
LEICA NOCTILUX M 35mm F1.2 ASPH. 11635
2026年02月20日

今回ご紹介するのはノクティルックス史上、初となる焦点距離35mmの『 LEICA NOCTILUX M 35mm F1.2 ASPH. 11635 』です。レンズ構成は5群10枚。精密ガラス成形(Precision Glass Molding:PGM)技術により、1mmあたりに許容される誤差は最大3ナノメートルまでという高精度をもって製造された最高品質の非球面レンズを3枚採用し、50.2mmの長さに416gという非常にコンパクトなサイズに最高の性能を詰め込んだレンズです。35mmというやや広角の画角に、僅かな光で成果を得るノクティルックスは光量のない室内や夜間でも撮影が期待できます。また最短撮影距離は50cm、ウェッツラーで手作業により仕上げられ機構は、精密なマニュアルフォーカスが可能とのこと。「Made in Germany」の最高品質により実現した新たなノクティルックス『 LEICA NOCTILUX M 35mm F1.2 ASPH. 11635 』。今回は極薄であろうピントの真価を見るために「M EV1」と組み合わせて撮影してきました。ぜひご覧ください。
さっそくノクティルックス史上初となる最短撮影距離50cmでのカットをご紹介いたします。棚の中の置時計ですが、すぐ後ろが壁になっていてこれ以上下がれないような状況でも撮れたり、室内がそこまで明るいわけではない中で、わずかな光を捉え、しっかりと写してくれています。時計の文字盤に置いたピントのシャープさ。手前のガラス枠や映り込みのボケや色乗りも見事で、開放絞り最短撮影距離でここまでのクオリティの高い画を見せてくれたことに驚きました。

開放絞りから中景にある木の葉の1本1本をシャープに写してくれます。直接的に陽射しを取り込んだわけではありませんが、やや逆光気味のシチュエーションでもフレアやゴーストが出てくるような予兆はありません。手前側の大きなボケは思っていた以上に素直に出てくれましたし、背景もたっぷりボケてくれたおかげで立体感のある描写が出来ました。35mmという準広角ながら前後のボケも活かした撮影が楽しめます。

手前から3〜4本目のリブにピントを合わせました。キレのいいピント面から、その手前、そして奥へと続くリブが綺麗にボケで溶けていきます。こういう場合、手前側のボケがざわついてしまいそうなのですが、そんなこともなく優しくとろけるような描写になりました。最初は絞り込んで被写界深度の深さを見るのが目的だったのですが、同じ形状の被写体が並んでいる中を、開放絞りの薄いピント面で掴む難しさを撮れるのが面白く、開放絞りのカットのほうを採用しました。「M EV1」のEVFがあってこそのチャレンジです。

このカットもほぼ最短撮影距離での撮影です。ピントを合わせた紫の花の花脈まで写っていることも凄いですが、何よりも特徴的なのは前ボケになっている黄金色の植物。レンズ紹介にもある「ビロードのように滑らかなボケ」を見事に再現してくれています。

今回紹介しているカットの中からこの1枚だけRAW(DNG)データから現像しています。ハイライト部を調整したので少しHDR風な仕上がりになっていますがほぼ真っ白だった空も戻すことが出来ました。F2.8で前中央のグラス(植物)にピントを合わせていますが、のっぺりと平坦な描写になることなく、素晴らしい立体感で前後にある被写体との距離感が伝わってきます。開放絞りと比べて周辺減光も改善され画面全体をスッキリと見せてくれました。

カーテンの中央、一番手前側にある折り目にピントを合わせていますが、浮き出るような立体感です。さらに写真を拡大してみるとレースカーテンの編み目までしっかりと写っていることが分かります。ピント面の解像力にボケの美しさ、両方を兼ね備えたレンズだということが分かります。

「P」「A」あたりにピントが合っていますが、非常にシャープな写りです。周辺減光がある、という認識があるのですが、それを納得させるカットがなかなか撮れずにここまで来てしまいました。つまりいくつかの条件を重ねない限りは、周辺減光もここまで顕著には出てこないという認識です。

肉眼で見たときには朧気に光があるなくらいの認識だったのですが、このレンズで撮ってみるとその光のグラデーションをはっきりと描き分けてくれました。環境光がほとんど感じられない場所であっても十分な光量を獲得できるという言葉の意味、今回撮影した中でも最も「ノクティルックス」を実感した1枚です。

この撮影の前に「LEICA NOCTILUX M 50mm F1.0 / 2nd E58」を撮ったことで、周辺減光などの特徴・特性ともいえるものはあえて使うことで、より魅力を引き出すことが出来るということを改めて実感しました。最新技術を盛り込まれた『 LEICA NOCTILUX M 35mm F1.2 ASPH. 11635 』はノクティルックス史上初の35mmながら、周辺減光などの問題もより改善されています。ただそれでもズミルックスなどと比べてみるとやはりその特性は強めです。なのであえてそういった特性を活かすために、適切な露出ならガラスの写り込みや奥の様子なども背景として写るところを、少し露出をアンダー目に調整して不必要な情報を遮断して没入感が出るように撮影してみました。開放絞りでは周辺部の光量が落ちるかわりに中央部の明るさが際立つので、より印象的に写すことが出来ました。

フリンジもゴーストもここまですれば出てきて当然という、意地悪な逆光ショット。F1.2の開放絞りで真逆光なので、という補足はもちろんしますが、実際問題としてはそこまで盛大に出てきている印象はなく、むしろよく抑えられているほうだと思います。

もとよりシャープなレンズですが、F1.8に絞ってみるとよりシャープさが際立ちます。ちなみに余談にはなりますが、「M EV1」のJPEGはRAW(DNG)データと比べてみるとコントラスト(他微調整も含む)がやや強めです。そのため開放絞りの周辺減光はJPEGのほうが印象が強いという面白い結果が出ます。JPEGに関してボディとのレンズ連携などのアップデートがあった場合、また結果は変わってくると思いますが、今回はあくまでJPEG撮って出しのカットをご紹介しています。

F4くらいまで絞るとボケのシルエットが情報として伝わる程度のボケ量になります。絞ったことで船舶を繋ぎ止めるための係留柱やコンクリートの地面のザラザラとした質感も精細に描写してくれました。それでもあまりボケに硬さは感じることもなく、入り込んだ陽射しが小型船をさらに薄く透かしている様も綺麗です。解像とボケ感のバランスを取りたいときでもボケの質を気にすることなく撮影できます。

F8まで絞り込むことで手前の白い船舶から、背景の倉庫、黄色い船舶や橋を歩く人たちのシルエットまでしっかりと解像しています。

21mmなどの超広角レンズと比べれば35mmという焦点距離はけっして広くはありませんが、35mmと50mmを交互に使っていた私にとっては、「広角レンズ」としての役割を十分に果たしてくれる画角です。こうして一つの風景に人物を入れながらも主観と客観のバランスをちょうどよくまとめてくれます。オールマイティーに使える代わりに印象強い写真を撮ることが難しいのですが、50mmでは得られない開放感があり、手離すことは出来ない画角です。

やはり夜間の撮影となると周辺部は大きく落ちますが、「LEICA NOCTILUX M 50mm F1.0 / 2nd E58」を彷彿とさせる減光加減で、ちょうどよいトンネル効果でもあります。作品のアクセントとして活用できるものではないでしょうか。

ファインダーを覗きながらなら1/45秒のシャッターも切れます。これは個人差があるかもしれませんがモニターで見ながら撮ろうとすると1/90秒くらいが手ブレをしない限界です。しっかりとファインダーを見ながら固定して撮れることにはとても意味があるということを改めて実感しました。


光を捉え、物語を紡ぐ
満を持してライカが送り出した初の35mノクティルックスに、卓越したドイツのクラフトマンシップと、ライカレンズの新たな時代が到来したのだなと感じました。成熟されたと思っていたレンズのラインナップ。Q3に搭載されている「APO SUMMICRON 43mm F2 ASPH.」もそうですが、ライカのレンズはまだまだ進化をし続けるという可能性を大いに期待させてくれる1本です。夜の光=ノクティルックスは夕闇を照らすのはもちろん、撮影者にも見つけられなかった、その場にある僅かな光までも見つけ出してくれるレンズ『 LEICA NOCTILUX M 35mm F1.2 ASPH. 11635 』。光を探すのは撮影者の仕事であり使命だと思っていたのですが、レンズが導いてくれる世界があることを改めて実感できました。製造工程に究極にこだわっているレンズなので、入手するまでには時間がかかってしまうかもしれませんが、ライカの歴史に刻まれた新たな1ページ、いわば「LEICA NOCTILUX M 35mm F1.2」の「1st」です。ぜひともその手中に。
Photo by MAP CAMERA Staff






