前回の『ELMARIT-S 30mm F2.8 ASPH.』に続き、中判デジタル一眼レフである『LEICA S(Typ007)』を使用してお届けするフォトプレビュー第2弾。今回はライカプロフォーマットのスタンダードレンズ『SUMMARIT-S 70mm F2.5 ASPH.』をご紹介しましょう。35mm判換算で約56mmの画角を持つ本レンズは、一般的な中判レンズのF2.8より少し明るいF2.5。6群8枚のレンズ構成に非球面ガラスを採用し、全域で高い解像力を発揮するレンズです。
その写り味はシャドウからハイライトまでの階調表現が非常にリッチなのが特徴で、一見コントラストが高い画に見えても、しっかりと写真の中にディテールと質感を捉えてくれるのがわかります。
鏡の前に置かれた花瓶を近接撮影。最短撮影距離は50cmという短さで、35mm判の50mmとワーキングディスタンスがほとんど変わりません。また、フローティング機構を採用していますから、近接時でも開放からピント面の解像度は高く、立体感のある描写を楽しめます。しっとりとしたボケ味も相まって、上品さを感じる写り味ですね。
豊かな階調表現を生かしてモノクローム現像。被写体に応じて自由度の高い作品づくりができるのも中判センサーならではの醍醐味です。
「白」の中にも無数の色があります。ライカS(Typ007)とズマリットS 70mm F2.5の組み合わせは淡く透明感のある白の違いまでも写し出し、表現してくれます。
また、同じ光学設計でCS(セントラルシャッター)モデル『SUMMARIT-S 70mm F2.5 ASPH.CS』も発売しています。そちらのモデルを選べば高速シンクロ時の撮影にも対応する事ができ、1/1000秒のセントラルシャッターと1/4000秒のフォーカルプレーンシャッターを同じシステムで使い分ける事が可能になります。
絞り:F2.5/ シャッタースピード:1/1500秒 / ISO:100/ 使用機材:Leica S (Typ007) + SUMMARIT-S 70mm F2.5 ASPH.
レースカーテンを開放撮影したのですが、織り込まれている糸の一本一本まで確認できる素晴らしい描写です。雰囲気もありますね。
撮影日はあいにくの空模様だったのですが、何気ないカットでも写真から感じる立体が違います。さすが中判デジタルと思える画質表現です。
まるでスポットライトを当てたようにフォーカスしたグラスだけが浮かび上がります。35mm判の明るい単焦点でも似たような表現はできますが、被写体の質量と言えばいいでしょうか、なめらかなガラスの手触りや重さまでも伝わってくるような表現は真似できないでしょう。
女性の服と木の実の赤が印象的だったので、歩きざまにスナップした一枚。カメラをウエストレベルで持ち、ノーファインダーで撮影しました。中判デジタル機でこういった撮影ができるのもライカS(Typ007)とズマリットS 70mm F2.5の組み合わせだからこそだと思います。
今回撮影に使用したライカS(Typ007)とズマリットS 70mm F2.5は、フィールドでもでも軽快に持ち歩くことができ、CSモデルを選べば屋外で大型ストロボを使用するような、様々な撮影現場で活躍のできる中判デジタル一眼レフです。現在は中判フォーマットにもミラーレス化の流れが訪れていますが、やはり光学ファインダーの見やすさは代えがたいものですね。ライカレンズを通して見えるファインダー内の世界は、まるで名作映画のワンシーンを見ているような感動を得られるはずです。
そしてズマリットS 70mm F2.5は写真にしたときに美しく見える描写と言えばいいでしょうか、解像感やレンズスペックだけでは語れない魅力ある描写をしてくれるレンズだと思います。ライカの描写を中判フォーマットで楽しめる唯一無二のカメラシステム 『ライカS』。ぜひあなたもその描写を体験してみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff