2007年に発売された「ズマリットM」シリーズ。 ライカレンズに精通した方にとっては、「ズマリット」と耳にして真っ先に思い出すのが往年のハイスピードレンズ”Summarit 50mm F1.5”だと思います。 しかし、新生「ズマリットMシリーズ」は同じ名前を冠しながら設計思想は全く異なります。35mm/50mm/75mm/90mmの4種類の焦点距離が用意され、それぞれが全てF2.5という開放絞り値を持った控えめなスペック。 ライカレンズとしては比較的手にしやすいプライスの、所謂エントリークラス的位置付けのモデルです。
なかでもこのズマリット35mm F2.5は、使い勝手の良い画角とその容姿から、気になっている方が多い1本ではないでしょうか?
エントリークラスといって侮ることなかれ。シャープでありながらも、どこか優しさ漂うその描写はまさに優等生。 目立ったクセも感じられず、開放絞りから安心して使用できる高い描写性能を実現しています。
ライカMマウント現行モデルのなかで、最小かつ最軽量。全長わずか34mmのコンパクトな鏡胴は取りまわしが良く、デジタル/フィルムどちらのライカボディに装着しても、マッチングは良好。
レンズ構成は球面レンズのみで構成された4群6枚。絞りを挟んだ対称型という、昔ながらの配置。非球面レンズを採用しないかわりに、3枚の高屈折率を持った異常部分分散ガラスを採用し、色収差を良好に補正しています。
わずかに樽型の歪曲収差はみられるものの・・・実際に撮影した写真を見る限り、ほとんどの場面において気にならない程度に抑えられています。
モノクロ撮影でもこの通り。フィルムライカにおける、モノクロフィルムとの相性も良さそうです。 35mmという最もスタンダードな焦点距離でありながら、カラー撮影/モノクロ撮影の両方をそつなくこなしてくれる、まさにオールマイティな1本ではないでしょうか。
レンズ銘板には、往年のライツ社が使用していた”Leitz-Norm”(ライツ・ノルム)という字体が用いられています。 現行ラインの他レンズに用いられている、幾何学的な字体とは異なり、昔ながらの丸い字体です。 さらにレンズ着脱指標の色も、当時使用されていた物と同様の色調を再現。 それらの拘りは、どこか懐かしさを感じる鏡胴デザインと相まって、エントリークラスとは思えない存在感をもたらしています。
Photo by MAP CAMERA Staff