35mmフィルムを使用するカメラとして1925年、初めて成功を収めたLEICA。その時初の量産カメラであるA型に装着されていたのが50mmのレンズでした。それ以来、人の見た目に最も近い50mmレンズは”標準”レンズとして永く多用されています。
実際、漠然とした視点の場合の人の目は40mm程度、意識して風景を見る場合の焦点距離が50mm程度と言われますから、撮影をする上で使いやすい画角である事は事実。大きな誇張も無いその焦点距離は写真を撮る上でまさにスタンダードなものと言えるでしょう。
LEICAの標準レンズと言えば弩級のノクティルクスから、ズミルックス、ズミクロン、ズマリットと現行レンズだけでも4種類。その上それぞれに個性があるのだから参ってしまいますが、今回使用した『Summilux 50mm/f1.4 ASPH.』は間違いなくスタンダード中のスタンダード。その描写力の高さはトップクラスで、高いシャープネス、ボケも美しい、文句のつけようの無い描写はLEICAの凄みすら感じさせます。
背景に渡る自然なボケと枝の立体感、そしてその場の空気の冷たく澄んだ雰囲気までしっかり描かれています。
最短撮影距離、開放での撮影です。前後ボケも柔らかく、描写に破綻も生じさせない。水滴の鋭い照り返しと葉の柔らかく湿度を持った雰囲気はこのレンズのポテンシャルの高さをしっかりと伝えてくれます。信頼できる標準レンズが1本あれば、どんなシチュエーションでも撮影は楽しくなるものです。
日没直後の微妙なトーンが残る景色です。遠景でも破綻しませんね…良い描写です。
カラーでは瑞々しいヌケの良さも大きな魅力。透明感のあるトーン、諧調も美しく再現されるので、モノクロームでもその恩恵は大きいものでしょう!
最短撮影距離が70cmというのも使い勝手の良いもの。かなり接近した撮影まで、この1本で可能です。
M9などデジタルボディとの相性の良さもポイントの1つ。フォーカシングノブのついた鏡筒デザインの格好よさやボディバランス、そして描写性能に至るまで実に使い勝手が良く、正に最高の標準レンズと言えるでしょう。価格はかなりのものですが、これ1本を使い込んでも、決して期待を裏切る事は無いはずです。まさに最高峰の標準レンズ、どんな時も頼れる1本です。
Photo by MAP CAMERA Staff