Leicaの沈胴Elmarと聞くと、多くの人が思い浮かべるのはf2.8、もしくはf3.5の50mmであろう。しかしながら、今回ご紹介するのは90mm/f4の沈胴Elmarだ。50mmと比べてしまえば目立たない存在だが、実はこの90mmは伝統工芸品とも呼べる逸品になっている。
レンジファインダー機で焦点距離90mmとなれば、画角は水平23度、垂直で15度とかなり狭くなる。当然、35mmや50mmと比較すれば出番は少ないのかもしれない。しかしながらこのレンズには、「これぞLeitz!」と人々を唸らせる高い美意識を垣間見ることが出来る。
レンズ構成自体はLマウントとほぼ同様でも、レンズコーティングと鏡胴は進化を遂げている。
先に述べた伝統工芸品としての特筆事項は、作りの良さに他ならない。鏡胴の貼り革や、凝った作りの無限遠ロック機構などからは、当時のLeitz社を取り巻く環境と強い意気込みを感じることが出来る。
製造から半世紀近いレンズながら、階調表現には目を見張るものがある。
開放での撮影だが、描写はシャープで、色調とともに落ち着いた空間を演出してくれる。
こちらも開放にて、90mmという焦点距離もあり被写界深度は浅め。
高めの色温度と柔らかいボケ味が良い相乗効果をもたらしてくれた。
沈胴状態では標準レンズと変わらないサイズになるのだから驚く。 携帯性に優れたLEICAを代表する望遠レンズとして、長年にわたって造り続けられたレンズである。内外を問わず、その堅実な描写性能は写真家達の片腕として活躍し続けた。
そして、Leitz社が自信を持って作りあげた銘玉は今でもその高い描写とともに、私たちのパートナーとして活躍してくれる事だろう。
Photo by MAP CAMERA Staff