LEICA社のハイエンド・コンパクトライン“Leica X”シリーズに待望のニューフェイスが登場した。フルサイズ換算で35mm相当の画角を有する単焦点レンズと大型イメージセンサーのコンビネーションは「Leica X2」の後継機種といった位置付けだが、新設計の「Summilux f1.7/23mm ASPH.」を搭載した事により、従来の“Leica X”シリーズには無い“更なる明るさ”を手にしている。
非球面レンズ2枚を含んだ8群10枚という贅沢なスペックは、期待を裏切ること無く、開放付近から驚くほど先鋭な絵で魅了してくれる。 それでも決して硬くなり過ぎず、写真全体の雰囲気を大切にする絶妙な味付けは流石のものだ。ライカがライカたる所以が、しっかりと小さなボディの中にも息づいている。
レンズ交換式の新システム「Leica T(typ701)」も存在する現在、レンズ一体式の“Leica X”シリーズに求められるのは、それ一台で完結した写真機であるということ。高感度耐性に優れたイメージセンサーと、撮影環境を選ばず安心して持ち出せる高性能な大口径レンズのパッケージは、それを見事に体現したものに思える。
デフォーカスの雰囲気はモノクロームにするとより一層際立つ。ピントピークの先鋭さと、細やかなボケの対比がなんとも美しい。
テーブルの装飾が浮き立つような、きめ細かい描写がご覧いただけるだろうか。「Leica X(typ113)」は、積極的に絞りを開けて撮りたくなる、稀有なコンパクト・デジタルカメラという印象を受けた。
操作面においては、クラシカルなダイヤル類での各種設定は勿論、鏡胴の「AF」ポジションからピントリングをずらせば直感的にマニュアルフォーカスへ移行できたりと、ユーザーを“撮る気にさせる”演出は決して忘れられていない。
さて、最後にひとつだけ特筆しなくてはならない事柄がある。誠にドイツらしい物作り気質と言うべきか、「Leica X (typ113)」には、最短撮影距離20cm~おおよそ1mの近接域において、絞り優先モード時も画質を最高の品質に保つ為、自動的に絞りを少し絞る特性が備わっている。美しいボケ味と精度の高いピントを両立する秘訣は、一般的なデジタルカメラに慣れた感性からすると少々不思議な物だが、実際に本機が紡ぎ出す作例を見れば、きっとご納得いただける筈だ。
ボディデザインから、ついつい「X Vario」を意識してしまうが、アクセサリとして選択できる電子ビューファインダーには従来の「EVF2」ではなく、最新の「Visoflex」が設定されている。接眼部に内蔵されたアイセンサーにより、目を近づければ自動的に背面の液晶モニタから電子ビューファインダー内に表示が切り替わる。画質だけにとどまらず、使い勝手も格段に向上した本機は、ライカ100周年の節目に相応しい、非常に完成度の高いモデルと言えよう。
Photo by MAP CAMERA Staff