピントを合わせました。暖かな灯りを主役にすることでその奥にあるアーチは柔らかくボケていきます。場所全体を写すのではなく、目に留まった一部分を切り取る。85mmならではの視点を楽しめた一枚です。

信号待ちをする人物の後ろ姿を、開放F1.2で撮影しました。背景にある街灯や看板の光は色とりどりの大きな玉ボケへと変わり、その中から人物が自然に浮かび上がります。画面周辺では口径食の影響により、玉ボケがやや楕円形に見えます。その形の変化も含めて、夜の街ならではの印象的な背景となりました。

先ほどの開放F1.2のカットに続き、こちらはF2で撮影しました。F2まで絞ったこのカットでは、画面周辺の点光源も比較的円形に近い形で写っています。本レンズは13枚の円形絞りを採用しており、絞った際にも円形に近い自然なボケを保ちやすい設計です。開放の大きくダイナミックなボケだけでなく、絞りによって変化するボケの表情も楽しめました。

店先に並ぶ椅子と、曇りガラス越しに見える人影を撮影しました。ピントを置いた椅子の質感をしっかりと残しながら、奥の光や人影は柔らかく溶け込んでいます。85mmならではの切り取りと浅い被写界深度によって、何気ない夜の風景にも奥行きと静かな雰囲気が生まれました。

規則的に並ぶ窓の中、一つだけ暖かな光が灯っていました。85mmでその部分を切り取ることで、広い建物の中から自然と視線がそこへ集まります。夜景全体を写すのではなく、その中から気になった“光”を探して撮る。そんな楽しみ方にも85mmという焦点距離がよく合います。

F1.2の描写を、もっと軽やかに
今回の撮影では、花や建築の細部から前ボケを活かしたスナップ、光量の少ない夜の街まで、85mm F1.2ならではの立体感を幅広いシーンで楽しむことができました。85mm F1.2と聞くと、どうしても「大きくて重いレンズ」というイメージがつきものです。しかし、905gに抑えられた本レンズは、今回の撮影でもその重さをほとんど意識することなく持ち歩けました。また、F1.2という明るさは魅力的である一方、これほど浅い被写界深度でピント面の描写がどこまで得られるのか、撮影前には少し気になるところでもありました。しかし、それも杞憂に終わりました。開放からピントを合わせた部分はしっかりと解像し、その前後には大きく滑らかなボケが広がります。F1.2の表現力を、特別な撮影だけでなく日常へ気軽に持ち出せる。描写力と機動性、そのどちらも妥協せず楽しめる、素晴らしい一本でした。
Photo by MAP CAMERA Staff









