「ライカ M EV1」Workshop in Tokyo レポート
2026年05月14日
ライカカメラジャパンが主催する「『Leica M EV1』Workshop in Tokyo」に参加してまいりました。
すでに発売され、店頭でも大きな反響を呼んでいる『Leica M EV1』。長年世界中のライカファンが夢見た「EVF(電子ビューファインダー)を内蔵したM型」という新たな歴史の幕開けとなった本機ですが、今回のワークショップは、その真のポテンシャルをじっくりと深掘りし、徹底的に体感できる1日となりました。
今回のKasyapa for LEICAでは、ワークショップの熱気とともに、実機を手にして感じた『Leica M EV1』の魅力をお届けいたします。

会場となったのは、目黒駅からほど近い「スタジオ EASE」。
ライカを象徴する赤いバッジが静かに我々を迎え入れてくれました。


柔らかな自然光が差し込むモダンな空間は、これから始まる新しい「M」との出会いにふさわしい、心地よい緊張感と熱気に包まれていました。
まずは座学にて、『Leica M EV1』に込められた哲学やその魅力について、スライドを交えながら説明を受けます。


今回、講師を務めてくださったのは写真家の斎藤 巧一郎(さいとう こういちろう)先生。
1968年鹿児島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科をご卒業され、現在は広告撮影業の傍ら、ライフワークとして「食」や「旅」をテーマに世界中を飛び回る写真家です。21歳で「ライカ R5」を手にして以来、長年にわたりライカを愛用し、その深い造詣を活かして数多くのライカセミナーで講師を務められています。
今回の『Leica M EV1』を語るうえで欠かせないのが、やはりファインダーの電子化です。
これまでのM型ライカは、レンズを通る光とファインダーから見る景色が物理的に分かれていたため、どうしてもパララックス(視差)が生じていました。
遠景の撮影では気になりませんが、被写体に近づけば近づくほど、見ている像と実際に写る像のズレはどうしても大きくなってしまいます。
しかし、EVFが内蔵されたことで、レンズが捉えた景色をダイレクトに確認できるようになりました。
「見たままがそのまま写る」という、ある意味で当たり前だったことがM型の姿のままでできるようになったのは、本当に画期的なことです。

そしてもう一つ、実機を手に取って驚かされたのがその「軽さ」です。
複雑な光学ファインダーのガラスや距離計機構がなくなったことで、ボディの大幅な軽量化が図られています。
もともとトップカバーにアルミニウムを採用し、軽さに定評があった『M11』や『M11-P』のブラックモデルと比べても、そこからさらに約50gほど軽くなっています。
長時間首から提げていても疲労感が少なく、どこへでも持ち出したくなる実用的な軽さに仕上がっていました。

座学の後は、自然光が差し込むスタジオ内で、モデルの方々を被写体にした実践的なシューティングセッションへ移ります。
ずらりと並ぶライカの機材たち。
参加者一人一人に1台ずつ「M EV1」が用意され、思い思いのレンズを選択し、撮影に挑みます。
現在でも希少な「ノクティルックス M35mm F1.2 ASPH. 11635」や「ノクティルックス M75mm F1.25 ASPH.」、「ズミルックス M35mm F1.4 ASPH. 11726」など一堂に会する光景は圧巻でした。


ここからは、ワークショップ内で実際に撮影した写真をご紹介いたします。
今回はマップカメラから2名のスタッフが参加し、それぞれ異なるMレンズを選びながら撮影を行いました。
同じM EV1というボディを使用していても、選ぶレンズや被写体との距離、光の拾い方によって、写真の印象は大きく変わります。
まずは、もう一名のスタッフが撮影した写真からご覧ください。

Leica M EV1 + ズミクロン M35mm F2 ASPH.
model:大久保 麗衣さん(@rei_okubo.14)
『ズミクロン M35mm F2 ASPH.』は、人物と空間の両方を自然に写し込みやすい35mmレンズ。
白いカーテン越しの柔らかな光と、モデルの表情を同時に活かしています。背景を大きく消すのではなく、窓辺の明るさや空間の余白まで含めて見せるところに、35mmらしい距離感があります。
M11のようなレンジファインダー機だと、ブライトフレームで撮影範囲を確認する必要があり、個人的には撮影後に想像よりも広く映ったという感覚が残ることが多くありました。
M EV1の場合、撮影範囲を画面全体で確認できるので、構図の調整がしやすい印象です。また、逆光気味の明るい場面でも露出やピントの確認がしやすく、光の入り方を見ながら落ち着いてシャッターを切ることができます。

Leica M EV1 + ズミクロン M50mm F2
model:あるまさん(@almalmal.ma)
『ズミクロン M50mm F2』は、自然な画角を活かしながら、室内の雰囲気まで見せられるところが魅力的なレンズ。
ズミクロンらしくピント面がシャープに映り、自然なボケ感を楽しめる一本でした。人間の視野に近い感覚で撮影できるので、背景と被写体のバランスを考えながら撮影できます。

Leica M EV1 + ズミルックス M50mm F1.4 ASPH. 11728
『ズミルックス M50mm F1.4 ASPH. 11728』は、標準レンズらしい自然な画角に、開放F1.4の明るさと現代的な描写性能を組み合わせた一本です。
背景は大きく崩れすぎず、柔らかく溶けていくようで、人物の表情が自然に引き立っています。
開放でもピント面のシャープネスが明確で、肌や髪の質感を描きながら、背景にはズミルックスらしいなめらかなボケが残ります。M EV1のEVFであれば、こうした浅い被写界深度の中でもピント位置を確認しやすく、F1.4の描写を安心して使えるのが印象的です。

Leica M EV1 + アポズミクロン M90mm F2 ASPH.
『アポズミクロン M90mm F2 ASPH.』は、90mmらしい圧縮感とF2の分離感を活かせる中望遠のMレンズです。
背景の窓枠をほどよく残しながら、モデルの表情へ視線が集まるように被写体が浮き出ています。強めの光が髪や肌の立体感を引き出し、背景の暗さが人物の存在感をさらに際立たせています。

Leica M EV1 + ノクティルックス M35mm F1.2 ASPH.
『ノクティルックス M35mm F1.2 ASPH.』は、35mmという扱いやすい画角に、開放F1.2の浅い被写界深度を組み合わせた大口径Mレンズです。
手前の観葉植物のグリーンを大きくぼかしながら、モデルの表情へ自然に視線が向かうように構図を調整しながら撮影しました。ノクティルックスと聞くと溶けていくようなボケ感を想像していましたが、撮影してみると室内の奥行きや窓辺の光も残しつつ、F1.2ならではのボケが印象的でした。

Leica M EV1 + ノクティルックス M75mm F1.25 ASPH.
『ノクティルックス M75mm F1.25 ASPH.』は、75mmというポートレート向きの焦点距離に、開放F1.25という非常に明るい開放値を組み合わせた大口径Mレンズです。
窓辺から入る柔らかな光の中で、モデルの表情が浮かび上がっています。背景は大きく溶けながらも、白い窓枠や外の緑が淡く残り、人物の存在感を自然に引き立てています。
撮影したスタッフ自身も、この日使用したレンズの中で特に印象が良かった一本として挙げていました。75mm F1.25ならではの浅い被写界深度はもちろん、ピント面の描写が美しく、M EV1のEVFによってその繊細なピント位置を確認しながら撮影できる点も大きな魅力です。

続いては、筆者が撮影した写真をご紹介いたします。
同じM EV1を使用していても、撮影者、選ぶレンズやモデルとの距離感が変わることで、写真の印象はまた少し違ったものになります。

Leica M EV1 + ズミルックス M50mm F1.4 11714
最初に使用したのは、『ズミルックス M50mm F1.4 11714』。往年のズミルックスをベースにしたクラシックラインの一本です。
描写を表すならば「クリーミーシャープ」。ピント面には芯がありながら、背景やハイライトには柔らかさが残ります。一見すると相反するような言葉ですが、実際に撮影してみるとその意味がよく分かります。
このカットでは、窓から差し込む光がモデルの表情を照らし、背景はなだらかにボケていきます。強い光の中でも硬くなりすぎず、人物と空間の間に穏やかな余韻が残るところに、このレンズらしさを感じました。

Leica M EV1 + ズミルックス M50mm F1.4 ASPH. 11728
続いて使用したのは、『ズミルックス M50mm F1.4 ASPH. 11728』。こちらは、より現代的な描写性能を持つズミルックスです。
窓から入る光が横顔を浮かび上がらせ、ソファや衣装の暗部が画面全体を引き締めています。11714が光をやわらかく含むような描写だとすれば、11728はピント面の描写や陰影のつきかたがより明確です。同じ50mm F1.4でも、描写の方向性はかなり異なります。

Leica M EV1 + アポズミクロン M75mm F2 ASPH.
『アポズミクロン M75mm F2 ASPH.』は、50mmよりも一歩視線を絞り込みながら、90mmほど距離を取りすぎない中望遠Mレンズです。
窓から差し込む強い光と影の中で、モデルの表情がしっかりと浮かび上がっています。髪や目元の描写はさすがで、アポズミクロンらしい線の細さと立体感が印象的です。
75mmという焦点距離は、ポートレートで被写体との距離を保ちながらも、表情にしっかり寄れるバランスがあります。

Leica M EV1 + アポズミクロン M90mm F2 ASPH.
『アポズミクロン M90mm F2 ASPH.』は、Mレンズの中でもより明確に中望遠らしい距離感を楽しめる一本です。
窓辺の柔らかな光を受けながら、モデルの表情が落ち着いたトーンで浮かび上がっています。衣服の繊維の質感まで描写する様は使用していてもとても心地よく目に留まりました。
従来のM型で90mmを扱う場合、ピント合わせには少し慎重さが必要でした。M EV1ではEVFでピント位置を直接確認できるため、こうした中望遠Mレンズもより自然に使えるようになったと感じます。

Leica M EV1 + ノクティルックス M35mm F1.2 ASPH.
『ノクティルックス M35mm F1.2 ASPH.』は、35mmという扱いやすい画角に、開放F1.2の浅い被写界深度を組み合わせた大口径Mレンズです。
ホワイトバランスを少し調整して温かい雰囲気を演出しました。35mmらしく空間を広く見せながら、F1.2ならではのボケが背景を柔らかくほどき、人物を自然に引き立てています。
大口径レンズでありながら、ただ背景をぼかすだけではなく、その場の雰囲気まで写し込めるところがこのレンズの面白さです。

Leica M EV1 + ノクティルックス M50mm F0.95 ASPH.
最後に使用したのは、『ノクティルックス M50mm F0.95 ASPH.』。ライカMレンズの中でも、特別な存在感を持つ一本です。
モノクロにすることで、ソファの質感、衣装のドット模様、モデルの視線がより強く見えてきます。背景には情報量がありますが、F0.95ならではの浅い被写界深度によって主張が抑えられ、視線は自然と目元へ向かいます。


撮影タイムが終わると、各々のベストショット1枚をセレクトし、斎藤先生による講評会が行われました。
同じ機材、同じ時間で撮影していたにもかかわらず、撮影者によって見ている視点や表現のアプローチがこれほどまでに違うのかと、写真というフォーマットの奥深さに驚かされます。

その軽さを活かした斎藤先生ご自身の日常的な使い方です。先生は時に『ズミクロン M50mm F2』やオールドレンズの『エルマー L35mm F3.5』などを装着して気軽に持ち運び、食事の記録などに使用することも多いとのこと。
『エルマー L35mm F3.5』のようなレンズであれば冬物のコートのポケットにそのまま収まるほどのコンパクトさで、機動力は抜群です。
作品としてしっかり撮ることはもちろん、日常に持ち込んでサッと撮ることもできる懐の深さがあります。
また、食事の記録などで特に活躍するのが、近接撮影のしやすさです。
近年の新しいライカレンズは最短撮影距離が70cm以下に設計されているものも多く、光学ファインダーではピント合わせができなかったこの近接領域を、ビゾフレックスなど電子ビューファインダーなしでそのまま楽しめるのも、レンズ越しの像を直接確認できるM EV1ならではの特権と言えます。


ワークショップを通して強く感じたのは、『Leica M EV1』は単にM型ライカにEVFを内蔵したカメラではない、ということです。
ピント合わせやフレームなど、経験や感覚に頼る領域が多いレンジファインダー式のM型が持っていた撮影体験とは異なり
『Leica M EV1』は、焦点距離やフレーム、撮影距離などMレンズをより自由に、より確実に使うための選択肢が広がったことも確かです。
大口径レンズを開放で使う。
近接域まで踏み込む。
90mmや75mmといった中望遠レンズを、ピントの不安を抑えながら扱う。
そして、撮影前に見えている像と実際に写る像を一致させながら、落ち着いてシャッターを切る。
今回の撮影では、そうしたM EV1ならではの強みを、実際の撮影を通して確かめることができました。
もちろん、これまでの光学式レンジファインダーを備えたM型には、そのカメラでしか味わえない魅力があります。
ただ、M EV1はその代わりとして生まれたカメラというより、Mレンズの使い方をもう一段広げるための、新しい入口なのだと思います。

講義で学び、実際に撮影し、最後に講評を受ける。
短い時間ではありましたが、M EV1というカメラの立ち位置を理解するには十分すぎるほど濃い内容でした。
Leica M EV1は、576万ドットのOLED電子ビューファインダーを内蔵し、MFアシストにも対応した新しいM型ライカです。
スペックとしての変化はもちろんですが、実際にファインダーを覗いたときに感じる安心感や、Mレンズを選ぶ楽しさの広がりこそ、このカメラの大きな魅力だと感じました。
これまでM型ライカを使い続けてきた方にも、これからMシステムに触れてみたい方にも、一度そのファインダーを覗いていただきたい一台です。
新しいMのかたち。
その体験を、ぜひ『Leica M EV1』でお確かめください。

また、【Leica.Connect】「Leica M EV1」Workshopは、東京だけでなく全国各地での開催も予定されています。
ライカ公式イベントページでは、名古屋・大阪・福岡などの開催情報も公開されており、各会場で「Leica M EV1」やMレンズを実際に体験できる機会が用意されています。
定員には限りがあるため、気になる方はぜひお早めにメーカー公式サイトをご確認ください。
マップカメラのライカブティックなら、『Leica M EV1』をはじめとする様々な機材を実際に体験、お試しいただけます。
ぜひ皆様も、この全く新しい「M」の体験をご自身の目でお確かめください。
モデル:大久保 麗衣さん(@rei_okubo.14), あるまさん(@almalmal.ma)
取材協力:ライカカメラジャパン株式会社
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