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CANON (L) 35mm F1.5
2025年02月26日
35mmL39 screwLeica Boutique 12th AnniversaryLeica M11PREMIUM COLLECTION
「Leica Boutique MapCamera Shinjuku」はおかげさまで2025年2月20日に12周年を迎えました。これを記念して 12th Anniversary期間中は希少価値の高い「PREMIUM COLLECTION」の掲載を強化しております。今回の「Kasyapa for LEICA」では特別編としてPREMIUM COLLECTIONの新着商品の中からピックアップしたものをご紹介。年月とともに進化を続けるカメラボディと往年の銘レンズとの組み合わせはその度に私たちに新しい景色を見せてくれます。ぜひお楽しみください。
今回ご紹介する『CANON (L) 35mm F1.5』というレンズは1958年に発売されました。現在においても有名な「Leica ズミルックス M35mm F1.4 1stモデル」の登場が1961年であるため、その3年も前にこのクラスのレンズが国内で誕生したというのはたいへん誇らしいことです。
現在35mm F1.4クラスのレンズは数多く存在しますが、当時35mmは広角レンズという位置づけ、なおかつフィルム全盛期であるため明るいF値のレンズがハイスピードレンズとして重宝されていました。
各国の先陣を切って製造された往年の名玉の描写をお楽しみいただければと思います。
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60年以上前のレンズということもあり、球面収差による周辺部の甘さや滲みを感じますが中心部のピント面の繊細な描写には目を見張るものがあります。左右のカーテンと真ん中のカーテンを比べるとその違いがよくわかります。しかし全く不自然な感じがしないところがこのレンズならでは。当時の最新鋭を尽くして誕生したレンズの写りを楽しむことができます。
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少し曇ったガラスに陽の光にあたった柔らかい描写を狙ってみました。完全な逆光ではなければ絶妙な滲みで優しい雰囲気を醸し出してくれます。右側のカーテンタッセルのとろける描写を見たときにはこのレンズの虜になりました。真ん中に主題を置きその周辺の滲みでハーモニーを奏でて1枚の作品とする、使い手の工夫次第で非常に面白い使い方ができるレンズだと感じました。
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椿と山茶花は非常に似ており、いつもこれはどちらだったかと悩むのですが、散り際に花ごとポロっと落ちてあまり香りがないのが椿、花弁が一枚ずつ散りよく香るのが山茶花とのこと、一時は似ていてもそれを過ぎれば正反対になってしまう。とても面白い関係の花だと思います。もうこの写真から思いだすことは難しいですが陽に照らされて透き通るようなピンク色の花は非常に美しいと感じます。
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ちょうど良い塩梅の雲に太陽が隠れてくれたため絶好の撮影チャンス、そしてタイミングよく噴水を見かけたため水しぶきを狙って一枚。今回は少し絞ってF2.8で撮影しました。このような条件であればかなりクリアな描写も得ることができます。
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対して太陽が再び顔を出したところ、水面に反射した光のきらめきを撮影。F値を開放に戻しハイライトの滲みを全開にしてみました。柔らかなファンタジーのような雰囲気を感じさせます。天候やその場の環境、絞りなどの要素によって使うたびに表情をころころと変える魅力的なレンズだと感じます。
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みなとみらいに来たらつい見上げてしまう大きな観覧車、近隣にお住まいの方は思い出深い方も多いかもしれません。この柔らかなレンズで撮影するとあの頃の思い出が幻想だったかのように思えてくるかもしれません。
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このレンズが登場したころはモノクロフィルム全盛期ということで、実際のフィルムとのプロセスは違いますが、M11-Pのフィルムモード モノクロHCで撮影も行いました。
シンプルだからこそ画角内の引き算が難しく、またそこが面白いモノクロ撮影、優しい描写が程よい明暗の諧調を表現してくれます。
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絞ってパンフォーカスを狙おうとしていたところ、まさかの横切りが発生。うまく前ボケのシルエットになりストリートスナップならではの1枚に仕上がりました。
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拓けた場所ではやはり周辺減光が目立ちますがモノクロ撮影ではこれも味のようにも感じます。なんとなく真ん中へ視線を導いてくれるような不思議な感覚です。
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横並びで話すか、対面して話すか、話題によってどちらが話しやすいかは変わりますが筆者は横に並んで話すのが好きです。初めて会うときも同じ景色を見ながら話をすると次第に打ち解けてくるように感じます。カメラやレンズも使ううちに使い手の目と同じ景色を写すことでだんだんと手になじんでいき、すてきな写真を得るということにつながると思っています。あくまでも筆者のジンクスですが、特定のレンズを使っているときれいな光景やおもしろい瞬間に出会いやすいと感じることがあります。きっとそれはレンズとの相互理解が深まった証拠です。そのように感じるまで長くメンテナンスができ使い込むことができるのが電子部品を持たないマニュアルレンズの良さでもあると思います。
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日も暮れてきました。みなとみらいの夜景、そして道を照らす電灯を撮影しました。周辺部の点光源に対してはかなり流れるような描写でファンタジックな雰囲気になりました。
夜を見通す国産の銘玉
明るいレンズを作るということはまさに暗闇に立ち向かうということであったと思います。設計の難しさや開発競争、設計者の多くは苦戦を強いられたに違いありません。F1.4やF1.8という魅力的なレンズが溢れる現代ですが先人たちによって切り拓かれた道の上に成り立っていることを忘れてはいけません。その礎となる歴史的なこの1本は描写では語れない魅力があると思います。
今回は主に開放の描写を多く撮影してみましたが、中心部の端正な写りと周辺分の柔らかさが病みつきになるレンズでした。様々な情景でころころと表情を変える魅惑の1本、ぜひお手元でお楽しみください。
Photo by MAP CAMERA Staff