マップカメラはお陰様で2024年8月13日に創業30周年を迎えます。
これを記念して創業祭期間中は希少価値の高い商品「PREMIUM COLLECTION」の掲載を強化しています。
今回の「Kasyapa for LEICA」では特別編として近日掲載予定の商品から特に珍しい商品を一足早くご紹介。今回逃したら次いつお目にかかれるか分からない商品です。レア商品の描写力をぜひご覧ください。
FUJIFILMレンズの代名詞であるフジノンが生まれる少し前、“クリスター”というレンズがごく少数存在していました。今回ご紹介するのはそのクリスターを冠するレンズの中で最広角である『Cristar (L) 35mm F3.5』です。他にも50mm、85mm、135mmのラインナップが存在するとされていますが、35mmは特に資料が少ないことから、まさに幻と呼ばれるレンズ。戦後日本の技術力を感じる描写をお楽しみください。
LeicaズマロンL35mm前期を思わせる鏡胴から描かれる写真は、圧倒的なコントラストを伴う正確さ。そこからピントアウトするにしたがって徐々に綻んでいく様は70年以上前のレンズとは到底思えないほど美しい移ろいを見せます。ライツがエルマーで実現した35mmは、テッサーに比べて贅沢にレンズを用いた4群6枚ガウスタイプであるズマロンが圧倒的に優勢。それに近い構成を元にしたレンズだと仮定するならば頷ける描写です。
絞り込んで木漏れ日を見上げた光景、拡大するとその描写の緻密さに感服します。周辺に倍率色収差と、心地よいと思える程度のハイライト滲みを残すのみであとは完ぺきとも言っていい写り。重箱の隅をつつくような評価をしなければ全体として鑑賞するには十二分と言えるでしょう。
最短焦点距離である1mにピントを合わせて流れ出る湧水を捉えました。開放値が明るくなく、かつ、寄ってボケを演出することも叶わないスペックですが、前ボケを含めた画作りは予想以上のもの。写真右側で見られる光の滲んだ様子も良いアクセントを与えているように思います。
とても小さいレンズなので軽快なスナップシューターとしても活躍します。しかし絞りリングにクリックが無いのでふいに撮影しようとすると勝手に絞られていることが多くありました。良い方向に考えれば、EVFや液晶画面でライブビュー確認できるデジタルカメラにとっては無段階絞りのレンズということになるので、得られる被写界深度だけに集中して撮影ができるとも言えます。
逆光耐性には驚かされました。戦後すぐのレンズが故、まだ未発達なコーティングから個性的なフレアやゴーストを期待したのですが、様々な角度に動かしてもそれらしい影響を確認することはほぼできず。正午を過ぎ、やや西に傾きつつある夏の日差しにも全くもって屈しません。レンズ同士の貼り合わせや内面反射にも気を遣って作られていることが推察されます。
まぶしさに目を眩ませながら咄嗟にレンズを向けた一枚です。
ヘリコイドを無限遠からわずかに戻した状態、ほぼ勘任せで撮影したにも関わらず厚い被写界深度のおかげで画とすることができました。現代的な大きいボケ感やクセ玉と呼ばれる個性的なオールドレンズのいずれにも当てはまらない、実直な魅力を感じるレンズです。
底力のあるレンズなので、M11のモノクロHC(ハイコントラスト)で都市部の硬さと柔らかさを探して写してみました。水面を写した写真の階調もさることながら人工物の硬質な存在感も目を見張るものがあります。
平面的な被写体はお手の物。開放での撮影でしたが周辺減光のみしっかり出るものの歪みや嫌な収差はどこにも見当たりません。
“FUJINON”への布石
1954年11月『FUJINON L50mmF1.2』が発売となりました。そして70年を経過した現在でもなおXマウント、そしてGFXマウントのレンズは全てフジノン。ここ数年でまたもう一段急成長を遂げたFUJIFILMのカメラシリーズの人気は常にフジノンに支えられてきたことになります。ここまでがよく知られた歴史。その先にもう数年目線を送れば『FUJIFILM Cristar (L) 35mm F3.5』がいます。およそ70と数年を経て現存する本レンズ、描写はまるでタイムスリップしてきたかのよう。現代FUJIFILMの威光を象徴するかのようなレンズでした。
Photo by MAP CAMERA Staff