マップカメラ店長がカメラについてアレコレ語る『極私的カメラうんちく』

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第21回:花弁がつくる小さな日陰

最近は凝った形のレンズフードがよく目に付く。

新設計の一眼レフ用交換レンズには、必ずと言ってよいほど花型(花弁型、チューリップ型などとも言う)のレンズフードが付いている。これでもし色が付いていたら、まさにカメラ店の店頭はさながら百花繚乱といった趣きである。

ところで、ものの本によるとレンズフードの役割とは、「逆光時のフレアやゴーストの軽減」とある。またこの解釈は一般的にも市民権を得ているようだが、実は必ずしも適切な表現ではない。それどころか少なからぬ誤解がまかり通っているように思う。

そこでもう少し厳密にレンズフードの役割を定義するならば、次のようなものになるだろう。レンズフードとは『「画角外」の強い光源が、レンズの表面に直接当たらなくする遮光装置』である。この「画角外」というところが重要であり、「逆光」という表現が必ずしも正確では無いとする理由である。

一般的に写真技術でいう典型的な「逆光」とは、多くの場合、きらめく水面を背景にしたポートレートとか、夕日を画面に入れた記念写真だったりする。当然だが背景にある画面内の強烈な光源は、フレアやゴーストによって肝心の被写体の画質を少なからず低下させるため、撮影者にとっては厄介なものである。そこで前出の「逆光時のフレアやゴーストの軽減」をそのまま解釈すると、あたかもレンズフードがこういった撮影状況での画質向上に一役買っているように思われがちだが、実はこの場合の光源は「画角内」つまり画面の中にあり、常に画角の外に置かれるように設計されたレンズフードが画角内の光源を遮ったり、画像に何かしらの作用を及ぼすことは絶対に出来ない。つまりそれらの状態ではレンズフードはたいした役には立っていないのである。

ではレンズフードはどんな時に役に立つのか。

太陽が真上にあるような、真夏の晴れた日中を想像してほしい。そんな時に外にいる人間が遠くを見るときには、見ている視界に太陽が入っていなくても無意識に眼の上に手で庇を作って太陽光線を遮っている。これは視野の外からであっても肉眼に直射日光が当たると、景色が白っぽくなって見えづらくなることを経験則で知っているからである。このときかざした手は視界そのものを遮ってはいないが、眼を一時的に日陰に入れることによって視界がクリアになっている。写真技術的に表現すれば、「ハレ切り」ということになるが、これこそが本来期待すべきレンズフードの効果であり、カメラを日陰に移動したのと同じ効果をつくり出すのが、レンズフード本来の役割である。

画角外からやってくるレンズへの入射光は、直射日光以外にも曇天の空や夜の街灯、またスタジオの照明機材などいろいろ考えられる。そしてそれらは大抵不意の方向からやってくる。そこで360°からの方向に最大限対応すべく、レンズ先端に予め固定した「庇」がレンズフードの形なのである。

また当然だがレンズフードは決して画角を遮ってはいけない。レンズフードが画角を遮ること、つまりフードの内側が写真に写ってしまうことは「ケラレ」と呼ばれている。ケラレは写真の四隅にもっとも出やすいが、規格の合わないレンズフードを使用したときや、装着法を誤っているときには特にケラレが起きやすい。

だからといってレンズフードの先端がレンズの画角からあまりにかけ離れたところにあっても、今度はレンズフード本来の目的を達しない。そのため画角を遮らないように、つまりケラレが起きないように、光学的根拠によって割り出されたぎりぎりの形状が花型フードなのである。その意味で花型フードは、単純な丸型やお椀型と比べて最も理想的な形状といえる。

しかしいかに純正のレンズフードであっても、ズームレンズのフードは広角端に最適化されており、3倍から10倍前後のズーム比を持つズームレンズの場合、望遠側での効果はあまり期待出来ないはずである。そのため高性能標準ズームのなかには、フードの内部でズームの伸縮を行い、フードの深さが焦点距離に比例するようにして最大限の効果を得ているものもある。

花型フード以外にも、フォクトレンダーやニコン、ペンタックスなどの薄型単焦点レンズ見られる、「ドーム型フード」も非常に興味深い。もともとこの先端がすぼまった形状は古くからレンジファインダー機用の交換レンズに見られたもので、当時はファインダーからの視界を最大限確保するために考案された。しかし一眼レフ用のドーム型フードの場合は、フード内部の空間を最小限にするために同じような形状となっている。さらにレンジファインダー機用では、ファインダーからの視野をさらに確保するために、庇の「支え」部分に穴が開いているものまである。

反射防止コーティング技術が発達した現在は、レンズフードのあからさまな効果を体感することは少なくなってきている。しかし新設計レンズの光学系も同時に複雑化の一途をたどっており、きわめて原始的な方法であるにせよ、カメラに小さな日陰を与えてくれるレンズフードが、レンズの性能を最大限引き出すための手段であり続けることは間違いないだろう。

written by ストロベリー小野
この記事のカテゴリーは『極私的カメラうんちく』です | 2006年09月20日

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