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LEICA Summar 5cm F2 (固定鏡筒・ヒョットコ ズマール)

2021年02月05日

 

絞り:F2 / シャッタースピード:1/2000秒 / ISO:100 / 使用機材:Leica M10-P + Summar 5cm F2 (固定鏡筒・ヒョットコ)

 

時折カメラ好きの中で語られる「ライカらしい描写」という言葉。今はコントラストが高くシャープな描写のレンズが多いですが、軟調の穏やかなトーンで描かれた優しい・柔らかい印象の写りがライカらしさとも言われていました。今回のレンズはその「ライカらしい描写」を楽しめる代表格『ズマール』のご紹介なのですが、最初期に生産されていた固定鏡筒のレアレンズ、通称:ヒョットコ ズマールになります。

ひょっとこ面のすぼめた口のような形からその愛称が付けられた固定鏡筒のズマール。ご存知の通りズマールといえば沈胴式を採用したレンズが一般的に知られており、その後ズミター、ズミクロンへとレンズの系譜が続いていきます。では、この固定鏡筒はいつ出たのかというと、今から88年前の1933年。ズマールが登場した初年のみ生産され、その数は2000本程度だったと言われています。

このヒョットコ ズマールにも数種類バリエーションが存在し、今回使用した鏡筒全てにニッケルメッキが施されたもの。そのほか、どのくらい作られたのか定かではないクロームメッキ仕様のもの。そしてニッケルメッキのレンズ先端に黒い塗装が施された最終型が存在しています。

 

絞り:F2 / シャッタースピード:1/500秒 / ISO:100 / 使用機材:Leica M10-P + Summar 5cm F2 (固定鏡筒・ヒョットコ)

 

描写は言わずもながらズマールそのもの。ノンコートレンズらしく柔らかなフレアが包み込み、落ち着いた彩度とコントラストが被写体をタイムスリップさせてくれるようです。

時間の止まった空の店内。室内に射し込む光の滲みが印象的です。やはり開放絞りでは全体的に柔らかい描写ですが、この柔らかな空間に惹かれてシャッターを切りました。

 

絞り:F2 / シャッタースピード:1/750秒 / ISO:100 / 使用機材:Leica M10-P + Summar 5cm F2 (固定鏡筒・ヒョットコ)

 

立体感があるという表現よりは浮遊しているといった方がしっくりくる描写になりました。少しミニチュア感が出たのは収差による影響でしょうか。どちらにせよなかなか体験したことのない写りでした。

 

絞り:F2 / シャッタースピード:1/750秒 / ISO:100 / 使用機材:Leica M10-P + Summar 5cm F2 (固定鏡筒・ヒョットコ)

 

 

絞り:F2.4 / シャッタースピード:1/500秒 / ISO:320 / 使用機材:Leica M10-P + Summar 5cm F2 (固定鏡筒・ヒョットコ)

 

薄葉紙のようなピントの薄さなのに主役に見立てた薔薇の存在は引き立っている不思議な描写です。曇天の微かな光が花びらに滲む魅惑的なカットになりました。

 

絞り:F2 / シャッタースピード:1/500秒 / ISO:250 / 使用機材:Leica M10-P + Summar 5cm F2 (固定鏡筒・ヒョットコ)

 

開放絞りで写すにはこのレンズはこの距離感がスウィートスポットでしょうか。優しい滲みは健在のまま、花びらの艶かしい曲線はしっかりと写っています。周辺部の収差に魅力さえ感じる1枚。実は1枚目のカットにハート模様のボケが出来ているのですが、ここでもハート模様のボケを発見しました。そういうレンズというわけではないのですが、偶然にも似たようなボケが生まれたので面白くなりました。

 

絞り:F2 / シャッタースピード:1/750秒 / ISO:100 / 使用機材:Leica M10-P + Summar 5cm F2 (固定鏡筒・ヒョットコ)

 

この写真のようにオールドレンズの柔らかいコントラストはその場の色を取り込んで予想外の写りをすることがあります。こういう予期せぬ偶然もオールドレンズの魅力です。

 

絞り:F2 / シャッタースピード:1/80秒 / ISO:400 / 使用機材:Leica M10-P + Summar 5cm F2 (固定鏡筒・ヒョットコ)

 

 

絞り:F4 / シャッタースピード:1/60秒 / ISO:1600 / 使用機材:Leica M10-P + Summar 5cm F2 (固定鏡筒・ヒョットコ)

 

淡いコントラストが刻々と変わっていく空のグラデーションを表現してくれました。やや真ん中のポールに合わせて絞ってみましたが周辺減光も改善され画面全体がスッキリ写りました。この時間帯に絞って撮るレンズではないと言ってしまえばそうなのですが、ピント面にもほのかに立体感を感じます。

 

絞り:F2 / シャッタースピード:1/750秒 / ISO:400 / 使用機材:Leica M10-P + Summar 5cm F2 (固定鏡筒・ヒョットコ)

 

 

絞り:F2 / シャッタースピード:1/750秒 / ISO:100 / 使用機材:Leica M10-P + Summar 5cm F2 (固定鏡筒・ヒョットコ)

 

やはりこれだけの遠景だと全体的にふんわりした写りになりますが、その優しい滲みをあえて楽しみたくなります。高解像度なレンズでは狙っても撮れないこのような写りを求めたくなってしまう気持ちは写真を撮る人たちには分かっていただけるのではないでしょうか。

 


 

 

古き良き、美しきレンズ。

ズマールの本当の描写というのはどのレンズでわかる物でしょうか。このヒョットコ型の前にも数本ズマールで撮ったことがありますが、共通する柔らかい描写はあれどどのレンズも個体差のある写り味。オールドレンズなのだから開放絞りで撮った方がいい、というのはある意味呪いのような感覚もありますが、その開放の魔力に抗うのも困難なのは事実です。少なくともこの貴重な1本の写りは、特別な出会いと思える不思議な写りを見せてもらうことが出来ました。一期一会の奇跡。数あるライカレンズの中でも指折りの鏡筒美を誇るこのレンズに巡り会い、その描写にも気に入ることがあれば、ぜひ手にしていただきたいものです。

 

Photo by MAP CAMERA Staff

 

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