
LEICA SUMMILUX M35mm F1.4 ASPHERICAL / with M EV1
2026年03月13日

今回ご紹介するレンズは「ズミルックス M35mm F1.4 ASPHERICAL (非球面2枚) *Aspherical表記」です。ズミルックスが初めて非球面レンズを採用したモデルでしたが、職人による手磨きの非球面レンズを2枚採用していたことから生産コストも高く、受注に追いつかないという理由もあり、1988年から1993年の6年の間に約4,000本のみしか生産されなかったモデルです。その希少性の高さから人気のある本レンズは、非球面を意味するASPHERICALという文字が、省略されずに記載されていることから「フルスペル」という愛称を持ちます。他にもAA(ダブルエー)、ダブルアスフェリカル、など様々な通称で呼ばれており、このレンズが多くのライカファンに愛され続けてきたことを感じます。波間に反射する光の滲みの美しさ、その手前側で星のように輝く光の粒。今回撮った中でも特に引きこまれた1枚です。プレミアムコレクションでもある銘玉を「LEICA M EV1」で撮影してきました。ぜひご覧ください。

手前側のガラス面のソフトフィルターのような効果、ハンドルに合わせたピント面からその奥、海と溶け合わさるような後ボケの美しさ、この要素が嫌だな、と思うところがない理想的な1枚です。

光も像も滲む開放絞りでの遠景描写。コントラストが低いからこそ、本来であれば白飛びして目に痛いはずの空の白も優しく写ります。遥か先にいる船のシルエットは絵画のようで、淡い色で溶け合ってしまいそうながらも水平線はしっかりと描かれています。この絶妙なトーンはRAW現像では再現不可能な気がします。

先ほどとは撮影環境が変わり、やや薄曇りの天気。陽光は射さずに雲を透過した淡い光が当たっているようなシチュエーションです。開放絞りでは愁いを帯びるかのように滲んでいたシルエットも、F2.8に絞ることでスッキリと解像してくれました。ただカリカリした硬さではなく、あくまでも自然で上品な描写。背景の黒も締まっていはいますが、しっかりと情報が残っている感じです。


この「3rd」は他の世代と比べてボケが綺麗な印象があります。綺麗という意味にもいろいろあると思いますが、線の芯が丸く柔らかいイメージがあって、個人的にはとても理想的なボケ方だったりします。少し雑ではありますが、本レンズの明るさを活かして前方を大きくボカしても嫌な印象を受けません。ピント面の立体感もしっかり出ていて、いい写りです。

このカットも同じくボケの美しさに目を惹かれました。最も前方にある灯篭の模様は溶けきっていて、後ろにいくにつれその模様が現れてきます。ピントを合わせた真ん中の灯篭はしっかりと解像してくれました。

室内に露出を合わせた場合でも屋外のハイライトが嫌な飛び方がしません。薄曇りの白い空の光が背景の樹々をグラデーションで溶かしていく描写もとても良いと思います。

F2.8での撮影。磨りガラスの凸凹をクッキリ写してくれました。光が当たったステンドグラスの発色も素晴らしく、開放絞りからの絞りによる描写の違いも、間違いなくこのレンズの個性です。


その日その時の時間帯にだけ見れる、妙に立体感がある逆光と順光が混ざり合った光。この画の何がどう好きなのかを具体的に説明するのは難しいのですが、写真に写るかどうか撮ってみるまで分からない感覚的なものを見事に拾ってくれました。自己満足の域を出ませんが、こういう感覚を共有できるレンズは撮っていて楽しくなれます。

遠景描写も絞れば現代的な性能の高さが発揮されます。オールドと現代的な描写の両方を味わうことのできる1本です。

どう撮ったって好きに写る。それが分かったら、あとは好きな光を見つけて心のままに撮るだけです。


光の筋が伸び画面中央で光の粒が滲んで輝いているさまを、ぜひ拡大してご覧ください。冒頭でも同じようなカットを撮っていますが、こちらはややアンダーな露出で捉えたもの。ハイキーで撮ってもアンダーで撮っても、その光に合った色気のある画を写してくれます。



独自の描写世界を持つ、稀有な1本
“クセ玉”として名高い球面ズミルックスをはじめ、各世代に熱心なファンが存在します。長い歴史を持つレンズですが、どの世代もキャラクターと呼べるほど個性が際立っており、そこに愛着が生まれるのでしょう。ズミルックスの話をすると皆楽しそうです。レンズの描写に何を求めるかで選ぶ世代が変わってくると思いますが、ボケに一層のこだわりを持つ方にはぜひこの「ズミルックス M35mm F1.4 ASPHERICAL (非球面2枚) *Aspherical表記」を使ってみていただきたいです。ズミルックスに歴史あり。迷ったときは先達の知恵を拝借するのが1番かと思います。ということで、あくまで1つのケースとして参考にしていただければ幸いです。
Photo by MAP CAMERA Staff




