シグマが掲げる新しいミラーレスレンズの提案「Iシリーズ」から、『SIGMA Contemporary 35mm F2 DG DN』を先行して撮影する機会を得ましたので、発売前ですがご紹介します。レンズ名はコンテンポラリーながら、アートラインと同等の光学性能を内包。手に触れる度にクラフツマンシップの高さを感じさせる気品ある金属製鏡筒と精密な造形。その上で、ミラーレス専用設計を突き詰めることでコンパクトネスを極め、ボディに装着した時にカメラとして非常に良いバランスとなっています。スムーズで、シビアな調整も苦ではないフォーカスリング。絶対的精度で、気持ち良く動きながら止まった所からのズレを許さない信頼性の高い絞りリング。まさに触っているだけで楽しく、使う程に持った喜びが深まる当レンズ。今回は、ソニー/Eマウント用でその写りを見るべく『SONY α7 III』をボディにチョイス。ソニーとシグマ、その妥協なきスタンダードが組み合わさった相乗効果が生み出す写真。是非、ご覧下さい。
今なお人気の高いVolks WarenのType 2、通称ワーゲンバス。海辺がとても似合う車です。青いボディは海とも空ともマッチして、実に開放的な気分を演出してくれそうです。絞りをF4に設定し、滑らかな金属の質感を引き出しました。艶を感じる写りはこのレンズの美味しいポイントでしょう。
撮影に出た最初の頃は清々しいほど晴天でしたが、段々と雲が増え、数枚の晴れ間のカットが撮れた後は太陽が隠れてしまい、貴重な青空となりました。ややハイキーに露出を設定して雲の白さを出しています。それでも、白飛びもなく雲の輪郭が分かる。改めて『SIGMA Contemporary 35mm F2 DG DN』の解像性能に驚かされます。
花の上で休んでいるところが可愛らしく、こっそり一枚。近接撮影能力も高く、かなり寄れるレンズです。驚かせてしまわない位置までじっくりと近づき、ピントを合わせました。フォーカスリングの加工は指にほどよく引っかかり、操作性を高めつつデザインとしても美しいものです。指先から感じる金属のひんやりとした感覚が、撮影に熱くなった時もクールダウンさせてくれます。
水の動きを美しく表現してくれるレンズというのは非常に信用できます。波打ち際に身をかがめ、優しく押し寄せる奔流をシャッタースピードを上げてぴたりと撮影。常に動き変形する水流を捉えることができるのは『SONY α7 III』の高いAF性能のおかげでしょう。ここぞと言う時に身を委ねられる、頼もしい存在です。
場所を変えて、今度は見頃を迎えた紅葉を捉えに足を運びました。来場の記念にと何気なく取った一枚だったのですが、実に素直に光を写してくれています。そして日向の美しさから日陰になっているシャドウ部へ目を向けると、樹の肌感や岩のゴツゴツとしている所まで黒潰れなく見せてくれています。なんと心躍る画作りなのでしょうか。
絞り開放付近が楽しいのもこのレンズの特徴でしょう。開放からシャープですが一段、また一段と絞るごとにコントラストが豊かになり線の切れ味が研ぎ澄まされていきます。筆者はやや絞ったF2.5~2.8がレンズそのものの力を遺憾無く発揮してくれていると感じ多用していました。影の空気感と岩肌に当たった光の美しいボケ。このレンズを象徴するような描写ではないでしょうか。
想像を超えるスタンダード
開放から身震いする程に圧倒的な解像感。コントラストが高くパキッとした写りは、ソニーのαシリーズと非常に相性が良いと感じました。シグマはこれまでに、同じ35mmの焦点距離を持つ単焦点レンズをF値違いで2本製作しています。それら大口径のレンズにも匹敵する画を生み出す力を持ちながら、収まりの良いサイズ感。一日の撮影でもまったく機材の重さを辛く感じる事はありませんでした。美しい世界を覗きながら、レンズの素養を確かめるようにリングの感触を手で、耳で味わう。クリック音とシャッター音のデュエットを奏でるほどに、体がむしろ元気になってくるような感覚を覚えました。新しいスタンダードの在り方を今またここに示した『SIGMA Contemporary 35mm F2 DG DN』は、撮影者に寄り添うIシリーズのコンセプトを世に知らしめる先駆の一本です。日々を連れそうスタンダードと共に、新世界へ歩み出してはいかがでしょうか。
Photo by MAP CAMERA Staff
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