
1987年に誕生した「Leica APO-MACRO-ELMARIT-R 100mm F2.8」。光学機器開発におけるクラフツマンシップの金字塔とも称されるこの名レンズへのオマージュとして誕生したのが、ライカSLシステム用レンズ『 Leica APO-MACRO-ELMARIT-SL 100mm F2.8 』です。オリジナルモデルの思想を受け継ぎ、アポクロマート補正を採用することで、画面周辺部に至るまで極めて高い描写性能を追求。最大撮影倍率1:1、最短撮影距離30cmに対応し、肉眼では見過ごしてしまいそうな微細なディテールまで鮮明に描き出す、本格的なマクロレンズです。さらに、100mm F2.8の中望遠レンズとして、ポートレートやスナップ撮影でもその実力を発揮。9枚羽根の絞りと光学系の組み合わせによって生み出される、なめらかで美しいボケ味も大きな魅力です。Lマウントを採用した堅牢なオールメタルボディは、全長137.6mm、同梱のレンズフードを含めた重量は862g。フロントレンズには撥水・防汚性を高めるAquaDuraコーティングが施され、フィルター径にはE67を採用しています。今回は実際に本レンズを持ち出し、身近な被写体へのクローズアップをはじめ、街中のスナップ、遠景、夜景までさまざまなシーンを撮影してきました。

まずは最短撮影距離付近まで寄り、振り子時計にあしらわれたモチーフをクローズアップ。細かな凹凸や年月を感じさせる金属表面の質感まで実に緻密です。ピントを置いた部分は鋭く立ち上がりながら、その前後は滑らかにほどけていきます。レンズに手振れ補正は付いていませんが、ボディ内手振れ補正だけでブレることなく撮影することが出来ました。

開放F2.8で、窓辺のタッセルを撮影しました。編み込まれた糸の一本一本や、異なる素材が織り成す細かな質感まで丁寧に描き分けています。陰影の深い場面ですが、暗部がただ沈み込むことなく、紫や金色の繊細な色合いもしっかりと残りました。開放絞りからこれだけ細部を描き切るあたりに、「APO」レンズとしての解像性能の高さを感じます。

葉の上に現れた小さな被写体へ、レンズを向けました。こうした撮影では、わずかな動きにも素早く反応できるAF性能が頼りになります。狙った被写体をしっかりと捉え、その一方で背景は柔らかく溶けるようなボケに。小さな主役を印象的に浮かび上がらせてくれました。

本の表紙に残る擦れや箔押しの文字、紙や布の質感まで細やかに描き出しています。さらに目を引くのが、テーブルへ淡く映り込んだ本の姿。直接光を受けた部分と反射部分、それぞれ異なる質感を描き分けており、光沢のあるものとマットなもの、それぞれを豊かな表現を見せてくれました。

開放F2.8で白い花々を撮影しました。花びらの薄さや柔らかな質感を残しつつ、ピントを合わせた花はすっと浮かび上がっています。背景には大小さまざまな丸ボケが広がり、鋭いピント面と穏やかなボケ、その両方を一枚の中で表現しています。

今度は少し距離を取り、部屋越しに奥の空間を狙いました。100mmという焦点距離によって奥の窓や家具がほどよく引き寄せられ、室内の空間が圧縮されています。F4.5まで絞ることで、手前の暗部から窓の外の緑まで画面全体が引き締まりました。マクロだけではなく、中望遠レンズとして構図を切り取る楽しさもしっかり味わえる一本です。

ぐっと近づいて、織物の網目をクローズアップ。ピント面の糸の一本一本を明瞭に描いてくれました。肉眼ではひとつの面として捉えてしまう素材も、近づいてみると無数の糸が複雑に交差していることが分かります。

金属表面に落ちる器の緑色の光をクローズアップしました。滑らかに見える金属にも、拡大してみると細かな凹凸が存在します。硬質な素材感と、表面をなぞるように広がる光のグラデーションをしっかりと描写。シャープでありながら決して平面的にならず、素材そのものの立体感が伝わってきます。

鮮やかな赤い花を、少し絞ったF4で俯瞰気味に捉えました。赤は階調が失われやすい色ですが、花びら一枚一枚の重なりや陰影がしっかりと残されています。色飛びしそうな場面でも細部まで自然に描き分けてくれました。

最短撮影距離付近から撮影。細い茎や先端についた小さな雫に鋭くピントが立ち上がる一方、その前後は大きく柔らかなボケへと変化しています。とりわけ印象的なのは背景の描写。輪郭を完全に消してしまうのではなく、色や玉ボケで存在を残しつつ、主役を引き立ててくれています。

モノクロで室内の植物を撮影しました。窓から差し込む光、白い壁、植物の葉、そしてガラスの花器。それぞれ異なる明るさや質感を持ちながら、階調が途切れることなく自然につながっています。モノクロにすることで、光と陰影の描き分けがより分かりやすく感じられました。

マクロレンズというと静物撮影を想像しがちですが、通常の中望遠レンズとして使った際のAFも軽快です。動く被写体に対しても狙った位置へ素早くピントが合い、何気ない瞬間を逃さず切り取ることができました。100mmらしい適度な距離感もあり、街中のスナップでも意外なほど扱いやすく感じます。

開放F2.8のまま、遠くの街並みと港を撮影しました。接写で見せた緻密さは、遠景でも変わりません。建物や船、遠くに並ぶ構造物まで細部がしっかりと描かれており、開放絞りでありながら画面全体に高い解像感があります。マクロ域から無限遠まで、この一本だけで幅広い撮影を楽しめることを実感できました。

少し絞り込み、暮れ始めた街のネオンサインを撮影しました。絞ることで赤いネオンや庇、周囲の木々といった細かな要素も混ざり合うことなく、それぞれが明瞭に分離されています。

ガラス越しに見えた被写体を、開放F2.8で撮影。奥のストローが入った缶にピントを合わせてみると、手前のアヒルが思ったよりもユニークな表現になったのであえてこのピント位置にしてみました。中望遠らしいボケを活かした撮影も楽しめます。

続いて、メリーゴーラウンドの一部を開放F2.8で切り取りました。ピントを置いた部分の質感はしっかりと残しつつ、前後の光は大きく柔らかなボケへ。点光源が重なる華やかな場面でも、主役を自然に浮かび上がらせてくれます。

夜のメリーゴーラウンドを少し離れた場所から撮影しました。暗闇の中に浮かび上がる無数の電球をひとつひとつ丁寧に描きながら、建物の輪郭や周囲の暗部もしっかりと残しています。ISO1600という高感度域でも、光の滲みや色の濁りを感じさせず、夜の空気感を自然に表現してくれました。マクロという枠に留まらず、100mmの中望遠レンズとして夜景まで楽しめる。撮影を重ねるほど、本レンズの懐の深さを感じます。

100mmマクロが描く、緻密で豊かな世界
『 Leica APO-MACRO-ELMARIT-SL 100mm F2.8 』を実際に使ってみて、まず強く印象に残ったのは、マクロレンズならではの緻密な描写力です。最大撮影倍率1:1、最短撮影距離30cmという本格的なマクロ性能を備え、被写体へぐっと近づけば、微細なディテールまで鮮明に描き出します。鋭く立ち上がるピント面と、その前後へ滑らかにほどけていくボケ。さらに、素材の質感や光の微妙な変化まで丁寧に描き分ける、豊かな階調表現も印象的でした。一方で、100mm F2.8の中望遠レンズとしての扱いやすさも、本レンズの大きな魅力です。接写だけにとどまらず、スナップや遠景、夜景まで、撮影距離を変えるたびに異なる表情を見せてくれました。被写体へ近づき、肉眼では見えない世界を探す楽しさ。少し距離を取り、100mmならではの視点で景色を切り取る楽しさ。そのどちらも一本で味わえる『Leica APO-MACRO-ELMARIT-SL 100mm F2.8』は、ライカSLユーザーならぜひ一度手に取って、その描写を体感してほしい一本です。
Photo by MAP CAMERA Staff






