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Som Berthiot Angulor 28mm F3.3

Som Berthiot Angulor 28mm F3.3

2026年08月13日

フランスの光学メーカー、SOM Berthiot(ベルチオ)が手掛けた、少し変わった顔つきの広角レンズ「Som Berthiot Angulor 28mm F3.3」をご紹介します。まず目を引くのは、その独特な外観です。すり鉢状に深くくぼんだ鏡胴の奥に、小さなレンズ玉が収まっています。正面から見るとレンズそのものが奥まっていて、鏡胴自体がフードのようにも見える特徴的な設計です。さらに正面から覗いてみると、開放F3.3に設定していても、絞り羽根が完全に開ききっているようには見えず、わずかに絞られたような形が確認できます。 現代のレンズを見慣れていると、少し不思議に感じる部分です。絞りの操作方法も個性的です。一般的なレンズのような大きな絞りリングを回すのではなく、レンズ前面の左右に設けられた小さな突起を指で回転させることで、絞り値を変化させます。 小さな鏡胴のなかに機構が凝縮されていることもあり、操作しているだけでもヴィンテージレンズらしい趣があります。

ベルチオ社の歴史は19世紀まで遡り、その後フランスを代表する光学メーカーの一つとして知られるようになりました。同社が手掛けたライカマウント用レンズは決して多くなく、このAngulorも現在ではなかなか目にする機会の少ない一本です。鏡胴には透明感のあるブルー系のコーティングが見え、銀色の外装と相まって、現代のレンズにはない独特の存在感があります。そして、手にして驚くのがその軽さ。小ぶりな鏡胴と相まって、M型ライカに装着しても非常に軽快です。では、その小さなボディからどのような写りが生まれるのでしょうか。Angulor 28mm F3.3の描写をじっくり確かめていきます。

Som Berthiot Angulor 28mm F3.3 実写レビュー作例

絞り:F5.6 / シャッタースピード:1/125秒 / ISO:64 / 使用機材:Leica M EV1 + Som Berthiot Angulor 28mm F3.3

撮り始めてまだ30分も経たないうちに、「これは面白い」と思えるカットが撮れました。木の幹はしっかりとした輪郭を保ち、葉の緑や空の青も自然に色が乗っています。それでいて、背景がただ平面的に写るのではなく、主題となる木の幹がすっと前に出て見えるのが印象的でした。このレンズの魅力は、もっと大きく滲んだり、クセの強い写りにあるのだろうと思っていたので、まず最初に端正な一面を見せられたことが意外でした。

Som Berthiot Angulor 28mm F3.3 実写レビュー作例

絞り:F3.3 / シャッタースピード:1/500秒 / ISO:64 / 使用機材:Leica M EV1 + Som Berthiot Angulor 28mm F3.3

彫刻を、開放F3.3で狙った一枚。開放では四隅、特に画面上部に周辺減光が見られます。F5.6付近まで絞ると、その傾向は少しずつ穏やかになっていきます。ボケが大きく溶けるタイプではありませんが、ピントを合わせた彫刻と背景との境目には自然な奥行きがあります。輪郭を過度に強調することなく、主題だけがわずかに前へ出てくる。広角レンズでありながら、被写体をきちんと立たせる描写に好感を持ちました。

Som Berthiot Angulor 28mm F3.3 実写レビュー作例

絞り:F3.3 / シャッタースピード:1/200秒 / ISO:320 / 使用機材:Leica M EV1 + Som Berthiot Angulor 28mm F3.3

見上げた吹き抜けの天井。28mmらしいパースがしっかりと感じられる構図ですが、鉄骨や柱の直線は思っていた以上に素直にまとまりました。開放F3.3でもコントラストはある程度保たれており、現代レンズのような鋭さとは少し違いますが、天井の装飾や細かな模様もきちんと残っています

Som Berthiot Angulor 28mm F3.3 実写レビュー作例

絞り:F8 / シャッタースピード:1/200秒 / ISO:320 / 使用機材:Leica M EV1 + Som Berthiot Angulor 28mm F3.3

F8まで絞った一枚。レンガの質感や窓枠の細かなディテールまで、小気味よく描き分けてくれました。
拡大して確認すると、現代の高性能レンズのように細部の一本一本まで鋭く切り分けているわけではありませんが、通常の鑑賞距離ではレンガ表面の凹凸や光の当たり方が、不思議なほど立体的に感じられます。単純に「解像力が高い」というより、細かな明暗差をうまく残し、質感を視覚に伝えてくれるタイプの描写なのかもしれません。数字だけでは説明しづらい魅力です。

Som Berthiot Angulor 28mm F3.3 実写レビュー作例

絞り:F8 / シャッタースピード:1/800秒 / ISO:160 / 使用機材:Leica M EV1 + Som Berthiot Angulor 28mm F3.3

空を見上げて一枚。まず目を引くのは、深みのある青です。しっかり色が乗っているのに硬すぎず、雲の白とも自然に馴染んでいます。もしポジフィルムを詰めて同じ景色を撮っていたら、どんな青になっただろう。そんなことまで想像してしまいました。ライトボックスの上で透かして見たら、きっと印象的だったのではないでしょうか。もちろんデジタルでも、この少し濃密な色を生かして、RAW現像でコントラストを整えていく楽しさがあります。

Som Berthiot Angulor 28mm F3.3 実写レビュー作例

絞り:F3.3 / シャッタースピード:1/60秒 / ISO:64 / 使用機材:Leica M EV1 + Som Berthiot Angulor 28mm F3.3

開放F3.3で撮った室内のカット。この一枚では、中央部から周辺部へ向かう描写の変化がよく分かります。中央に置かれた椅子は輪郭がしっかりしていますが、左端へ向かうほど少しずつ描写が緩んでいきます。普通であれば「周辺まで均一に解像しない」という欠点として捉えられる部分かもしれません。ところがこの写真では、その変化がむしろ視線を中央へ自然に導いています。欠点にもなり得る描写のクセが、構図によっては画面の味方になってくれたりもします。

Som Berthiot Angulor 28mm F3.3 実写レビュー作例

絞り:F8 / シャッタースピード:1/400秒 / ISO:64 / 使用機材:Leica M EV1 + Som Berthiot Angulor 28mm F3.3

今度はモノクロで一枚。白いパラソルと雲のトーンを残すため、少しアンダー気味に撮影しました。
暗部にはしっかり黒が乗りながら、パラソルや雲の明るい部分も極端に飛ばず、階調は比較的素直につながっています。カラーでは発色の良さが目立つAngulorですが、色を取り去ってみると別の魅力が見えてきます。モノクロでも積極的に使いたくなるレンズです。

Som Berthiot Angulor 28mm F3.3 実写レビュー作例

絞り:F3.3 / シャッタースピード:1/200秒 / ISO:320 / 使用機材:Leica M EV1 + Som Berthiot Angulor 28mm F3.3

色とりどりのガラスの風鈴。開放F3.3で撮影しています。赤、青、緑、黄色。それぞれの色が混ざり合うことなく、ひとつひとつきちんと分かれて写っているのが印象的でした。一方で、強い光が入り込んだ部分では輪郭がわずかにほどけ、柔らかな滲みが生まれています。色はしっかり残すのに、光だけは少し柔らかくなる。このレンズの面白さが分かりやすく出た一枚だと思います。

Som Berthiot Angulor 28mm F3.3 実写レビュー作例

絞り:F3.3 / シャッタースピード:1/250秒 / ISO:64 / 使用機材:Leica M EV1 + Som Berthiot Angulor 28mm F3.3

Som Berthiot Angulor 28mm F3.3 実写レビュー作例

絞り:F5.6 / シャッタースピード:1/50秒 / ISO:64 / 使用機材:Leica M EV1 + Som Berthiot Angulor 28mm F3.3

夕暮れの水辺に係留された小舟たち。F5.6まで少し絞って撮影しました。舟の木肌、水面の細かな揺らぎ、夕方の柔らかな光。すべてを落ち着いたトーンでまとめてくれています。日常の風景を少しだけ印象的に残してくれることも、このレンズの美点だと思います。

1/250秒
1/1000秒

1/250秒
1/1000秒

絞り:F3.3 / シャッタースピード:1/250秒&1/1000秒 / ISO:64 / 使用機材:Leica M EV1 + Som Berthiot Angulor 28mm F3.3

ひまわり畑では、あえて太陽を画角に入れて撮影してみました。逆光時の描写を見るため、露出を変えて2カットを撮り比べています。明るめに露出したカットでは、強い光が前景の向日葵に回り込み、輪郭が大きくほどけて見えます。一方、露出を抑えると光の形が明確になり、被写体の輪郭も締まります。きっちり写したい日もあれば、光に少し溶かしてしまいたい日もある。その日の気分で、あえて描写を崩してみたくなるレンズです。

Som Berthiot Angulor 28mm F3.3 実写レビュー作例

絞り:F3.3 / シャッタースピード:1/200秒 / ISO:640 / 使用機材:Leica M EV1 + Som Berthiot Angulor 28mm F3.3

日が沈んだ後の水辺。中央付近に伸びている一本の枝にピントを合わせて撮影しました。
ここまで何度か柔らかな滲みや周辺部の緩さに触れてきましたが、このカットではむしろシャープさに驚かされました。ピントを置いた部分にはきちんと芯があり、薄暗い時間帯でも輪郭が失われていません。常に柔らかい、という単純なレンズではなく、条件によって見せる顔が変わる面白さがあります。

Som Berthiot Angulor 28mm F3.3 実写レビュー作例

絞り:F3.3 / シャッタースピード:1/200秒 / ISO:3200 / 使用機材:Leica M EV1 + Som Berthiot Angulor 28mm F3.3

最後は夜の風鈴。ISO3200まで感度を上げて撮影しました。暖色の照明下でも色が大きく転ぶ印象はなく、木枠や風鈴の暖かな色合いを素直に残してくれました。一方、強く光っている部分にはわずかな滲みが生まれます。光源を画面に入れて撮りたくなるレンズです。

Som Berthiot Angulor 28mm F3.3 外観写真1
Som Berthiot Angulor 28mm F3.3 外観写真2
Som Berthiot Angulor 28mm F3.3 外観写真3

フレンチ・ヴィンテージの逸品

「Som Berthiot Angulor 28mm F3.3」を使っていて印象的だったのは、ひとつの言葉では性格を説明しにくいことでした。開放では周辺に緩さが現れ、強い光を入れれば柔らかく滲む。一方で中央にはきちんと芯があり、絞ればレンガや建築物の質感まで端正に描きます。発色も濃厚ではありますが、ただ鮮やかなだけではありません。色はしっかり残しながら、光が入ると輪郭だけが少しほどける。シャープなのに硬すぎず、柔らかさもある。この様々な描写を見せてくれるところがAngulorの魅力なのだと思いました。現代レンズと同じ基準で評価すれば、周辺減光も、描写の均一性も、逆光時の滲みも、弱点と呼べるのかもしれません。けれど、それらを含めて写真の表情として楽しめるのが、ヴィンテージレンズの面白いところです。使えば使うほどに「Som Berthiot Angulor 28mm F3.3」は、その個性をどう活かそうかと考えさせてくれる一本でした。ぜひ実際に手に取り、その独特な操作感と描写を確かめてみてください。

Photo by MAP CAMERA Staff

作例1

強い光を斜めから入れると、放射状のフレアが現れることがあります。光そのものを画面の演出として取り込めるのも面白いところです。

作例2

28mmという画角と、F3.3の組み合わせは、咄嗟のスナップでも扱いやすく感じました。それでいて被写体との距離を詰めれば、背景をきちんとぼかすこともできます。

作例3

少し明るめに仕上げても、強い光の輪郭が急に崩れず、柔らかな滲みとして残ってくれるのが印象的でした。

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