アーティスト/写真家:嶌村吉祥丸 『ライカを愉しむ』
2022年02月20日
海や山といった広大な景色よりも、
普段生活をしている中で見かける身近で小さなことに関心があります。
写真を撮ろうと意気込んで街を歩いても、それはいつどこからやってくるかもわからないですし、
カメラを構えたところで、目の前に突然美しい景色が広がっているわけでもありません。
それはどこからともなくやってきて、撮らざるを得ないと思わせます。
写真を撮ろうという意思や意識はそこにはなく、何かによって写真を撮らされているようでもあります。
写真は、人やモノを、
時間や場所さえも、平等にします。
デジタル上に写真が溢れている現在に、改めて写真を撮るということ。
どんなに些細な出来事や、無意味に見えるようなことであっても、
一人の人間の意識や視点を可視化するということは、様々な可能性を持っていると思います。
写真を撮ることに、明確な理由は必要ないのかもしれません。
そのとき、その場にいて、そこでカメラを構えているのはあなたしかいないのですから。
旅に出るときには、いつもライカに50mmか35mmをつけていました。一眼レフカメラとは違って、レンジファインダー特有のちょっとしたズレがわたしには心地が良いのだと思います。画角を決め込むことなく、撮りたい時にふとシャッターを切ることのできる感覚は、ライカならではの感覚だと思っています。
ライカはフィルム時代のものから愛用していますが、今回使用させていただいたM11にもその哲学が受け継がれているように感じました。コンパクトなサイズ感ながら繊細な色と描写を映し出してくれました。
今日、スマートフォンで誰でも気軽に写真を撮ることができる世の中になりましたが、改めてカメラで写真を撮る愉しさを感じることができました。