1954年に発売され、その性能の高さと描写力で世界のレンズ設計の標準を引き上げたとすら言われるLeica標準レンズ伝説の1本。それがこの『Summicron 50mm/f2.0』だ。半世紀以上の永きにわたって続くレンズだけにバリエーションは多く、Lマウントの沈胴式のレンズが最初期にあたる。今回使用したのは固定鏡筒のMマウントのもの。Lマウントの頃から引き継がれた設計の第1世代モデルである。モノクロームで愛用される方も多いこのレンズ、その諧調表現等が気になる所だ。
まずは開放で、前ボケは柔らかく美しい描写だ。後ろボケは少々輪郭が出、少し回る。そんな中でもピント面の鋭さは印象的だ。光が強い中でも清々しい、気持ちよい発色をするのも好印象である。
少し絞り込んでの撮影。被写体は白く、光も強い、レンズにとっては厳しい条件だがいかがだろうか。手触りを感じさせる様な石材の細かなテクスチャーは言うに及ばず、滑らかなグラデーションで被写体の量感までしっかりと表現する。半世紀の古さを一切感じさせないその描写はさすがのものだ。
実は筆者にとって初めて購入したライカ50mmレンズがこのズミクロンであり、ボロボロの外観ながらM4にTri-Xを詰めて、このレンズだけでどこでも撮影していた事が思い出される。金属や雨の日の描写は特にすばらしく、全幅の信頼を置いていた1本であった。後ろボケの処置には少々気を使うが、フィルム派の方へもお勧めしたいレンズである。
被写体が浮かび上がる様な、説得力があるレンズだ。
西日の強いシチュエーションでもしっかりと粘る。コントラストの低さはこうした点ではメリットに変わる。
レンジファインダー機と50mmのレンズは非常に相性の良い組合わせの様に思える。50mmレンズは一眼だと少々狭く感じる事が有るが、周りの景色まで見えるレンジファインダーでは全く気にならない。むしろ風景を”切り取る”様なスナップシューティングに丁度良い焦点距離ではないだろうか。
若干硬質な、それでいて滑らかなトーンを持つ描写。それがこのレンズの持ち味の様だ。この植物の描写もまさにそういったトーンが良く出ている。
Leitzのプロダクトが1つの黄金期を迎えるのは、『Leica M3』発売の前後である。今見ても驚くほどに手のかかった製品が多いが、この『Summicron 50mm/f2.0』もそのうちの1本。真鍮と軽金属を巧みに仕上げたそのレンズはズッシリと重く、持つ喜びも感じさせるものである。今の時代にも十二分に通用するその魅力的な描写と相まって、これからも活躍していく事だろう。
Photo by MAP CAMERA Staff