ピーター・カルベ氏 ライカSLレンズ インタビュー VOL.2 | Kasyapa for Leica Kasyapa for Leica|(カシャパ フォー ライカ)東京新宿のカメラ専門店マップカメラが提供するLeica専門サイト 
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Peter Karbe氏「ライカレンズ」インタビュー


null 日本国内のメーカーはF1.4をはじめ、時にはF1.2やF0.95などの高性能な大口径レンズを発表しています。明るさへのこだわりが強くあるような印象を受けますが、ライカではこの「プライムレンズシリーズ」の開放F値をF2.0としました。
先のプレゼンテーションでもMレンズの「ズミルックス F1.4」に劣らないボケ感や画質のお話がありましたが、ライカにも「ノクティルックス」というハイスピードレンズは存在しています。そうした「アポズミクロン」とは異なるベクトルの考え、大口径へのこだわりはあるのでしょうか?


null 今回このLマウントのプライムレンズシリーズにF2.0を選んだのは、サイズや性能、様々な意味で完成されたシステムを作っていくために、ボケ方や被写界深度も含めて、「F2.0」が最適な明るさであると判断して選択しました。SLレンズにもF1.4レンズはありますが、どうしても個体が大きくなってしまいます。大口径への想いというのもありますが、様々なバランスを考慮する必要もあります。
それから、M用レンズをマウントアダプターを介してSLなどのLマウントボディで使用することが出来るのも魅力です。そうすれば大口径かつコンパクトなレンズをSLでも楽しんでいただけます。


Lマウントボディはマウントアダプターを介することでM用レンズも楽しめる
Lマウントボディはマウントアダプターを介することでM用レンズも楽しめる。
ピントのシビアな「ノクティルックス M50mm F0.95 ASPH.」などを安定して楽しめるのもミラーレスならではの強みだ。


オスカー・バルナックの思想を受け継ぐモノづくり


null ライカはMシステムのような、歴史の長いロングライフな製品を作っています。ユーザーの方からも伝統的な企業だと思われていることが多いように感じますが、一方では今回のお話のような新しい技術なども積極的に取り入れています。世界初の非球面レンズであったり、先程のF0.95への挑戦であったりなど、ユニークな発想のモノづくりも特徴的だと思うのですが、伝統の中にそうした新しい・ユニークな要素を取りいれるバランス感覚はどこから生まれてくるのでしょうか?


null 毎日が大きな戦いです。光学設計者の視点から申し上げれば、レンズに関しては今は電気的に歪みを抑えたりすることも一部では可能ですが、そのようなデジタル技術にはあまり頼らず、実直に向き合って出来るだけ光学的な要素を良くすることを目指しています。
更には、コンパクトさがライカの重要な要素ですから、使い勝手もシンプルにしています。ユーザーに実用的に活かしてもらえる製品にしたいので、あまり機能をたくさん持たせることはしていません。デジタル時代になってもアナログのような、シンプルさへのこだわりを持っています。

ライカのカメラの起源は、オスカー・バルナックが作り上げたスナップショットが撮れるコンパクトな「ウル・ライカ」ですが、その当時は三脚を立てて大判カメラで写真を撮るということが一般的で、こんなに小さなフィルムで良い画が撮れる筈がないとまで言われていました。それが今は35mm判の解像度が高いと言われるようになって、どんどん世の中も変わっています。
ライカは「決定的な瞬間を撮る」という言葉をよく使います。後からトリミングして自分の好きな写真に仕上げるという考え方は、究極のスナップショットであり、オスカー・バルナックの思想が今も生きているのです。


高精細な写真を後から切り取って、フォトグラファーの意のままに作画する
高精細な写真を後から切り取って、フォトグラファーの意のままに作画する。
ライカQ2はオスカー・バルナックのコンセプトを具現化した、スナップシューターとして最適なカメラだ。


null 今回ご紹介いただいた「アポズミクロン」より以前にも、ライカには「アポテリート」のようなアポクロマートレンズを開発しています。名称は同じ「アポ(クロマート)」レンズですが、今の最新レンズとの一番の違いはどこにありますか?


null フィルム時代のアポクロマートレンズは望遠レンズに良く使われていて、色収差によるコントラスト低下を避け、ハイコントラストな撮影を出来るようにすることがターゲットでした。今は、パープルフリンジの様なデジタルならではの偽色を出さないようにすることに注力しています。フィルム時代にはあまり見えてなかった部分を今のアポでは重要視しているのです。それから、今のレンズは解像感を重視していますので、そのためにも色収差の低減には必要な要素です。アナログ時代のアポは、今の時代の基準から言えば、「ハーフ・アポ」のような位置づけでしょうか。

顕微鏡の様な、正確な見え方が要求される光学製品もあり、ライカはアポ(クロマート)レンズについては古くから取り組んでいます。かつては自社でガラスを溶かして新しい硝材を開発していましたし、その時ライカが開発した硝材には、今のガラスメーカーのカタログに載っているようなものも多くあります。硝材の組み合わせによる色消し効果等のノウハウには長い歴史のあるメーカーです。


ライカにおける「アポズミクロン」の歴史はMレンズの50mmから始まった
絞り:F2.0 / シャッタースピード:1/2000秒 / ISO:200 / 使用機材:Leica (ライカ) M(Typ240) + Leica (ライカ) アポズミクロン M50mm F2.0 ASPH.
ライカにおける「アポズミクロン」の歴史はMレンズの50mmから始まった


null ライカSLをはじめとするLマウントは全く新しいシステムですが、反対にMマウントはフィルムの時代から続くシステムです。今のデジタル設計のレンズをフィルムライカで使った場合に、フィルムだからこそ、気を付けるべきことはありますか?それとも、フィルムであっても同じ感覚で撮影できるのでしょうか?


null デジタル時代になって最も変わったのが、センサーの前に必ずあるセンサーカバーガラスの存在で、これがレンズ性能にも影響を与えます。ライカの場合、特にM型の場合にはそのカバーガラスを極力薄くしています。ローパスフィルターもないし、IRカットについてもカバーガラスと一体化したりと、出来るだけセンサーの前にガラスを置かないようにしているのですがゼロには出来ません。ですから、今のデジタル世代のレンズはこのカバーガラスがあることを前提に作っています。
質問とは逆になりますが、アナログ・フィルム時代のレンズをデジタル機で使うと、このカバーガラスの影響が出てきます。またおっしゃるようにフィルム機で最新のレンズを使うと周辺部の像面歪曲など、性能差が出ると思います。

これはM型をデジタル化したときからの一番の課題です。過去のフィルム時代からのM用レンズを最新のM型デジタルでも使えるようにしたく、初代の「ライカ M8」には0.8mm程の非常に薄いカバーガラスを置きました。その際、当然赤外線カットも機能として持たせていたのですが、ガラスが薄かったことで透過に悩まされたこともあります。こうしたことは今後も課題になる部分だと思います。


null 今のライカのカメラのラインナップは、今回のSLシステムや伝統のMシステムの他にも、中判カメラやコンパクトデジタル、更にはインスタントカメラまでとかなり充実した商品ラインナップになっていると思います。かなり出揃っていると思いますが、今後の展望などは決まっているのでしょうか?


null 将来的なことについては、あまり語れない部分もあるのですが・・・、個人的な意見としては、ほぼ完成したラインナップになっていると思います!
この先に関しては、何かアイデアはありますか?


null
ライカのラインナップは代名詞ともいえる、レンジファインダー機・ライカMシステムや、ライカSLに代表されるミラーレスカメラに留まらない
フォトグラファーのニーズに合わせた多種多様なラインナップを誇っている。
写真はインスタントフィルムを使った、「ライカ ゾフォート」


今後のレンズラインナップは、マーケットの声に耳を傾けながら


null ライカは今回のプライムレンズシリーズにおいて、広角側の21mmから、中望遠90mmまで、7本の「アポズミクロン」をそろえます。なかにはズームレンズで事足りる、という方もいらっしゃるとは思いますが、単焦点レンズに信頼を持つユーザーの方にきちんと答える姿勢が見られます。レンズデザインの共通化もされていますが、今後このラインナップはさら広がりをみせることはあり得るのでしょうか?


null こちらは、一般的には私の所属する光学部門ではなく、企画部門が担当のお話ですが、今のラインナップだけで十分とは思っていませんので、今後も広げてゆく必要はあるのかなと思っています。今のLマウントレンズの焦点距離は、M型と近い焦点距離から出していますが、世の中には当然、スポーツシューティングといった需要もあります。今後、マーケットからの要望に耳を傾けながら広めていく必要があると思っています。


ミラーレス一眼のライカSLシリーズは、レンジファインダー機では難しい焦点域にも対応する
ミラーレス一眼であるSLシリーズは、レンジファインダー機では難しい焦点域にも対応する
こちらは現行モデル最望遠の「アポバリオ・エルマリート SL90-280mm F2.8-4.0」


null 近年は動画をスチルカメラで撮られる方の需要も高まっています。デザインの共通化という意味では当然プロのムービーの世界ではシネレンズという存在もありますが、こうした共通化の理由の中には、そうしたムービー需要も見据えているのでしょうか?


null 動画についての需要は、この「アポズミクロン」を設計した時点ではあまり高いとは考えていませんでした。当時はどちらかと言えば、静止画のレンズとしての完成度を追及していった結果です。
性能はシネレンズにも近いスペックですので、そういった使い方で活用していただけると思っています。あくまでプライオリティは静止画のレンズとして使ってほしいという想いを持っています。









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[Category: Leica Special Contents|掲載日時:2019年12月04日 20時01分]

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