マップカメラ店長がカメラについてアレコレ語る『極私的カメラうんちく』

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第39回:パンケーキとカメラの甘い関係

「パンケーキレンズ」というレンズをご存知だろうか。

パンケーキレンズの呼称の由来は、言うまでもなくパンケーキ(ホットケーキ)のように薄いという意味で、そこに明確な規定は無いが、レンズの直径に比較して極端に厚みが少ない軽量の一眼レフ用単焦点交換レンズを、概ねパンケーキレンズと呼ぶことが多い。

実はパンケーキレンズを作るには、その「薄さ」が故に幾つかの制約を伴う。
まず極端な大口径化は出来ない。パンケーキレンズの殆どがその明るさはF2~F2.8程度である。これはレンズ全長をより短くするため、選択出来る光学系に制約があるためである。また光学系の制約はその画角にも及び、XRリケノン28mmF3.5などの例外があるにせよパンケーキレンズはその殆どが標準レンズとして作られている。そしてどこまで近づいて撮影できるかという性能である最短撮影距離も、比較的長めに設計せざるを得ない。ピントの繰り出し量を多くするとその分鏡筒が長くなり、結果としてレンズ全体の厚みが増してしまうためである。
上記以外にも、ピントリングや絞りリングの造作が非常に薄くなってしまうため、レンズの使い勝手が必ずしも良いものとはいえないことが挙げられる。しかし巷でよく話題になるような薄く作られるが故に描写力が犠牲になっているという印象を筆者は持っておらず、むしろF値や画角に制約を受けている時点で、描写性能は充分に担保されていると考えている。

パンケーキレンズは、1970~1980年代のマニュアルフォーカス一眼レフ時代に、キヤノンを除くほぼ各社から発売されていたが、近年になってからもMFレンズとして発売されるものがある一方で、なぜかAFレンズとしては発売されたパンケーキレンズが極端に少ない。比較的近年発売されたAiニッコール45mmF2.8Pも、先日フォクトレンダーから再発売されたノクトン40mmF2はどちらもMFレンズである。AFのパンケーキレンズは筆者の知る限りペンタックスのFA43mmF1.9、DA40mmF2.8と、同じくDA21mmF3.2くらいであろうか。これはパンケーキレンズというよりは単焦点レンズの需要が減った一方で、AFレンズの機構を薄型の鏡筒内に収めるのが難しいことも理由のひとつと考えられる。またこの事情は、レンズ内モーターを採用したメーカーにとってはさらに厳しいものとなっているのだろう。

ところが、今4月にはオリンパスからなんとフォーサーズ規格のパンケーキレンズが発売されるという。ZUIKO DIGITAL 25mmF2.8である。写真で見る限りZUIKO DIGITAL 25mmF2.8の厚みはボディキャップ2つ分程度しかない。立派なパンケーキレンズである。かねてからフォーサーズには小型軽量単焦点レンズの発売を望む声が多かったが、まさかレンズ内モーターと電磁絞り機構を採用したフォーサーズが、パンケーキレンズを発売してくるとは思いもよらなかったというのが筆者の正直な感想である。

ところでペンタックスとオリンパスといえばかつてフィルムカメラ時代に世界最小の35ミリ判一眼レフの覇権を争った歴史を持つ。1972年に驚異的な小型軽量一眼レフとして発売されたオリンパスのOM-1(M-1)に対抗して、1976年にペンタックスが世に送り出したのがMXである。MXの外寸はOMのそれをわずかに0.5mmずつ下回っていたということからも、当時の小型化競争の厳しさが見て取れる。そしてMXの半年程前に発売され、MXの発売後はその小型軽量ぶりをさらに誇示したのが、通称ヨンニッパと呼ばれるパンケーキレンズのSMC-M40mmF2.8である。40ミリというやや広角よりに設定された準標準レンズは、スナップ撮影などに多く用いられたMXと小型軽量同士の抜群の相性が評判になり、事実上MXの標準レンズとなった。一方オリンパスは、ペンタックスのパンケーキレンズへの対抗として、厚みはやや増したものの、明るさに勝るOMズイコー40mmF2を1983年※1に発売してペンタックスをけん制している。

また1970年代後半から80年代初頭といえば、自動露出機能(AE)を搭載した一眼レフが続々と発売される一方で、同時にカメラボディの小型軽量化が一気に進んだころである。OMシリーズやその後のペンタックスが採った小型軽量路線に呼応したメーカーは、大抵この時期に小型軽量を謳った新型機とパンケーキレンズをそれぞれ発表しているのである。
そして今回ZUIKO DIGITAL 25mmF2.8と同時に、現行の小型軽量デジタル一眼レフE-410をさらに小型化したE-420が発表されている。

どんな時代であっても、小型軽量の一眼レフボディとパンケーキレンズの間には、どうやら切っても切れない深い関係があるようだ。

※1 店頭配布版マップタイムズの当コラムでは、OM ZUIKO 40mmF2の発売年度が1979年と表記されていますが、検証の結果1983年が正しいという結論に達しました。執筆時に筆者が参照した資料が誤りだったことが原因ですが、Web版では謹んで訂正させていただきますとともに、誤った内容を掲載いたしましたことを深くお詫び申し上げます。

written by ストロベリー小野
この記事のカテゴリーは『極私的カメラうんちく』です | 2008年03月20日

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