

今回ご紹介するレンズは1976年頃から発売開始されたノクティルックスF1.0シリーズの中でも初期型に分類される58mm口径のレンズ『 LEICA NOCTILUX M 50mm F1.0(通称 E58)』となります。ノクティルックスの歴史の始まりは1966年。市販レンズとして世界で初めて非球面レンズを搭載した「LEICA NOCTILUX M 50mm F1.2」が発売されました。その後2世代目のF1.0シリーズはE58に始まり、その後60mm口径に変わり(通称 E60)、さらにその後フード組み込み式に仕様が変更されるなど数世代続くシリーズとなりました。前回に続き今回もEVFを搭載した「LEICA M EV1」で撮影してきました。ぜひご覧ください。
「E58」は開放絞り時の周辺減光が顕著なのですが、それが人気の理由でもあります。アイキャッチの照明の写真は室内での開放絞りということを加味しても、トンネル効果といってもいいほどに周辺が減光しています。これは後程絞ったカットと比較してみましたのでよければご覧ください。私が不慣れなだけかもしれませんがこういった似た被写体が重なり合うようなシーンはレンジファインダーではピントを合わせるのが難しいです。しかしEVFによる拡大表示が可能な「LEICA M EV1」であれば、狙った奥の一点に確実にピントを置くことができます。

寒い時期になるとお世話になることが多い山茶花も枯れてしまいそうな花がちらほら。こういうところでも季節の移ろいを感じます。逆光で少し光が入り込むようにして撮影しました。今回の撮影ではレンズフードがない状態ですが、虹色のゴーストは出つつも、イメージしていたよりずっと大人しい感じでした。シャドウ部がふわっと持ち上がるもまた魅力的です。

F5.6に絞って撮影。開放絞りのときとは屋内という撮影条件の違いもありますが、シャドウ部が非常に良く締まりました。四隅まで均一な光量となり、左上の僅かな明かりもしっかり写っています。

開放絞りのカットと見比べて、F8以上に絞れば周辺減光は全く気にならないレベルで解消されます。しかし中心へ視線を吸い寄せる開放絞りの周辺減光にはなんともいえぬ魅力があり、この「E58」が写真家の中でも愛される理由が、よく分かります。

はっきりとしたコントラストもなく、どちらかというと曖昧な光。この光をどう写すのだろうとテストのつもりで撮った1枚だったのですが、F1.0の被写界深度の浅さで描写される画が妙に気に入ってしまいました。レンズの個性が被写体を上回る、そんな瞬間を味わえるのも本レンズの醍醐味です。

F8まで絞って遠景を撮影。建物のディテールがシャープに描かれ、周辺部まですっきりとした画になりました。1本の標準レンズとして非常に高い完成度にあるレンズです。

F1.4での撮影です。ワイングラスの薄い縁や反射する光の立体感に感動しました。少し絞ったときの描写も素晴らしいものです。色気と解像感のバランスが最も高まるのがこの絞り値付近かもしれません。

F2まで絞り込むと、ピント面の解像度はさらに安定し、前後のボケもより整った描写へと変化します。


歴史に紡がれる銘玉
吸い込まれるような大きな瞳。ろうそく1本の灯りでも写真が撮れるほど明るい、と言われたノクティルックスですが、現代でさえこの明るさのレンズは市場でも決して多くはありません。ゆえに当時 からこれだけの明るさを持ったレンズが存在したということに改めて驚きを感じます。世代が新しくなることで欠点がなくなったり、改善されていきますが、それだけが正解ではないというところがレンズの面白さです。今回は絞ったカットを多めに掲載してみましたが「ノクティルックス」としての魅力だけではなく、これ1本だけで物語を完結できる実力を確かに感じました。夜の光も掬いあげる魅惑の大口径レンズ、コレクションとしてだけでなく、これからの人生のお供に。
Photo by MAP CAMERA Staff








