P.Angenieux 75mm F3.5 TYPE Z3
2024年08月09日
マップカメラはお陰様で2024年8月13日に創業30周年を迎えます。
これを記念して創業祭期間中は希少価値の高い商品「PREMIUM COLLECTION」の掲載を強化しています。
今回の「Kasyapa for LEICA」では特別編とし特に珍しい商品を一足早くご紹介。今回逃したら次いつお目にかかれるか分からない商品です。レア商品の描写力をぜひご覧ください。
今回は『P.Angenieux 75mm F3.5 TYPE Z3』をご紹介します。こちらのレンズですが非常に流通量が少なく、そのため作例やレンズ情報もかなり少ないレンズです。さっそくレンズ構成をみてみましょう。「Type Z」というレンズはトリプレットであり、レンズの中に光を当ててみると三層に光の反射が見られます。その他のラインナップで「Type S」も存在しますが、こちらはガウスタイプのレンズ構成になっています。
トリプレットという非常にシンプルな作りのレンズなので、持ってみると非常に軽いです。その重さはなんと127g。手に取った瞬間「軽いっ!」と声が出たくらいです。そんなプレミアムなレンズで作例を撮影してきましたので是非ご覧ください。今回の作例は特に断りのないかぎり絞り開放で撮影をしております。
まず初めに向かったのは千葉県外房の海辺。
様々な野草からゴツゴツとした岩場、素敵な遠景までレンズの特徴を知るにはもってこいだと思い、この場所を選びました。
一枚目から非常にユニークな写りを見せてくれました。開放での描写は非常にソフトですが、コントラストはしっかりとある写りと言えます。
今回の撮影で使用したボディは言わずと知れたライカの最軽量M型ボディのM11。『P.Angenieux 75mm F3.5 TYPE Z3』も非常に軽いレンズなので相性抜群でした。また、非常にピント面がソフトなのでライブビュー撮影だと中々ピントの判断がしづらくレンジファインダーでないとピント合わせに苦戦しそうだなとも感じました。
ではF値F3.5の時とF5.6の時の描写の違いを見てみましょう。絞り開放時はピントを合わせた花でさえフワフワとした印象になりますが、F5.6時では解像感が向上しています。ここまで描写に違いがあれば日中には描写の使い分けが出来そうです。
ボケ感はどうでしょうか。F値F3.5のレンズなのでそこまで綺麗なボケ感を期待しないスペックですが、75mmという焦点域という事もあり予想以上に素敵なボケが味わえました。
被写体を際立たせることも出来ますし、このカットのように光が強すぎない場所で撮影をするとソフトな描写がやわらぎ、湿度を感じさせるような描写に。
木陰になっている岩肌に垂れ下がる葉に日差しが当たっていました。光の強いところで見られるソフトな描写と光の弱いところで見られる湿っぽさが共存しています。非常に神秘的な一枚となり、このレンズの描写の特徴が上手く使えたと感じるカットです。
では次に逆光時の描写を見ていきましょう。このレンズを使用していて感じた事は逆光耐性が意外と高いという事です。いわゆるオールドレンズの醍醐味と言えば大胆にでるフレアやゴーストですが、『P.Angenieux 75mm F3.5 TYPE Z3』は少し落ち着いたレンズと言えると思います。
上手くフレアを出せた二枚です。虹色のフレアが放射状に伸びたり、白いスジが出たりと一定ではありませんがオールドレンズらしいフレアを味わうことが出来ました。
さて、次に撮影したのは夜の東京駅。ご存知の通り『P.Angenieux 75mm F3.5 TYPE Z3』は開放F値がF3.5と控えめな開放値ですので、スペック上では夜の撮影は得意とはいえません。しかし筆者は夜の撮影をしてみて、ノイズがのってしまうとしても『P.Angenieux 75mm F3.5 TYPE Z3』は夜の撮影でこそ輝くレンズだと確信しました。その理由のひとつは、やはり程良い描写の柔らかさです。明るい時間帯ではソフト過ぎると感じた描写は光源が弱くなることで落ち着きを取り戻し、程良く光を和らげてくれ幻想的なものに変わります。
いつも目で見ている東京駅も幻想的な雰囲気になりました。もともと、絞り開放での解像感は低めなので、レンガや金属の質感までは表現できませんが、その分表面がスムースで優しい東京駅を表現してくれます。
東京駅から皇居まで続いている行幸通りはウェディングフォトで人気のスポット。この日も多くのカップルがウェディングフォトの撮影をしていました。今回はモノクロで撮影してみました。御姫様と王子様とそれを照らす奥まで続く街灯。なんて幻想的な世界でしょう。まるで昔のフィルム映画の一コマのようです。
きっと、当時の持ち主もこのような景色を撮っていたんだろうなと悦に浸ってしまいました。
古く深い
今回は謎の多い魅惑の中望遠単焦点レンズ『P.Angenieux 75mm F3.5 TYPE Z3』をご紹介しました。使えば使うほど味わい深く、まだまだ使い足りないと感じさせてくれるレンズでした。
1945年(昭和 20年)に発売された本レンズ。筆者も使用したことのない歴史あるレンズ。それは現代の写真愛好家にとっては新しく新鮮なものになりえることでしょう。
使えば使うほど現実的とは言えない写りの深みに私たちははまり、またその写りだけでなくレンズそのもののデザイン、軽さにP.Angenieuxのこだわりが詰まったプレミアムな雰囲気に一度触れたものは虜になってしまう事でしょう。
Photo by MAP CAMERA Staff