【特別版】 映像作家、写真家:島田大介 『新感覚』
2024年02月01日
Leica Boutique 11th AnniversaryLeica SL2Leica Special Contents写真家
写真は絵を描くことに似ている気がする。
油絵なのか水彩画なのかは、フィルムかデジタル。レンズの好みは筆の好みだろうか。
映像は音楽を作るのに似ている気がする。
時間軸の中に抑揚などの構成を考え、カメラの動きや光の動きも感情の起伏とし、セリフは歌のようである。
映像作品を作る時は、写真の時とは感覚的に考え方が違ったりする。
映像制作ではフィクションを演出する事が多いから、写真は主にスナップを撮るのが好きだ。一瞬の表情や光を捉えた時の偶然性などが写真の好きなところなのだが、レンズを通して結像したものが紙に現像され、物体として再び存在させるそのプロセスは、何故か魔法のようで妙に好きでもある。これも映像には無い魅力の一つだと感じる。
僕が最初に買ったライカはM4で、無理して買ったズミクロンを初めて使ったとき、シャープだけど決して硬くはない。単純に柔らかいのとも違う。という印象を受けた。なんとも上品なライカの解像力にそこからすっかりハマってしまった。
まだミラーレスカメラがない時代、ライカレンズを映像にも使えないものかと考えていた。そんなとき、シネマトグラファーが持ってきたのがRレンズだった。オールドレンズ特有のレンズフレアはもちろん、解像感はきっちりとライカレンズであり、カラーグレーディング向きでどんな環境でも破綻せずきちんと答えてくれることに甚く感動した。そんな経験から一気にRレンズを好むようになった。
今回撮影した時間は日没間近の状況だったが、冬の空の綺麗なグラデーションが出ていて意図した空気感をきっちり表現できており、Leica SL2とRレンズはムービーとスチールを両方撮影していて違和感なく扱える魅力があると思う。
団地や錆びた歩道橋が好きでよく映像作品のロケーションに選んでいるが、なんというかその月日がもたらす刹那なものだけで自然にストーリーを思い浮かべさせ、鈍い光の反射が寂しげな表情を感じさせてくれる。
多くを語らなくてもそこに意図を表現できる、そんな魅力があると思う。
写真・文 : 島田 大介