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LEICA SUMMICRON L50mm F2(沈胴)トリウムレンズ
2025年02月20日
50mmLeica Boutique 12th AnniversaryLeica M11PREMIUM COLLECTIONSummicron
「Leica Boutique MapCamera Shinjuku」はおかげさまで本日、2025年2月20日に12周年を迎えました。これを記念して 12th Anniversary期間中は希少価値の高い「PREMIUM COLLECTION」の掲載を強化しております。今回の「Kasyapa for LEICA」では特別編としてPREMIUM COLLECTIONの新着商品の中からピックアップしたものをご紹介。年月とともに進化を続けるカメラボディと往年の銘レンズとの組み合わせはその度に私たちに新しい景色を見せてくれます。ぜひお楽しみください。
コンパクトなサイズ感と優れた描写性能で人気の開放F値2.0のズミクロンレンズ。標準画角の50mmズミクロンはライカの中で最も定番のレンズと言っても過言ではないのでしょうか。昨年末にも30年間変わらない現行レンズとして「ズミクロン M50mm F2.0 4th」を紹介いたしましたが、今回はそのレンズの原点とも言うべき、『ズミクロン L50mm F2(沈胴)トリウムレンズ』の描写をご覧いただこうと思います。
1951年から製造が始まったズミクロン50mmですが、51年から52年に製造された最初期のレンズにだけガラスに酸化トリウムが加えられていたことで「トリウムレンズ」と呼ばれています。酸化トリウムをレンズに使うことで屈折率が上がり美しい描写力を手に入れた本レンズでしたが、経年変化でレンズが黄色く変色してしまうことが分かるとトリウムは使われなくなり酸化ランタンへ変更されてしまいます。この事からも本レンズがとても希少なレンズと言うことが分かりますが、代用品のランタンよりトリウムの方が良く写ったという声もあったとかで、更に付加価値が付く商品となっているのです。
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登場から70年以上経過しているだけあって今回使用した個体もガラス面が黄色く変色していました。書き出されたRAWデータを見ても若干黄色に寄っている感じで、どことなくノスタルジックな写りとなりました。デジタルカメラの場合、色温度の調整で如何様にも調整できますが、今回は経年変化したトリウムレンズらしさを感じていただくためモノクロカットを除き写真は未現像のRAWデータで紹介させていただきます。
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絞り開放での写真では若干周辺の甘さと減光が感じられましたが、少し絞る事でこれらはすぐに改善します。高台から見下ろした風景も細かく解像しており高精細カメラの性能をフルに活かすことができました。レンズの古さを感じさせない基本性能の高さにライカレンズの凄さを感じます。
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寒い日が続いていますが早くも色とりどりのチューリップが沢山咲いていました。色の強い被写体だと黄色被りはさほど気にならず、むしろ季節が数ヶ月進んだかのような暖かさのようなものを感じます。
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海辺の店先では寒い季節でもアロハシャツが並んでいて驚きました。こちらも少し温かな雰囲気になるかと思いシャッターを切ってみると今度はビンテージ感が強調される仕上がりになりました。単純な色被りと思っていましたが被写体によって雰囲気が変わるとは想像できず嬉しい誤算となりました。
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LED照明の光はどことなく冷たい感じがしますが、本レンズならではの効果で温かみがある仕上がりになりました。
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暖色系の灯りとは相性がよく雰囲気よく仕上げてくれます。
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絞り開放での背景ボケは周辺に向かうにつれ流れるような感じに。玉ボケは輪郭に縁が出ていかにもオールドレンズと言った写りです。それでいて絞ると雰囲気がガラッと変わるのがオールドレンズの楽しいところ。自分好みのF値を探すのも一興です。
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かつてモノクロ写真のコントラストを調整するためにカラーフィルターなるものが販売されていました。黄色く変色したレンズなら同様の効果が得られるかもと思い、カメラのフィルムモードをモノクロHCに変えて撮影してみました。こちらはJPEG画像をそのまま掲載しています。暗部がより引き締まるHCモードに、コントラスト強化のイエローフィルター的なレンズの変色が加わりかなり重厚な仕上がりとなりました。
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龍のオブジェを見上げながら撮影しました。逆光のためこちらも影が強めに描かれていますが、カメラの広いダイナミックレンジのおかげで暗部の凹凸もしっかり確認することができました。普段あまりモノクロ写真を撮らない筆者ですが、これはハマりそうな気がします。
黄色いスパイスがクセになる
トリウムは放射性物質を発することから別名「放射能ズミクロン」とも呼ばれています。私もその名を聞いた時は少し驚きましたが普通に撮影を楽しむ分には無害なのでご安心を。そもそもフィルムカメラの時代の代物、放射線による影響があったらフィルムが感光してしまいますから。
描写は絞り開放では柔さを見せつつも、絞ると隅々まで細かく捉える高い解像力を見せてくれました。決して最新レンズにありがちなシャープ過ぎる写りではなくバランスの良い、目に優しい写りをするレンズと言った感じです。放射線は出てますが…。変色による黄色被りも、本記事ではその特徴をご覧いただくためあえて残しましたが、デジタルカメラなら簡単に補正できますし、むしろ温かみやノスタルジックさを加える良いスパイスになりました。モノクロならコントラストアップにも打って付けです。ぜひお試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff