数多くのデジタルカメラの中でも今回ご紹介するLeica S(Typ007)とELMARIT-S 30mm F2.8 ASPH.は“特別な存在”と呼んでいいかもしれません。通常35mm判フルサイズ(ライカ判)が一つの指標となり、カメラの性能や魅力が語られますが、本機はその上をいくセンサーサイズの30×45mm(ライカプロフォーマット)を搭載したデジタル中判カメラだからです。大型CMOSセンサーが生み出すリッチな色彩表現と階調表現に加え、専用設計されたライカレンズが圧倒的な解像力を生み出してくれるライカSシステム。Mとは違った凄みのある描写をお楽しみください。
まずは巨大なステンドグラスの壁を撮影したカットから。色鮮やかに輝くガラスの描写も見事ですが、右下の螺旋階段にも注目です。通常なら黒つぶれしてしまいそうなシャドウ部も階調豊かに捉えていますので、黒の中にも質感表現と色が写し出されているのがお分かりになるかと思います。本機のポテンシャルの高さがうかがえる1枚です。
光と影のコントラストが美しかったので、何気なくシャッターを切ったカットなのですが、そのダイナミックレンジの広さに驚きました。
ELMARIT-S 30mm F2.8 ASPH.はF5.6まで絞れば十分すぎるほどの解像力を見せてくれます。少しハイキーな露出でバラの庭園を撮影したのですが、ハイライトの粘りも素晴らしいですね。光に反射する葉もしっかりと写しだしているのがわかります。
画素数という数値だけみれば、それを超えるスペックの35mm判フルサイズセンサーも存在します。しかし、この解像感、色彩表現、ダイナミックレンジの余裕ある画作りは中判デジタル機ならではと言っていいでしょう、写真に内在する情報量と質量が大きく違うように感じます。そしてその画質を生み出しているのは、今回使用したレンズ『エルマリート S 30mm F2.8 ASPH.』もあってのこと。換算24mm相当になる本レンズは、圧倒的な解像力と表現力がありながらもザラっとした固さがなく、中判レンズでありながら実にライカらしい描写を見せてくれます。
メタセコイアの木を見上げてでのカット。これもすごい解像力ですね、細い枝ぶりや葉を緻密に描写しています。
子供がジャンプした瞬間をスナップ。Leica S(Typ007)はレスポンスがいいのでこういう使い方もできます。
中判レンズは絞って使うものという考えだったのですが、開放F2.8からこれほどの解像力があるとは驚きました。9群13枚のレンズのうち、5枚が異常部分分散ガラス、そのうち3枚は低分散性を持つフローライトレンズという贅沢な光学硝材を使用しており、超高屈折率のレンズ3枚と非球面レンズ2枚も採用することで、色収差と単色収差を補正しています。
不思議な形をしたジャングルジムを下から写したカット。真っ青な空の色を印象的に写し出してくれました。
『エルマリート S 30mm F2.8 ASPH.』は高い解像性能だけでなく、美しいボケ味も見せてくれるレンズです。また、大口径の広角レンズながら周辺減光量が非常に少ないのも特徴ですね。本レンズの性能の高さがうかがえる一枚です。
最後の写真は拡大画像サイズを縮小していませんで、ぜひ拡大してご覧ください。
月が光り出す時間帯に撮影したカットなのですが、ススキの平原だけでなく、奥の裾野に茂る木々まで鮮明に写し出している驚きの描写力です。
『Leica (ライカ) S(Typ007)』と『エルマリート S 30mm F2.8 ASPH.』の組み合わせは重量2㎏を超えるカメラではありますが、これが中判デジタルカメラのシステムと考えると非常にコンパクトと言っていいかもしれません。フルサイズ一眼レフと同じ感覚で操作ができ、取り回しも良いですから、中判カメラと身構えることなく撮影することができました。また今回の写真データを見ていただくとわかるのですが、低速シャッターで撮影した写真が多くありました。通常の中判カメラならブレてしまうような状況でも本機はミラーショックが少ないので、手持ちでの撮影でも安定した画を出してくれます。『Leica (ライカ) S(Typ007)』は、スタジオ撮影のみならず、様々なフィールドで活躍してくれる一台です。
Photo by MAP CAMERA Staff