ライカ初のレンズ交換式のAPS-Cセンサー搭載ミラーレス機『ライカTシリーズ』。ボディとあわせて高性能なTマウントレンズも発売され、今後の展開が非常に楽しみなところだ。純正Tマウントレンズの描写は過日ご覧いただいたが、今回は同時発売の『T用Mレンズアダプター』を使い、銘玉ひしめくライカのレンジファインダー用レンズ群での撮影を試みた。Tマウントレンズ群での撮影とはまた一味違った『ライカT』の楽しみ方をご提案したい。
まず撮影に用いたのは、Elmar M50mm/f2.8 2ndモデル。Elmarはライカの沈胴レンズの代表格で、戦前から名の続く由緒あるレンズの系統だ。
こちらは1995年より生産されたモデルで、レンズコーティング等はかなり新しい部類だが、外観や3群4枚の構成などは古の原形を多く留めている。
『ライカT』のセンサーはAPS-Cサイズなので、こちらのレンズでは焦点距離は75mm相当となる。
さすがは多くの写真家を唸らせた伝統の銘レンズといったところか、葉の質感や雨粒の瑞々しさを見事に表現してくれた。 実に幸先が良く、撮影を楽しむことが出来た。
続いて、撮影を行ったのはSummaronの28mm。スケールが赤いため、赤ズマロンと呼ばれている。生産本数が少ない為、Lマウントレンズの中でも人気の高いレンズだ。
28mm/f5.6というこのレンズ。『ライカT』で使うと42mm相当となり、画角的には使い易いレンズとなる。開放での柔らかい描写も面白いが、絞り込むとうってかわってシャープな写りが楽しめる。
こちらは少々意地の悪い使い方をした1枚。雲の切れ間から覗き込んだ太陽をフレーム内に入れたカットだが、予想に反してフレアやゴーストなどは発生しなかった。
これだけ写ってくれるのであれば、アダプターを介した最新ミラーレスでの撮影も存分に楽しめそうだ。
続いてはSummilux35mmの現行モデル。開放ながら描写はシャープで、質感の再現も素晴らしい。
およそ50mmの標準レンズとして使え、日頃M型ライカで使われている方々にもおススメしたいレンズの一つだ。
『ライカT』のボディと同時発売されたMアダプターTには6bitコードに対応している。このSummiluxのような6bitコード対応レンズであれば、ボディ側でレンズを認識してくれることも大きな利点だ。
かなり暗い屋内でのワンシーン、このレンズが持つf1.4という明るさと、高感度に強い『ライカT』の組み合わせの前には、光量が少ない環境であっても心配は無用だった。
こうしたボディ性能の高さもまた、アダプターでの撮影には重要である。
絞り:F2.0 / シャッタースピード:1/60秒 / ISO:400 / 使用機材:Leica T +Summicrom M50mm/f2.0 +M-Adapter-T
最後はLマウント・沈胴タイプのSummicron 50mm。酸化トリウムを用いたガラスを使い、経年によって黄色く光るコーティングが特徴の一本だ。
かつて空気さえも写るといわれた銘玉だが、その性能は今もなお色あせない。
現行品にはない発色や柔らかいボケは、まさにアダプター撮影の醍醐味といってよいだろう。
ライカには古いものも合わせると非常に多くの種類のレンズが存在している。 今回の撮影では4本のレンズを選んだが、これら以外にもそれぞれのレンズが持つ特性を味わうことが可能なアダプターでの撮影は、やはり奥が深い。
タッチパネルや、ストラップ取り付けにEasy-Clickシステムと呼ばれる新規格を採用するなど、見所の多い『ライカT』。
新発売のレンズ群とともに、既存のMマウントやLマウントのレンズと組み合わせることによって発揮される、秘められたポテンシャルはまだまだ計り知れない。
Photo by MAP CAMERA Staff